大学院で4年間イチゴを研究した苺ソムリエ
ぼくは「苺ソムリエ」を名乗っている。
「なぜ、苺ソムリエを名乗っているのか?」まずはそこから説明しよう。
1.信州大学大学院農学研究科で4年間いちごを研究
ぼくは信州大学農学部と信州大学大学院農学研究科で、合わせて4年間イチゴの研究をしていた。
所属していたのは蔬菜花卉園芸学研究室。
簡単にいうと「野菜と花の研究をする研究チーム」だ。
同研究室で品種改良した‛信大BS8-9’という新しい四季成り性イチゴ品種。
この栽培方法を確立させ、生産者に普及させること。
これが、ぼくの研究の目的だった。
そのために、施肥量比較実験、品種比較栽培、電照栽培実験など4年間あらゆる実験を行った。
植物を扱っているため基本的に休みはなく、特別な用がない限りは365日出勤。
毎日、イチゴの栽培と実験を行い研究に没頭していた。
おかげで一年中、毎日苺が食べ放題だった。
研究の傍ら、新品種イチゴの栽培方法の普及のために全国出張へ。
東北地方、中部地方、中国地方、四国地方、そして長野県全域の農家や農業研究施設を巡回した。
参考:施設園芸農業のすべて!日本と海外の点滴灌漑&養液土耕&LED水耕栽培&植物工場(太陽光利用型・完全閉鎖型)のメリット・デメリット
おかげで全国のほぼすべてのイチゴ品種の栽培方法を確認し、そして食べることができた。
2.苺のヘタを見ただけで品種を見分けられるようになった
毎日苺を食べ続けたおかげで、大学生時代にはイチゴを食べただけで、品種を見分けられるようになった。
そして大学院生になると、ついに
「イチゴのヘタを見ただけで品種を特定できる」
までになった。
それ以来、ぼくは「苺ソムリエ」を名乗るようになった。
そして、イチゴに関する悩みを抱えている人を救い、イチゴの魅力を世界中に伝えるために苺ソムリエとして、日夜活動している。
参考:イチゴの旬はいつなのか?実は冬でも初夏でもない。苺が好きだった祖母との思い出
青年海外協力隊として赴任したパナマでも、イチゴ栽培に貢献したいと考えている。
しかし、残念ながらまだイチゴ農園には視察に行けていない。
今回は、ブログを通してイチゴの魅力を皆さんにお伝えしたいと思う。
【追記】イチゴ栽培専門の農業コンサルタントとして独立し、日本と海外で仕事をしています
今はイチゴ栽培専門の農業コンサルタントとして独立し、日本と海外で仕事をしている。
イチゴ農園を始めたい人は、こちらからご連絡ください。
イチゴ関連のテレビ出演、書籍の監修などの仕事もこちらからご連絡ください。
イチゴ(ストロベリー・Strawberry)の基礎情報
そもそも、イチゴとは何だろうか?
イチゴとはバラ科の多年生草本で、果実を利用する植物である。
学名はFragaria×ananassa Duch.で、意味は「良い香りがするパイナップル」である。
英名はStrawberry(ストロベリー)で、意味は「麦わらの小さな果実」。
現在栽培されているイチゴのもとは、どこで誕生したのか?
いちごは、北アメリカの野生種と南アメリカの野生種を18世紀にオランダでかけあわせて誕生したと言われている。
日本には江戸時代末期に伝わり、当時はオランダイチゴと呼ばれていた。
1.イチゴは果実的野菜に分類されている
イチゴは、植物学的には草本(野菜)である。
しかし、スーパーでは果物売り場に並べられているし、フルーツとして消費している。
そのため、農林水産省の統計データでは、スイカやメロンと同様に「果実的野菜」に分類されている。
イチゴは野菜と聞いて驚いた人もいるかもしれないが、イチゴのトリビアはまだまだある。
2.イチゴのツブツブは種ではなく痩果(そうか)という実
世の中の大半の人は、イチゴのツブツブを種で赤い部分が果実だと思っている。
しかし実は、イチゴのツブツブは種ではないし、赤い部分も果実ではない。
植物学的には、イチゴのツブツブが痩果(そうか)と呼ばれる果実。
赤い部分は花托(かたく)と呼ばれる果実を支える部分である。
これはスイカやカボチャも同じで、このタイプの果実は「偽果(ぎか)」と呼ばれている。
慎重にイチゴのツブツブを割ると、中に種子が入っているので確認してもらいたい。
植物学的にはツブツブが果実で赤い部分が花托。
でも、一般的にはツブツブを種と呼び赤い部分を果実と呼んでいるよね。
なので、今回は一般的な呼び方に従って呼ぶことにする。
3.苺の旬は何月なのか?
