2015年11月に南米ベネズエラのギアナ高地で、アウヤンテプイトレッキングに挑戦した。
カナイマ国立公園にあるカバック村から3日かけてテプイの頂上まで歩き、そして2日かけて下山した。
1日目、2日目、3日目の様子はこちらを読んで欲しい。
参考:ベネズエラでアウヤンテプイトレッキング1日目!大雨の中バックパックを背負い真っ暗闇の中を歩いた
参考:カナイマ国立公園でアウヤンテプイに登山2日目!5分で息が切れる急斜面を2時間登り土砂降りの雨の岩場を綱渡り
参考:ベネズエラのギアナ高地トレッキング3日目!7本のロープで断崖絶壁をよじ登りついにテプイの頂上へ
ついに4日目からはトレッキングが下山に突入した。
3日間の登山で体は疲労困憊状態だったが、果たして無事に下山できたのだろうか?
それでは、アウヤンテプイトレッキングの4日目の様子をご紹介しよう。
南米ベネズエラのギアナ高地でトレッキングに挑戦
まずは簡単にトレッキングの様子をおさらい。
カバック村を出発してから1日目、2日目、3日目の宿泊地はこれらの場所。
1.アウヤンテプイ・トレッキング1日目
トレッキング初日はカナイマ国立公園にあるカバック村から、一つの断崖絶壁を登って森の中でテントに泊まった。
参考:ベネズエラでアウヤンテプイトレッキング1日目!大雨の中バックパックを背負い真っ暗闇の中を歩いた
2.アウヤンテプイ・トレッキング2日目
2日目は二つの急斜面を登ってから、巨大な石の下のすき間にテントを張って寝た。
参考:カナイマ国立公園でアウヤンテプイに登山2日目!5分で息が切れる急斜面を2時間登り土砂降りの雨の岩場を綱渡り
3.アウヤンテプイ・トレッキング3日目
3日目は断崖絶壁を7本のロープを使って乗り越えて、アウヤンテプイの頂上にある巨大な石の下にテントを張って寝た。
参考:ベネズエラのギアナ高地トレッキング3日目!7本のロープで断崖絶壁をよじ登りついにテプイの頂上へ
アウヤンテプイ・トレッキング4日目は3つの断崖絶壁を駆け下りた
そして、トレッキング4日目はアウヤンテプイの頂上から始まり、初日に泊まった森まで歩くことになった。
1.早起きして頂上で日の出を眺める
トレッキング4日目は、アウヤンテプイの頂上にある巨大な石の下で目が覚めた。
いつも通り早く目が覚めたので、日の出を見ることにする。
テプイの地平線から少しずつ明るくなってきた。
今はアウヤンテプイの頂上にいるので、視界はすべてテーブルマウンテンの最も高い台地部分である。
普段は下界にいてテプイから登ってくる朝日を眺めていたので、自分がテプイの頂上にいて朝日を眺めるのは不思議な気持ち。
アウヤンテプイの頂上はこんな雰囲気。
2.散策して石と植物の写真を撮る
日の出を眺めてから、テプイの頂上を散策することにした。
奇妙な形の石
アウヤンテプイは数億年前に形成された岩石が露出しているそうだ。
少しずつ台地が風化・浸食されたが、浸食されなかった部分が残って今のテーブルマウンテンが出来上がった。
そのため、アウヤンテプイの頂上には浸食されてできた奇妙な形の石がたくさんある。
自然の力って凄いね。
水と風の力だけで、こんな不思議な石が生まれた。
アート作品みたいな石も。
小人の集まりのような石群もあった。
こんな形に浸食されるなんて。
これはゾウみたいな石。
なんといっても、熊の石は見事。
テントを張っている石もカッコイイね。
テプイの頂上にだけ生息している固有種の植物
テプイは下界から孤立した「陸の孤島」なので、ここにしか生息していない固有種が多い。
珍しい植物がたくさんいたので、写真を撮ってきた。
頂上は岩盤の上に水が溜まり、そこに植物が生えていた。
白い花を咲かせる低木。
これは食虫植物。
テプイの頂上は土がほとんどなく肥料分がないので、虫から栄養分を補給する食虫植物が多い。
食虫植物の群生が朝日を浴びて綺麗。
赤くて小さな実を付けた花。
湿気が多いのでコケ類が多かった。
ピンク色の花。
空に向かって真っすぐ伸びる草。
ニョッキっとした草。
石から生えていたふさふさの何か。
石に生えていた白い何か。
