2015年11月に南米ベネズエラの世界遺産カナイマ国立公園で、5日間のアウヤンテプイトレッキングに挑戦した。
ぼくがベネズエラに滞在していたのは2015年9月から11月までで、少数民族ペモン族に農業指導することが目的だった。
農業指導が一段落したので、最大級のテーブルマウンテンであるアウヤンテプイに登ることにしたいのだ。
これまでに4日間のトレッキング体験記を書いてきた。
参考:ベネズエラでアウヤンテプイトレッキング1日目!大雨の中バックパックを背負い真っ暗闇の中を歩いた
参考:カナイマ国立公園でアウヤンテプイに登山2日目!5分で息が切れる急斜面を2時間登り土砂降りの雨の岩場を綱渡り
参考:ベネズエラのギアナ高地トレッキング3日目!7本のロープで断崖絶壁をよじ登りついにテプイの頂上へ
参考:ベネズエラのギアナ高地登山4日目は下山編!頂上で珍しい植物を見てから3つの断崖絶壁を一気に駆け下りた
そして、5日目についに滞在していたカバック村へ帰ることができた。
しかし、ここが五日間のトレッキング期間で最も辛い時間で、今思い出しても苦痛が蘇ってくる……
そこで今回は、アウヤンテプイトレッキング5日目の様子を紹介しよう。
世界遺産カナイマ国立公園でアウヤンテプイトレッキング
まずはこれまでのアウヤンテプイトレッキングを簡単に振り返ろう。
5日目は1日目に宿泊した森からスタートする。
1.トレッキング1日目
トレッキング初日は、カバック村から一つ目の急斜面を登って森で宿泊した。
参考:ベネズエラでアウヤンテプイトレッキング1日目!大雨の中バックパックを背負い真っ暗闇の中を歩いた
2.トレッキング2日目
トレッキング2日目は二つの急斜面をよじ登って、巨石の下で寝た。
参考:カナイマ国立公園でアウヤンテプイに登山2日目!5分で息が切れる急斜面を2時間登り土砂降りの雨の岩場を綱渡り
3.トレッキング3日目
トレッキング3日目は断崖絶壁を7本のロープを使った乗り越えて、ついにテプイの頂上に到着した。
参考:ベネズエラのギアナ高地トレッキング3日目!7本のロープで断崖絶壁をよじ登りついにテプイの頂上へ
4.トレッキング4日目
トレッキング4日目はテプイの頂上から3つの急斜面を一気に駆け下りて、1日目に宿泊した森に泊まった。
参考:ベネズエラのギアナ高地登山4日目は下山編!頂上で珍しい植物を見てから3つの断崖絶壁を一気に駆け下りた
トレッキング最終日は5日間で最も辛い時間だった
それでは、トレッキング最終日である5日目の様子を紹介しよう。
1.朝起きて川で顔を洗う
ぼくたちが泊まったのは、1日目に欧米人グループが宿泊していた場所。
欧米人グループは7日間コースなのでまだテプイ頂上に泊まっていて、ぼくたちの方が先に帰路に着いた。
こんな感じのテントに泊まっていた。
テントは大人二人が横になると一杯になるサイズ。
このテントと寝袋、クッションシートはガイドが用意してくれた。
ガイドのペモン族の3人(4日目から一人増えた)は、蚊帳付きハンモックで寝ている。
カナイマ国立公園には「チトラ」というノミくらいのサイズの極小の吸血虫がいて、蚊のように空を飛びまわるし、大量に生息しているので非常に厄介。
しかもチトラに刺されると蚊に刺されたように腫れて、蚊よりももっと痒くて皮膚に跡が残る。
朝起きたら、顔を洗うために小川へ。
飲み水もここから調達する。
森には霧が立ち込めていた。
テプイは降雨量が多い。
2.朝ご飯を食べる
まず、いつもの朝コーヒーの時間。
朝なのに疲れ切った表情してるね。
今日の朝ご飯は、具なしエンパナダだった。
エンパナダとは、トウモロコシの粉や小麦粉でできた生地を油で揚げたもので、通常は中に具を入れる。
今回はツナマヨとバターをつけて食べる。
とにかくエネルギー源を摂取したいので、たくさん食べた。
3.キャンプ地を出発
荷物を準備したら、ついに最終日のトレッキングが始まる。
今は1日目に宿泊していた場所にいるので、残り一つの急斜面を降りればペモン族集落と同じ台地に出れる。
そして、そこからは平地をひたすら歩けば、出発地のカバック村に着く。
4日間の疲れが蓄積しているので、体がめちゃくちゃ重い。
それでもまだ余裕があるので、自撮りができていた。
トレッキング中はGoproをバックパックの肩紐につけて、一眼レフカメラを前のカメラバッグに入れて歩いていた。
歩き始めてすぐに、巨大で超カラフルなバッタがいた。
ペモン族はバッタを食べる習慣があるが、これは食べれないそうだ。
青くてきれいな実もなっていた。
歩いている時には、ガイドからもらった飴を舐めていた。
糖分って優しいね!
