カシューナッツの実、木、栽培方法とカシューアップルの食べ方!生は危険なので注意

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カシューナッツの種の様子

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日本人が知らないカシューナッツの秘密

青年海外協力隊・野菜栽培隊員として中米パナマ共和国に2年間暮らして、驚いたことの一つが「カシューナッツ」である。

カシューナッツは日本中どこでも売っているし、食べたことがない人はいないくらいポピュラーな食べ物だ。

しかし、日本ではカシューナッツは栽培されていない。

なので、カシューナッツがどのような木になって、どのようなフルーツがなって、どのように食べられる状態まで加工されるのかを知っている日本人は少ないだろう。 

こんなに面白いカシューナッツのことが、世間に知られていないなんて、実にもったいない。

そこで今回は、まだ日本人が知らないカシューナッツの秘密を大公開しよう!

 

 

カシューナッツの基礎情報

最初は、カシューナッツの基礎情報について学ぼう。

1.カシューナッツとは

カシューナッツとは、ウルシ科のカシューの木の種子のこと。

カシューは(学名: Anacardium occidentale、英名: Cashew、スペイン語:Marañón)は、中南米原産の常緑高木でリンゴのような果実をつける。

大きな実と小さなカシューナッツ

 

カシューナッツはスペイン語圏では「セミージャ デ マラニョン」と呼ばれていて、どこのスーパーでも売っているとても人気のナッツだ。

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2.カシューナッツの生態

次にカシューナッツの生態をご紹介しよう。

(1)原産地

カシューナッツの原産地は中南米で、16世紀にポルトガル人がインドや東南アジアなどに防風林として植林し、広まっていったとされている。

また、カシューの名の由来は、ブラジルのツピ族の言葉「アカジュ(ゥカジュー)」が16世紀にポルトガル人「カジュー」と伝わり、その後さらに「カシュー」と変化して伝わったとされている。

現在は中南米、中国、インド、東南アジア、アフリカで栽培されている。

世界地図

 

 

(2)生態的特徴

カシューの木は、多雨過湿と寒さに弱く、適度な降雨量のある熱帯地域と亜熱帯地域を好む。

樹高は8~15mまで成長する。

開花時期は11月から3月で、雨が少ない時期に開花し、開花後およそ2ヶ月から3ヶ月で結実・完熟する。

カシューナッツの幼果

 

果実はお寺の鐘のような形をしていて、リンゴのような姿なので「カシューアップル」と呼ばれている。

これは植物学上は果托(かたく)といわれる部分で、カシューアップルはいわゆる「偽果(ぎか)」である。

イチゴやリンゴも偽果である。

参考:苺ソムリエ直伝!美味しいイチゴの苗の作り方&育て方&見分け方&食べ方

たわわに実るカシューナッツ

 

植物学上は、 偽果の下に付いている種のような物体が「果実」であり、殻を割ると中に「種子」が入っている。

そして、この種子の褐色の種皮を除いた中の「仁」をカシューナッツと呼ぶ。

しかし、一般的には「カシューアップルを果実、カシューナッツを種」と呼んでいるので、ここでも植物学上の名称ではなく、一般的な名称で呼ぶことにする。

カシューナッツの種の様子

 

カシューアップルはこの写真のように、一度にたくさん実るのが特徴だ。

カシューナッツの木と実

 

そして、収穫方法は木になっている実を採る場合もあるが、熟すと自然に落下するので、落ちたものを拾う方が一般的だ。

商業的に栽培していない地域では、落下したカシューアップルが腐敗して生ゴミになっている。

地面に落ちたカシューナッツの実

 

そして、落下した果実はしばらく時間が経つと乾燥して、ドライフルーツのようになる。

最近、ぼくはこれを有機肥料の材料に使っている。

参考:カシューナッツの実と馬糞と稲わらを利用して、無料で作れる有機肥料を仕込んでみた

乾燥したカシューナッツの果実

 

さらに時間が経つと、ドライフルーツも分解され、地面には硬い種子だけが残る。

そのため、カシューの木の周りには、硬い種子がたくさん溜まっている。

地面に散乱しているカシューナッツの種

 

 

3.カシューの品種

次に、カシューのいくつかの品種を紹介しよう。

(1)果皮が黄色い品種

まずは、カシューアップルの果皮が黄色い品種。

中米パナマでは一番多く見かける品種だ。

実ったカシューナッツ

 

 

(2)果皮が赤い品種

次に、カシューアップルの果皮が赤い品種。

これもパナマでは多い。

赤色カシューナッツ

 

 