岩盤のくぼみには砂が溜まっていて、草むらになっていた。
いろんな植物が生えていた散策が楽しい。
ピンと張った草。
赤と白の可憐な花。
日陰に生えたシダ類。
チクチクした草。
シンビジューム系の緑色の花。
おもちゃみたいな紅色の花。
フワフワしたやつら。
日本の山にも生えていたような気がするけど、何かは知らない。
すごくかわいい。
毛みたいなやつも生えていた。
この花は美しい。
黄色いシンビジューム系の花。
群生している花。
朝日を浴びた赤い花。
白くて花弁が大きい花。
花や植物が好きな人にはたまらない場所だった。
アウヤンテプイの頂上は亀裂に注意
ただし、アウヤンテプイの頂上は奈落の底に落ちる亀裂がそこら中に走っているので、散歩中は気を付けよう。
岩盤には浸食によってできたと思われる亀裂がある。
深すぎて底は見えない。
頂上はこのような亀裂だらけなので、気を付けて歩こう。
トレッキング中はこのような亀裂をジャンプして飛び越える。
生態系の破壊に注意
この辺りはトレッキングのキャンプ地になっているので、生態系の破壊が始まっていた。
これは柑橘類の木。
おそらく観光客かガイドが持ち込んだ種から生えたのだろう、種の持ち込みには気をつけたい。
3.テプイの頂上で朝ご飯
散歩が終わったら、お楽しみの朝ご飯の時間。
その前にまずは朝コーヒー。
朝ご飯は、オムレツとボージョだった。
ボージョとは、トウモロコシの粉を練ったものを棒状にしてお湯で茹でた食べ物。
ぼくはあんまりボージョが好きではないけど、テプイの頂上で食べると不思議と美味しく感じた。
ここで衝撃的な知らせが届く。
欧米人グループの荷物持ちをしていたペモン族の一人が突然亡くなったという。
原因は不明だが事故に遭ったわけではないそうだ。
遺体をテプイの麓まで運ぶ方法がなくて困っているという。
遺体を担いで断崖絶壁を下るのは大変だし、ヘリコプターはお金がかかり過ぎる。
結局どうしたのかわからないが、事件になっていた。
4.出発準備
朝食を食べたら、出発準備。
一般的にはアウヤンテプイ・トレッキングは7日間かけて行われる。
なので、一緒に登ってきた欧米人グループは、今日はテプイの頂上を散策してもう一泊する。
しかし、ぼくたちは5日間という短期間コースにしたので、今朝から下山を始める。
体力に自信がない人は日程に余裕を持たせよう。
朝食前から洗濯物を石の上に並べて乾かしたので、久しぶりに乾いた衣服を着ることができた。
登山靴はつま先が開いてしまった。
仕方がないのでこのまま歩く。
テプイの頂上を流れる川の水は鉱物が溶け出しているので茶色い。
でも水はこれしかないのでこれを飲む。
準備ができたので4日目も出発!
5.アウヤンテプイの最高地点へ戻る
まずは宿泊していた場所から、アウヤンテプイの最高地点まで戻る。
直線距離は大したことないのだが、大きな亀裂をさけたり崖のアップダウンがあるので、1時間半くらいかかった。
テプイの頂上には石が積んであり、道しるべになっている。
写真を撮る本庄さん。
本庄さんはアルゼンチンの写真専門学校に通っていたので、写真が上手だしスペイン語がペラペラ(2年間パナマに住んでいたぼくよりも)。
テプイの最高地点に着いたのだが、4日目は霧に包まれていて視界ゼロ。
3日目には綺麗な景色が見れたのだが、あれは運が良かったようだ。
テプイは標高が高い山なので、天候が変わりやすい。
頂上で発生した霧の様子はこちらの動画をどうぞ。
テプイの頂上は霧や雨が多いので、水分が多い。
蜘蛛の巣には水滴が着いていた。
水滴も綺麗ですね。
最高地点の近くには、こんな感じの植物が生えていた。
ニョッキっとしてるね。
白とピンクのコントラストが綺麗な花。
いろんな植物が群生している場所。
今はこの頂上にいるので、3日目に7本のロープを使って登った断崖絶壁を今度は降りなければいけない。
実はぼくたちがここに登る直前にロシアの軍人グループが登頂したのだが、彼らはパラシュートを持ち込んでここから飛び降りてパラシュートで下界に降りたらしい。
帰りは歩かなかったロシア軍人がうらやましい!