トレッキング5日目の様子はこちらの動画を見てほしい。
今回は自撮りバージョン。
4.断崖絶壁の手前で休憩
キャンプ地を出発してから1時間ほどで、断崖絶壁の前に到着した。
この断崖絶壁を下れば、ペモン族集落と同じ台地に出る。
この写真の左奥に集落があるが、遠すぎて見ることができない。
休憩になると、重たいバックパックはすぐに降ろしていた。
フルサイズ一眼レフカメラと交換レンズ3本、モバイルバッテリーなどが重たい。
景色を眺めるガイドたち。
彼らも疲れていた。
気分転換がてらに写真撮影。
この時はまだ元気。
自撮りをする余裕もあった。
トレッキング中は手を使わないと歩けない場所が多かったので、このゴム手袋が役立った。
農家や家庭菜園している人がよく使っているやつ。
5.岩場でこけないように気を付けて降りる
そして、断崖絶壁を降りていった。
ここは大きな岩がゴロゴロしている場所で、しかも傾斜が急なのでめちゃくちゃ危険。
誰とは言わないがここで転んで頭から出血してしまった人がいるのでマジで気を付けようね、本庄さん!
そして、この岩場の最中で本庄さんのサンダルが完全に壊れてしまった。
実はサンダルはトレッキング出発前から壊れていて、トレッキング中も本庄さんは直しながら使っていたのだが、ついにもう直せない状態まで壊れてしまったのだ。
サンダルでアウヤンテプイを登ったことがある日本人は、本庄さんただ一人だろう。
本庄さんには、ぼくの水陸両用シューズを貸してあげた。
6.草原をひたすら歩く
ようやく平地に降りることができた。
これは平地からさっきまで居た断崖絶壁を撮影した写真。
この写真の真ん中の一番遠い場所で休憩していた。
あとはひたすらこの草原地帯を歩く。
重たいバックパックを担いでいるし、4日間の疲労がたまっているので、だんだんつらくなってきた。
最後の力を振り絞って歩き続ける。
頭に手ぬぐいを巻いた本庄さんも頑張って歩いている。
7.初日でバイクを降りたウルジェン村を過ぎる
トレッキングの初日はカバック村からウルジェン村までバイクで1時間ほどかけて送ってもらい、そこからスタートした。
帰りもバイクで迎えに来てくれるかと期待したが来てくれず、歩いて帰らなければいけなかった。
ここがウルジェン村。
8.川を渡って昼食
ウルジェン村を通りすぎて、カバック村を目指して歩き続ける。
川があっても歩いて渡る。
雨が降っていると水かさが増して危険だが、このくらいなら平気だ。
ただし、登山靴の中が水浸しになって歩きづらくなる。
河原で休憩することになり、衣服を乾かす。
5日目の昼食はツナマヨパスタだった。
これが最後のテプイ飯。
9.午後もひたすら草原を歩き続ける
午後もひたすら草原を歩き続ける。
河原からカバック村まで、残り2時間半くらいの距離。
10.5日間で最も辛い時間だった
この最後の2時間半が、5日間で最も辛い時間だった。
ぼくは体力的に限界にきており休憩したいが、残りもう少しだから無理していた。
足の裏のマメは割れているし、全身の筋肉は悲鳴を上げているし、平地に降りてきたので太陽の日差しが強く灼熱地獄。
「今すぐ立ち止まりたい」という欲求と戦いながら、歩き続けていた。
弱い自分と戦いながら、2時間半を休憩せずに歩き切った!
11.ついに、カバック村へ帰る!
ぼくたちが滞在していたのは、このカバック村。
後ろにあるのがぼくたちが登頂したアウヤンテプイ。
カバック村はアウヤンテプイの麓にある小さな集落で、観光客向けロッジが生業だ。
このロッジのオーナーが野菜栽培を始めたいということで、ぼくが指導にやってきた。
#venezuela #canaima #angelfall #tablemountain #pemon
Daisuke Miyazakiさん(@jiburicom)が投稿した写真 –
そして、ついにカバック村が見えてきた!
やばい、泣きそう!!