(3)2品種のカシューアップルの比較

果皮が違う2種類のカシューアップルを比較してみよう。

まず、形状が少しだけ違っている。

黄色い品種は長細い傾向にあり、赤い品種は横に太い。 

カシューナッツの果実の比較

 

5個ずつ10個並べるとこんな感じ。

カシューナッツの果実を比べる

 

果実を切ってみると、果肉の色と形状は同じだ。

しかし、赤い品種の方が果肉がやや硬い。

カシューナッツの果肉断面の比較

 

カシューナッツの殻は、赤い品種の大きい。

しかし、カシューアップルとカシューナッツの殻の大きさは、果実の個体差と樹木の個体差がある。

2種類のカシューナッツの種の比較

 

 

【例外】マラニョン・クラサオ (ジャワフトモモ)

パナマでは、もう一種類カシューアップルと呼ばれるフルーツがある。

それが「マラニョン・クラサオ」と呼ばれるこちらの果実だ。

マラニョン・クラサオ

 

この果実はカシューアップルにそっくりなので、 パナマでは「キュラソーのカシューアップル(マラニョン・クラサオ)」と呼ばれている。

しかし実はフトモモ科フジャワトモモ属 の「ジャワフトモモ(別名:レンブ)」という、カシューとは別の植物の実である。

ジャワフトモモの特徴は鮮やかで特徴的な花と、種が果実の下に付いていないこと、そして果肉の食感がカシューアップルよりも、もっとみずみずしいことである。

参考:Wikipedia レンブ

このようにパナマでは、ジャワフトモモは果実の見た目がカシューアップルに似ていてしかも収穫時期も同じなので、カシューアップルの一種だと誤解されている。

ジャワフトモモの利用方法は、生食に限られている。

 

 

4.カシューの木とカシューアップルとカシューナッツの利用方法

ここからは、カシューの利用方法について、説明しよう。

(1)カシューナッツとカシューアップルの食用利用

日本ではカシューナッツは、おつまみとして親しまれているが、中国ではカシューナッツは、広東料理の「鶏肉のカシューナッツ炒め」のように炒め物の具材として用いることが多い。

中南米ではカシューナッツも食べられているが、カシューアップルを絞ってジュースにして飲み、インドでは果汁を発酵させてお酒を造っている。

大きなカシューナッツ

 

 

(2)薬用利用

カシューの木が栽培されている地域では、古くからカシューアップルが薬用にも利用されてきたそうだ。

カシューのジュースは、解熱・胃腸粘膜保護等に効果があります。

また、原住民のチュクナ族はインフルエンザの治療に飲用しています。

引用元:健康マイスターズ

 

 

(3)木材利用

カシューの木の木材は建築資材に利用され、樹皮から染料の原料も抽出でき、樹脂はゴムの原料にもなる。

さらにカシューナッツの殻も、燃料として利用されている。

カシューナッツの木

 

 

5.カシューナッツの栄養素

カシューナッツは、オレイン酸や鉄分、カルシウム、ビタミンB1、亜鉛などのミネラルをバランス良く含み、低カロリーなのに濃厚な味わいが特徴。

糖質が多いため、柔らかい食感で甘くて食べやすくて、お子さんのおやつやお父さんのビールのお供に最適だ。

市販のカシューアナッツ

 

 

カシューアップルの利用方法

次に、カシューアップルの利用方法を紹介しよう。

1.果実をそのまま生で食べる

カシューが栽培されている中南米や東南アジアでは、果実をそのまま生で食べる。

タンニンを含んでいるため渋みがあるが、果肉は柔らかく独特の風味を持っていて、美味しい。

かぶりついてみると、食感は完熟のモモのような柔らかさで、モモ以上にジューシーである。 

カシューナッツの断面写真

 

2.果実を絞って、砂糖を加えて、ジュースにして飲む

中南米で一般的な利用方法は、カシューアップルを絞って果汁を集め、そこに砂糖を加えてジュースにして飲む方法だ。

カシューナッツの果汁

 

カシューアップルは非常に多くの果汁を含んでおり、絞ると簡単に水分を放出させるので、ジュースへの加工に向いている。

中南米では季節感を感じる飲み物として人気である。

カシューナッツのジュース

 

しかし、果皮と果肉が軟らかく傷付きやすいことから、長距離輸送には向いていないので、カシューアップルの消費は生産地近郊に限られている。

この写真のように、果皮はもろくて傷付きやすく、すぐに果汁が染み出してしまう。

カシューナッツの果肉は傷付きやすい

 

 