イチゴの旬はいつなのだろうか?
おそらく、「イチゴの旬は、冬から春だ」と思っている人が多いだろう。
太田市場の月別取扱量を見てみると、たしかに12月から6月までの冬春期がほとんどである。
確かにイチゴが市場に出回るのは、12月からだ。
それは、大型暖房機と二重ビニールハウスを使って人工的に春の気候を作っているから。
冬からイチゴを栽培し、クリスマスのクリスマスケーキ向けとして出荷されているからだ。
そして、一般的なイチゴの開花が終了する初夏まで生産されている。
そのため、世間では「イチゴの旬は冬から春まで」とされている。
アメリカからの輸入イチゴ
夏秋にはアメリカからイチゴが輸入されており、ケーキ屋さんなどで業務用として使われている。
これがアメリカ産の輸入イチゴの写真だ。
一般のスーパーに出回ることはほとんどない。
食べてみると吐き出したくなるほど不味い。
一季成り性と四季成り性のイチゴの性質
イチゴには一季成り性イチゴと四季成り性イチゴがある。
これらは開花(花芽分化)に関して、全く性質が異なる。
簡単にいうと、一季成り性イチゴは「冬と春」に生産できる。
四季成り性イチゴは「一年中」生産できる。
そのため実は、イチゴの旬は「一年中」なのだ!
4.冬と春に収穫できる一季成り性イチゴ
冬と春に収穫できる一季成り性イチゴは、一般的なイチゴである。
日本人がイチゴと聞いて頭に思い浮かべるものが、一季成り性イチゴである。
スーパーに売っている苺、いちご狩りで食べる苺だ。
5.夏と秋に出荷される四季成り性イチゴ
メジャーな一季成り性イチゴに対して、四季成り性イチゴはマイナーなイチゴである。
四季成り性イチゴは、一季成り性イチゴが生産できない夏と秋に出荷されている。
主に夏季冷涼な気候の北海道や東北地方、長野県で栽培されている。
しかし、夏から秋にかけてイチゴがスーパーで売られているだろうか?
また、夏にいちご狩りの看板を見たことがあるだろうか?
実は、四季成り性イチゴはスーパーには出回らない。
四季成り性イチゴの用途は、ほぼ100%が業務用だからだ。
四季成り性イチゴは、夏秋期にケーキ用やイチゴ大福用として利用されている。
【追記】四季成り性を使った夏秋イチゴについて
四季成り性イチゴを使った夏秋イチゴについて、徹底的に解説する記事を書いたので、ぜひ読んでほしい。
参考:夏いちごとは?夏秋イチゴ(四季成り性)について解説します
6.イチゴの基礎知識についてのまとめ
イチゴは果実的野菜であり、ツブツブは種ではない。
いちごは一季成り性イチゴと四季成り性イチゴに分類できる。
一季成り性イチゴは冬から春にスーパーで売られる。
四季成り性イチゴは夏から秋にケーキ屋でケーキとして売られている。
イチゴに関しての基礎的な知識を学んだところで、次は「いちごを美味しく食べる方法」をお教えしよう。
いちごを家庭で美味しく食べるコツ
1.冷蔵庫で3時間以上冷やした後、室温で10分間戻す
イチゴの甘さを最も感じるためには、温度を調整しないといけない。
冷たすぎても、温かくてもダメだ。
まずはイチゴを冷蔵庫で3時間以上安置し、果実の内部まで冷やそう。
しかし、それではイチゴが冷たすぎて甘さを感じずらいので、その後10分ほど室温で温度を戻そう。
すると、イチゴが人間の舌が最も甘さを感じられる温度になる。
2.ケーキなど甘いものを先に食べない
どんなに甘いイチゴでも、砂糖の甘さには敵わない。
もし、ケーキやチョコレートなどの甘いものをイチゴよりも先に食べてしまうと、イチゴの甘さを感じられなくなってしまう。
そのため、イチゴのショートケーキを食べるときは、最初に苺を食べてしまおう。
3.果実の先端から食べない!ヘタから食べない!