右手に広がっているのが、ぼくと本庄さんがペモン族と一緒に開墾した畑。
うわぁーーーーーーー!!
ついに、カバック村に帰ってきたよ~~!
出発してから5日目の夕方に、無事にカバック村に帰宅した!
12.疲れすぎて一歩も動けない状態に
これがカバック村に着いた直後のぼく。
全身の力が抜けて、へにょへにょになっている(笑)
「もう一歩も歩けません!!」と宣言して、しばらくこうしていた。
だって、本当に疲れていたからね。
最後に本庄さんとガイドと一緒に記念撮影。
背景にはアウヤンテプイがあるのだけど、濃い雲に包まれているので見えない。
それと、弟ガイドくんも脱ぎ癖があった。
本庄さんとコカ・コーラで乾杯。
到着したからめっちゃ嬉しそうな顔してる(笑)
ベネズエラでPanaは「友達」って意味だそう。
なぜかこのタイミングで「ダイスケはこの木の実を食べてみたい、と言っていたよね」といって、トゲトゲヤシの木の実を持って来てくれた。
酸味が効いた味で、歩き疲れた体に染みわたる。
13.カバック村の母が足湯を用意してくれた
5日間のトレッキングを終えた足。
登山靴で川を渡ったので、水でふやけてシワシワ。
足の裏はマメが潰れているし、吸血虫チトラに刺されて赤い斑点ができている。
「もう一歩も歩けない!!」と子供のように駄々をこねていたら、カバック村で母親のように面倒を見てくれていた女性がお湯が入った桶を持って来てくれた。
「疲れた時は足湯が効くからね」と優しくしてくれて嬉しかった。
14.久しぶりにペモン族の母の手料理を食べる
そして、夕食は久しぶりにペモン族の母の手料理だった。
彼女がこのロッジのオーナーで、料理がめちゃくちゃ上手。
これは紫芋のポタージュ。
これは白米とサラダとカツレツ。
めっちゃ美味しい。
以前、ぼくと本庄さんで日本料理を教えたのだが、すぐに完璧にマスターしていた。
15.5日ぶりにシャワーを浴び、5日ぶりにベッドで寝る
5日ぶりにシャワーを浴び、5日ぶりにベッドで寝た。
どれも気持ちよすぎ。
「ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドで寝る」人間ってそれだけで幸せだね。
16.5日目の感想
5日目の感想を簡単にまとめよう。
急な斜面と岩場は注意して歩こう
急な斜面と岩場はこけると大怪我をするので、気をつけて歩こう。
特に雨が降っていると岩が濡れていて滑りやすい。
重たいバックパックを担いでいるとバランスを崩しやすい。
サンダルより登山靴がおすすめ
サンダルで登頂できるのは、ペモン族か本庄さんくらい。
普通の日本人は登山靴で登ろう。
最後の2時間半は弱い自分との闘い
カバック村に着くまでの最後の2時間半は、弱い自分との闘いだった。
アウヤンテプイトレッキングを経験して、精神的に強くなった気がする。
ペモン族の母の優しさに感動
カバック村に着いてからはペモン族の母の優しさに感動した。
足湯を用意してくれたり、食べ物を差し入れしてくれた。
とても感謝している。
トレッキングから帰宅し翌日したこと
このトレッキング体験記だけだと、ぼくたベネズエラで遊んでいただけみたいなので、トレッキングから帰宅した翌日のことも少し説明したい。
1.開墾した野菜畑の調査
朝は起きた時、疲れで体が重すぎて起き上がれなかった。
それでもなんとか這い上がって、ぼくは野菜畑へ向かった。
そもそも、ぼくがペモン族の集落に47日間も滞在したのは野菜の育て方を教えるため。
参考:ベネズエラのカナイマ国立公園に暮らすペモン族の村で47日間農業を教え、テーブルマウンテンに登頂したよ
ぼくがアウヤンテプイのトレッキングに参加している間に、ペモン族のみんながちゃんと野菜栽培の管理をしてくれたか確認したかったのだ。
ここがぼくらで開墾した畑。
雨で肥料分と土が流されないように、河原の石を運んできて畝を作った。
野菜の生育は良さそう。
ズッキーニもいい感じに生育している。
しかも、嬉しいことにぼくらがトレッキング中に、ペモン族の人だけで開墾作業を進めて畑を拡大していた。
さらに、新し畝を作り、コーヒーの苗木を植えていた。
しかし、なぜか畝は「7」の形……
この辺のセンスは謎。
二十日大根が収穫できた。
ペモン族の母は料理がめちゃくちゃ上手なので、野菜もちゃんと料理してくれる。
というわけで、ぼくがトレッキングに参加しても農業指導の方は問題なかった。
2.チョコレートケーキをプレゼントしてもらう
翌日にカバック村からの旅立ちを控えていた夜、ペモン族のみんなからサプライズプレゼントがあった。
いつものように夕食を食べていると、集まってくるペモンのみんな。
なんと、メッセージ付きのチョコレートケーキを作ってくれた!!