3.インドでは果汁を発酵させて、お酒を造る

インドではカシューアップルの果汁を発酵させて、「フェニー」というお酒を造るそうだ。 

フェニーというお酒は、カシューアップルを足で踏みつぶして、果汁を発酵させてから、泥でできたカマドで蒸留して作るらしい。

「Cashew Fenny」で画像検索してみると、インド人が素足でカシューアップルを踏みつけている写真がたくさん見つかって、ショックを受けたが一度は飲んでみたい。

 

 

カシューナッツの焙煎方法

次に、カシューナッツの焙煎方法を紹介しよう。

1.カシューナッツの殻と種の特徴

まずは、カシューナッツの殻と種の特徴から説明しよう。

カシューナッツの殻は、どの品種も「勾玉のような形」をしている。

カシューナッツの種

 

殻を横にして割ってみると、肉厚な殻の中に「仁」が入っている。

カシューナッツの種の断面

 

殻を縦にして割ってみると、こんな感じ。

生のカシューナッツの種

 

カシューナッツの生果には、毒物を含むため加熱処理しなければいけない。

生果には、アナカルディウム酸やカルドールなどの刺激成分、また青酸配糖体であるアミグダリンなどの毒物を含むため、食材として用いる場合には、これらの成分の高温加熱による除去処理(いわゆる「飛ばす」工程)が必要となる。

生果のままでは仁(種子の中身)を取り出しづらいため、加工工場は、この工程を果殻がついたまま行うのが一般的である。

まず殻つきの生カシューナッツを天日干しし、高温蒸(スチームロースト)処理を行い、さらに煎(ドライロースト)処理を行った後、殻割り・殻むき、品質選別を行って製品として出荷する。

味付けと保存性の向上を目的として、製品に塩をまぶして出荷されることも多い。

引用元:Wikipedia カシューナッツ

 

仁には薄い種皮が付いているが、生の状態ではピッタリと付着しているので取り除けない。

カシューナッツの内皮

 

カシューナッツの殻そのものと、殻の内側には「カシューナットシェルオイル」と呼ばれる油がたっぷりと含まれていて、塗料の原料としても利用されている。

そのため、触るとベトベトする。

カシューナッツの殻の油

 

 

2.カシューナッツの殻の焙煎方法(中南米の家庭流)

次に、中南米の家庭流のカシューナッツの殻の焙煎方法を紹介しよう。

※工業的な焙煎方法

工業的な焙煎方法を知りたい人は、下の参考リンクを見て欲しい。

参考:カシューナッツ インド自然食

生産農園による果実の収穫は、完熟して自然落果したものを採集するのが一般的で、一本の木から10〜30㎏のカシューアップルが収穫できるそうだ。

 

(1)カシューナッツの殻を乾燥させる

まずはカシューアップルからカシューナッツの殻を取り外し、乾燥させよう。

回収したカシューナッツの種

 

 

(2)焚き火をして、炭を作る

カシューナッツの殻が乾燥したら焚き火をして、炭を作る。

焚き火

 

 

(3)カシューナッツの殻を、熱い炭へ放り込む

カシューナッツの殻を、熱い炭の中へ豪快に放り込む。

炭に入れたカシューナッツ

 

 

(4)5分ほど加熱して、取り出す

しばらくかき混ぜて5分ほどしたら、炭の中からカシューナッツの殻を取り出す。

炭まみれのカシューナッツ

 

 

(5)焙煎したカシューナッツの殻を冷ます

焙煎したてのカシューナッツの殻はめちゃくちゃ熱いので、地面で冷ます。

左側が赤い果皮の品種で、右側が黄色い果皮の品種。

2種類のカシューナッツの焙煎後

 

以上で、カシューナッツの焙煎が完了した!

 

 

3.カシューナッツの仁の摘出方法

次にカシューナッツの仁の摘出方法を紹介しよう。

(1)金槌かこん棒を用意する

まずは硬いカシューナッツの殻を割るために、金槌かこん棒を用意しよう。

金槌

 

 (2)カシューナッツの殻を優しく叩く

カシューナッツの殻の中身を壊さないように優しく叩く。

炭化したカシューナッツ

 

 

 

(3)殻が割れて中身が見えたら、さらに優しく叩く

殻が割れて中身が見えたら、さらに優しく叩く。

中は白いカシューナッツ

 

 

 

(4)種子が見えたら、手を使って壊さないように慎重に取り出す

種子が見えたら、手を使って壊さないように慎重に取り出す。

上手に焙煎できたカシューナッツ

 

 

殻から種子を割らずに取り出す作業がめっちゃ難しくて、ぼくの成功率は20%ほどだった。

割れたカシューナッツの種

 

 

(5)種子を取り出して薄皮を取り除く

種子を取り出したら、次は薄皮を取り除く。

皮付きのカシューナッツ

 

この薄皮は落花生の薄皮のような存在だが、落花生の5倍以上苦いので、必ず取り除こう。

砕けたカシューナッツ

 

 

(6)これでカシューナッツの完成!