一般的にイチゴはヘタを持って、果実の先端から食べることが多い。
しかし、イチゴの果実は先端が最も糖度が高く、ヘタに近いほど糖度が下がる。
なので、その食べ方ではだんだん甘さを感じなくなってしまう。
「逆に、イチゴはヘタ側から食べた方が美味しい!」という噂が出回っているが、それも間違いだ。
苺ソムリエのぼくが推奨するイチゴの食べ方は、コレだ!
4.横からイチゴにかぶりつく!
苺ソムリエのぼくが推奨するイチゴの食べ方とは、ズバリ「イチゴを横から食べる!」。
イチゴの糖度は、果実の先端からヘタ側にかけてバラバラである。
そこで、イチゴを横から食べれば、糖度を均等に味わうことができる。
さらに、イチゴの品種改良では、果実断面の色も評価基準になっている。
それは、イチゴをケーキなどのトッピング用に、「カットイチゴ」として使った時の鮮やかさに影響するからだ。
苺を横から食べることで、品種によって異なるイチゴの断面も楽しむことができる。
初恋の香りという白イチゴは、果皮だけでなく果実断面も内部も白く、非常に珍しい品種である。
イチゴを横から食べるためには、まずはヘタを取らなければいけない。
そして、横から半分ほどガブッとかぶりついてほしい。
5.いちごを美味しく食べる方法のまとめ
イチゴを美味しく食べるためには、冷蔵庫で冷やした後少しだけ室温で保管し、横からかぶりつこう!
次は、美味しいイチゴの見分け方をお教えしよう。
誰でもできる!スーパーで美味しい苺の見分け方
1.苺をスーパーで買うのは1月と2月がおすすめ
イチゴの旬は一年中だと書いたが、特に美味しい時期はある。
イチゴが特に美味しい時期は、1月と2月である。
それは、イチゴの花の二番目で株が消耗していないため。
また、気温が低いため果実が成熟するまでに日数が多くかかり、糖が蓄積しやすいからだ。
12月は値段が高くなるクリスマスに向けて果実の早取りするので、美味しい苺は出回らない。
3月以降は、株が消耗しているし、気温が高くなり果実糖度も低下する。
美味しいイチゴが食べたければ、1月か2月に食べよう!