ケーキには「ARIGATOO. DAI / RIO」と書かれている。
そういえば、滞在中にチョコレートケーキの作り方と日本語の感謝の言葉とぼくらの名前のスペルを聞かれたことがあり不審に思っていたが、このケーキのためだったのか!!
ケーキを小さく切って、みんなで分けて食べる。
後ろにいるのは宿泊中の観光客グループ。
しかもプレゼントはケーキだけではなかった。
3.ふんどしと首飾りと弓矢をプレゼントしてもらう
ペモン族の伝統衣装である「木の皮でできたふんどし」と首飾りとブレスレットもくれた。
ちょっと前までペモン族はふんどし一枚で生活していて、今でも観光客向けのショーではふんどし一枚でダンスを披露している。
さらに弓矢と雨乞い用の伝統楽器まで。
昔はこの矢にはヤドクガエエルの毒を塗って獣を狩ったり、集落間の争いで使っていたそうだ。
4.ぼくがふんどし一枚になった理由
ぼくはどうしてもペモン族の前でふんどし一枚になりたかった。
なぜかというと、以前ペモン族の子供がふんどし一枚で観光客の前でショーをしている時に、とても嫌な気分になったからだ。
これは本庄さんも感じていた。
まるでペモン族の伝統が見世物にされているような雰囲気で、子供たちも楽しんでいなかったし、ぼくはその様子を写真に撮りたいと思わなかった。
しかし、ペモン族は観光を生業としているので、観光客向けのショーを行うことは現金収入のために必要だ。
いったいどうしたらいいのかわからなかったが、とりあえず子供と仲良くなることにした。
農作業の合間に子供と一緒にサッカーをしたり、
子供に日本の将棋や遊びを教えたり、逆にペモン族の遊びを教えてもらった。
カマラタ集落の幼稚園で折り紙教室を開いたこともある。
ペモン族の集落に一ヶ月間以上滞在し子供たちと仲良くなっていくうちに、「ぼくもふんどしを履けばいいんじゃないか!?」と思うようになってきた。
観光客が洋服を着た状態でふんどし姿のペモン族の子供を撮影しているから、変な気分になるんじゃないか。
彼ら観光客はふんどし姿になれるのか?
ふんどし姿になんてなりたくないと思っている観光客に写真を撮られるから、ペモン族の子供も嫌そうなんじゃないか。
ぼく自身もふんどし姿になったら子供も笑ってくれるのではないか。
そんなことを思ったので、ぼくはペモン族のみんなの前でふんどしを履きたかった。
ぼくが「ふんどしを履きたい」と言うと、ペモン族のみんなはびっくりしていたけど本気だというと履き方を教えてくれた。
そして、トイレでふんどし姿に着替えて戻ってくると、ペモン族のみんなは大爆笑していた。
顔に野獣マークのお化粧もしてくれた。
5.ペモン族のみんなと焚き火を囲んで一緒に踊った
そして、ペモン族のみんなと焚き火を囲んで踊り、写真を撮った。
それを今のプロフィール写真に使っている。
これからも田舎に住む人とは、体当たりで仲良くなっていきたい。
ペモン族の伝統とふんどしについては、パナマのエンベラ族の話なぞも交えつつ、またいつかもっと詳しく書こうと思う。
参考:中米パナマの少数民族エンベラ族の観光ツアーに参加して感じた少数民族のジレンマ・葛藤
ペモン族の子供は凛々しいね。
でも、ペモン族のダンスは単調であんまり面白くない。
ペモン語の歌はとても綺麗。
そして、この翌日にぼくと本庄さんはこの村を旅立った。
47日間の滞在が終わったのだ。
まとめ
今回はアウヤンテプイトレッキング5日目の様子を紹介した。
一つの急斜面を降りて、そこから平地をひたすら歩き疲れた。
カバック村に着いてからはペモン族の母の優しさに癒された。
これでとりあえず、アウヤンテプイトレッキングの体験記は以上。
トレッキングの注意点や持ち物をまとめたいし、ペモン族と観光客やここで活動しているNGOについても思うことがあるので、また別の記事に詳しくまとめたい。
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