ただし、テプイからパラシュートで滑降することは法律で禁止されている。
6.断崖絶壁を7本のロープで下る
3日目に苦労して登ってきた道を引き返す。
4日目は特に霧が濃かった。
こんな感じで急な岩場をロープを使って降りていく。
ゴム製のグローブが必須。
そして、3日目に通った断崖絶壁まで戻ってきた。
この断崖絶壁を乗り越えたなんて、凄いな。
そして、次は2日目に宿泊した巨石を目指して下る。
7.2日目に宿泊した巨石まで下る
2日目に宿泊した巨石まで下る。
結局この日は1日目に宿泊した場所まで下ったので、この写真の一番遠くに見えている場所よりももっと遠くまで歩いたことになる。
前日に必死に登った急斜面の岩場を、今度は下っていく。
下りは呼吸は乱れないが、膝と足首に疲れがたまるし、足を踏み外すことがあって危険。
途中には紫色の変な実があった。
そして、下りになってから疲れすぎて一眼レフカメラを出せなくなっていたので、代わりにGoproを使って撮影していた。
下りも手を使って上向きの四つん這い状態で進む。
手を使わないと斜面が急過ぎて降りれないのだ。
8.巨石で昼食を食べる
疲労で足がガクガクし始めた頃に、ようやく2日目に宿泊した巨石に到着した。
疲労困憊でもう歩けない。
トレッキング中は道なき道を歩いているので、ズボンも登山靴も泥だらけ。
ズボンは山道で何かに引っかけて破れてしまった。
足に怪我はなかったが、丈夫なズボンを履いた方がいいと思う。
あまりにも疲れすぎて、本庄さんに撮影してもらったぼくの顔がヤバイ(笑)
歩いたことで足の疲労がすごいし、重たいバックパックを担いでいるので上半身もバキバキ。
昼食はネジネジツナパスタだった。
テプイ飯といえば、これだよね。
体がカロリーを欲していたので、これにマヨネーズとケチャップをかけて食べた。
この時に、ぼくたちには二つの選択肢があった。
【プラン1】今日はこの巨石に泊まって、明日一気にカバック村まで帰る
【プラン2】今日のうちに1日目に泊まった森まで一気に降りて、明日カバック村まで帰る
そして、プラン2を選択したので、2日目と3日目に二日間かけて登った距離を一日で降りることになった。
9.1日目の宿泊所を目指して、二つの急斜面を一気に駆け下りた
巨石から1日目の宿泊地まで歩いただのが、あまりにも疲れすぎてぼくはまったく写真を撮っていない。
しかし、本庄さんは撮影してくれていた!
登るのに苦労した急斜面はハイペースで一気に下り、あとは平地を歩くだけになった。
急斜面を下り切り、最後の力を振り絞って平地を歩く。
下りは登りよりも楽だったが、さすが4日目にはこれまでの疲労が蓄積していて辛い。
すでに足の裏は豆が潰れているし、全身の筋肉が悲鳴を上げている。
上の写真を見て気がついた人もいるかもしれないが、4日目からガイドが一名増えた。
欧米人グループで荷物持ちをしていた少年で、脱ぎ癖があるガイドの弟(13歳くらい)だった。
ペモン族では12歳くらいから荷物持ちとして働き始め、13歳から15歳くらいで結婚・出産する(第二次成長とほぼ同時)。
近代社会から見ると完全に児童労働と低年齢出産だが、彼らは伝統的にそうして彼らの価値観ではこれが当たり前。
ぼくは大学で文化人類学の授業を取っていたので、こういうことを詳しく調べたい。
参考:ジェンダーで学ぶ文化人類学を読了!ジャイカ国際協力の女性参加型開発の参考図書
10.1日目の宿泊所に到着
途中で雨が降り出したが、なんとか日没と同時に1日目の宿泊所に到着できた。
すでに真っ暗だったので、写真は翌日に撮影したもの。
この日はこの小屋で食事を取り、小屋の外にテントを張った。
11.夕飯を食べる
4日目の夕食は、ツナ缶のトマトケチャップ煮と白米。
日本人にとっては貧乏飯かもしれないけど、テプイで食べると絶品!
12.テントで寝る
小屋はガイドがハンモックを張っていたので、雨が降っていたがテントは小屋の外に張った。
この写真は5日目の朝に撮影したものだが、このテントで本庄さんと四晩寝ていた。
夜は冷えるのでありったけの衣服を着て耐えた。
13.4日目の感想
トレッキング4日目の感想を簡単にまとめよう。
テプイ頂上の植物は面白い
テプイの頂上には独特な植物がたくさん生えていて興味深かった。
先に固有種を勉強してから行けば、名前がわかってより楽しめたと思う。
下りは楽だけど、疲労の蓄積がヤバイ
復路は下り坂だったので、登りよりも楽だった。
しかし、4日間の疲労が蓄積していたので、かなり辛かった。
ペモン族の文化に興味が出てきた
もともとペモン族は「アウヤンテプイに登ると災いが起こる」と考えていて、誰も登らなかった。
しかし、近年は観光客がトレッキングをするために来るので、ペモン族がガイドや荷物持ちとしてテプイに登っている。
ペモン族の現金収入源は観光業なのだ。
そして、ペモン族は12歳くらいから荷物持ちとして働き始めるし、13歳から15歳くらいで結婚と出産をする。
昔はふんどし一枚で生活していたが、最近は洋服を着ている。
しかし、一部の部族はまだジャングル奥地で暮らし、ふんどし一枚の生活を続けているそうだ。
ペモン族やテプイのことをもっと知りたくなった。
(そこで、2016年10月以降に再びカバック村に滞在して農業指導ができるように、現在調整中である。今度はカバック村の隣の村の学校から農業指導の依頼が来ているので。)
まとめ
今回はアウヤンテプイトレッキング4日目の様子をお伝えした。
テプイの頂上で独特な植物を観察してから、一気に1日目の宿泊地まで駆け下りた。
4日間の疲労が蓄積して本当に疲れ切っていたので、写真を撮る気力も失っていた。
しかし、まさか5日目にはもっと辛い思いをすることになるとは……
つづく。
追記:トレッキング5日目の様子を紹介
5日目の記事はこちら。
→ ベネズエラの世界遺産カナイマ国立公園でトレッキング最終日!5日間で最も辛い思いをしながら歩き続けた
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