2.おすすめの品種は女峰と紅ほっぺとあまおう
イチゴだけでなくすべての作物に当てはまることだが、味は栽培方法よりも品種の影響を強く受ける。
こだわった栽培をした不味い品種よりは、慣行栽培の美味しい品種の方が美味しい。
なので、イチゴを選ぶ時は、栽培方法よりも「品種」を気にしよう。
おすすめの品種は、「女峰、紅ほっぺ、あまおう」の3つである。
1.女峰は酸味が強く、完熟すると糖度も高くなり、酸味と甘みのバランスが最高で非常に美味しい品種だ。
しかし、最近では栽培量が低下し、入手しづらくなっている。
2.紅ほっぺは、糖度の高さと果実の大きさがウリである。
そして、全国で栽培されているので、どこでも手に入る品種である。
3.「あまおう」は品種名ではなく、福岡県のJAを通して出荷されたものだけに許される「商標」である。
あまおうをイチゴの品種名だと勘違いしている人が多い。
実は品種名ではなく商標登録されたブランド名である。
あまおうの品種名は、「福岡S6号」である。
あまおうはそこまで美味しい品種ではない。
しかし、あまおうとして出荷するためにはJAの栽培方法に従わないといけないので、質が悪いイチゴが少ない。
そのため、ぼくは女峰、紅ほっぺ、あまおうの三品種を推薦する。
他にも、日本には310品種のイチゴがある(品種登録出願中含む)
・福羽:日本最古の品種で、天皇家に奉納されていた。
・宝交早生:日本の一時代を築いた品種。
・章姫:酸味がなく糖度が高くイチゴ狩りで人気の品種。
・アイベリー:一番果が巨大化する品種。
・さちのか:酸味が強く生クリームとの相性が良い。
・もういっこ:大きいのが特徴。
・さがほのか:栽培しやすく、果実も綺麗な品種。
・さぬきひめ:香川県育成の品種。
・とよのか:ひと昔前に大きなシェアを持っていた品種。
・濃姫:果形が長いのが特徴。
・初恋の香り:果皮が白い白苺。
・ペチカ:北海道、東北で栽培されている四季成り品種。
・白鳥1号、2号:夏栽培向けの品種で、東北で人気が高い。
・雷峰:果皮が硬い四季成り品種。
・サマープリンセス:夏でも収穫できる長野県南信農業試験場が育成した品種で、数年前までは夏の一番人気品種だった。
・すずあかね:ここ数年で大ブームになっている夏栽培向けの品種。
などなど。
【追記】白イチゴとは?
「白イチゴとは何ですか?」という問い合わせが増えてきたので、白イチゴについて徹底的に解説する記事を書いたので、ぜひ読んでほしい。
参考:白イチゴはなぜ白い?苺ソムリエが白イチゴを徹底解説します
3.鮮度を調べるためには、イチゴのヘタを見るべし!
完熟で収穫されたイチゴは、出来るだけ早く食べるべきである。
スーパーでは、イチゴのヘタを見て鮮度を調べよう。
ヘタが水分を持ち緑色をしていたら、鮮度が良い証拠である。
もし、ヘタが干からびていたり、茶色くなっていたら、そのイチゴは収穫されてからかなり時間が経っている。
4.小粒より大粒のイチゴを選んだ方が甘い
果物の中には、大きいものよりも小さいものの方が美味しいものがある。
しかし、イチゴは大きいものの方が糖度が高い傾向にある。
それは、イチゴの花房の中で「一番果(いちばんか)」と呼ばれる、最も果実が大きくなる果実が最も糖度が高くなるからである。
下の写真の赤くて大きな果実が、一番果である。
そのため、小さなイチゴがたくさん入ったパックよりも、大きなイチゴが入ったパックの方が美味しいイチゴである確率が高い。
上の写真の一番果のようにヘタの下が伸びていたり、割れているものも完熟の証。
でもこれは品種によって発生しやすいものと発生しにくいものがあるので、判断が難しい。
綺麗な三角形ではないゴツゴツした形のイチゴは、一番果である可能性が高いためおすすめだ。
ちなみに苺業界では、ゴツゴツしたイチゴを「鶏冠果(けいかんか)」と呼ぶ。
5.(裏技)スーパーではなく、いちご農家から直接買う
これを言ってしまっては、これまでの話の意味がなくなってしまう。
でも、本当に美味しいイチゴはスーパーにはない。
本当に美味しいイチゴは、農家から直接、高級果物店や高級ケーキ屋に出荷されているからだ。
高級店の基準に満たない苺が、スーパーに出荷される。
そして、スーパーに出荷されるイチゴは日持ちするように、完熟する前に早採りされている。
なので、果実に糖度が乗り切らない。
そのため、本当に美味しいイチゴが食べたければ、イチゴを生産している農家から直接買うべきである。
イチゴ園が直売所を持っているケースも多いし、最近ではネットショップを持っている農家も多い。
6.美味しい苺の見分け方のまとめ
美味しい品種は女峰、紅ほっぺ、あまおうの三品種である。
ヘタを見て鮮度を確かめて、大きな果実を選ぼう。
そして、本当に美味しいイチゴが食べたいならば、イチゴ農家から直接買って欲しい!