薄皮を取り除いたら、これでカシューナッツの完成だ!

炭で炙ったカシューナッツ

 

この一粒を食べられるように加工するのに、一時間以上かかった。

カシューナッツの実

 

我慢できず、熱々のカシューナッツを食べてみると、香ばしくて甘くてめちゃくちゃ美味かった!

香ばしいカシューナッツ

 

スーパーで売っているカシューナッツも十分美味しいけど、自分で収穫して焙煎して摘出したカシューナッツは格別だった。

やっぱり自分で食べ物を作るのは楽しいし、美味しく感じる。

大きなカシューナッツ

 

これは、お店で売っている市販のカシューナッツの写真。 

工場の機械でローストすると、このようにキツネ色で綺麗に仕上がる。

市販のカシューアナッツ

 

 

加熱処理の失敗例

こちらは加熱処理の失敗例。

加熱処理の温度が高すぎたり時間が長すぎると、種子が炭になってしまう。

中まで炭になったカシューナッツ

 

大規模農園で出た殻は燃料に使われているそうだ。

ぼくはこのカシューナッツの殻を、腐ったカシューアップルを使った「パナマ式コンポスト有機肥料」へ混和した。

参考:JICA環境教育隊員が普及する発酵液が必要な高倉式コンポストを、途上国向けに簡単な作り方へ改良「パナマ式コンポスト有機肥料」

砕けたカシューナッツの殻

 

 

 

カシューナッツに含まれる毒素とウルシの危険性

最後に、カシューナッツに含まれる毒素とウルシの危険性をお教えしよう。

1.種の生食は危険

カシューナッツの種の生食は危険である。

先述の通り、カシューナッツの生果には、毒物を含むため加熱処理しなければいけない。

生果には、アナカルディウム酸やカルドールなどの刺激成分、また青酸配糖体であるアミグダリンなどの毒物を含むため、食材として用いる場合には、これらの成分の高温加熱による除去処理(いわゆる「飛ばす」工程)が必要となる。

引用元:Wikipedia カシューナッツ

 

もし加熱処理が不十分だと毒素が除去されず、口の周りと口の中が痒くなり下痢をする。

これは、ぼくが経験したから間違いない。

子供はこのことを知らずにカシューナッツの仁を生で食べて、口の周りがただれてしまうことがあるそうだ。

日本のスーパーで売っているカシューナッツはすべて加熱処理されているので、このような問題は起きない。

生のカシューナッツの種

 

 

2.殻はウルシオールを含んでいて、かぶれる

カシューはウルシ科の樹木なので、果実である殻にウルシオールを含んでいて、素手で触れるとかぶれる。

カシューもウルシ科の植物であるため、その殻にはウルシオールを多く含有しており、加工の際にかぶれなどのアレルギー反応をきたす人も少なくなく、取扱いには注意を要する。

引用元:Wikipedia カシューナッツ

 

ぼくはこのことを知らずに素手で、カシューナッツの殻を割っていた。

炭で汚れた手

 

そのため、その日の夜から、両手の指の皮膚に異常が発生した。

100歳のおばあちゃんの皮膚のように、しわくちゃになってしまった。

カシューナッツでかぶれた指

 

特に親指、人差し指、中指の先端部分がひどい症状だ。

この部分はカシューナッツの殻を触っていた部分と一致するので、ウルシオールでかぶれたようだ。

カシューナッツでかぶれた親指

 

カシューナッツの殻を触ってから、二日後には皮が剥け始めた。

これは激辛唐辛子を素手で触ってしまった事件と同じ症状だ。

参考:激辛トウガラシを触った手がヒリヒリ痛い!皮膚が白くシワシワになり薄皮が剥けた時の対処法&唐辛子品種の紹介 

カシューナッツを触るときには注意が必要だ。

カシューナッツで皮が剥けた指

 

 

カシューナッツの情報まとめ

中南米ではカシューの木が栽培され、カシューナッツとカシューアップルが食べられている。

自分で収穫して、焙煎して、摘出したカシューナッツは最高に美味しかった。

ナッツ好きの方は、ぜひ自分で作るカシューナッツに挑戦してみてほしい!

 

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