さて最後に、家庭菜園で甘くて美味しいイチゴの育て方をお教えしよう。
家庭菜園で出来る!甘くて美味しいイチゴの簡単な育て方
1.家庭菜園のおすすめのイチゴ品種は紅ほっぺ
家庭菜園で育てるイチゴのおすすめ品種は、紅ほっぺである。
紅ほっぺは美味しいおすすめのイチゴ品種でも紹介したが、果実サイズが大きくて糖度も高い品種である。
しかも、植物体も大きく育ち、栽培も簡単である。
紅ほっぺの苗は、園芸資材店やネットショップで簡単に入手可能である。
2.プランターか袋栽培が簡単でおすすめ
いちごの栽培方法は、培土の違いだけでも土耕栽培、水耕栽培、養液土耕栽培などさまざまな栽培方法が考案されている。
さらに花芽分化処理を行うことによる収穫時期の違いにより、促成栽培、半促成栽培、抑制栽培、夏秋栽培もある。
しかし、家庭菜園でいちごを育てる場合には、野外での自然栽培が一般的だ。
花芽分化処理を行わない自然栽培の場合には、紅ほっぺの収穫時期はだいたい4月から6月である。
栽培方法は、管理がしやすいプランター栽培か袋栽培がおすすめだ。
プランター栽培と袋栽培の方法は、以下の過去エントリーを参照して欲しい。
参考:メリット&失敗しないコツ!家庭菜園の袋栽培で誰でも簡単に新鮮で美味しい野菜を収穫する方法
プランター栽培や袋栽培に使う培地は、イチゴ栽培専用の市販培土を使おう!
イチゴ農家が美味しいイチゴを育てられる秘密は、自分たちでブレンドした土にある。
しかし、家庭菜園では土づくりをするのが難しいので、市販のいちご専用の土を購入して使おう。
3.たっぷりの水と肥料がポイント!
イチゴを育てるためには、たっぷりの水と肥料を与えよう。
冬季の水やりは控えめでよいが、果実が成る時期には毎日たっぷりと与えよう。
また肥料も液体肥料もしくは固形肥料を、花が咲く前と果実が収穫出来た後には必ず与えよう。
紅ほっぺの葉は大きく育つし果実も大きいので、他のイチゴ品種よりも多めの施肥を心掛けよう。
家庭菜園用には、イチゴ専用の肥料が使いやすいし、甘く育てられるのでお薦めだ!
4.大きくて甘いイチゴを収穫するためには、早めの摘花(摘果)が大切
大きくて甘いイチゴを育てるために大切なコツは、摘花をすることである。
イチゴは花房(かぼう)といって、たくさんの花が集まって咲く。
そのまますべての花に実を付けると、たくさん付きすぎて実が小さくなり、糖度も下がってしまう。
大きくて甘いイチゴを収穫したければ、花が咲く前あるいは咲いた後に、余分な花を摘まなければいけない。
ちなみに下の写真は、章姫(あきひめ)という品種である。
章姫は酸味が弱く、果実数が多いのが特徴の品種である。
家庭菜園ならば、一つの花房につき5個ほどの花を残そう。
すると、大きな一番果が一つ、中くらいの二番果が二つ、小さい三番果が二つの計5つの果実が収穫できるはずだ。
イチゴは風や虫の働きで受粉するので、人工授粉を行う必要はない。
5.ランナー(子株)は必要な苗数だけ残す
イチゴは、栄養繁殖というクローン増殖で増える。
親株から「ランナー」と呼ばれる小苗が発生し、小苗が根を張り新しい株となるのだ。
しかし、そのランナーを生産するためには大量のエネルギーを消費する。
そのため、必要以上にランナーを発生させると親株が消耗し、イチゴが小さくて甘くなくなってしまう。
そのため、次の年に栽培する予定の株数だけ確保し、それ以上のランナーが発生した場合には株元で切り取ろう。
6.成功率が高いイチゴの苗の増やし方
イチゴの苗の増やし方は簡単だが、奥が深い。
「イチゴ作りの出来の80%以上は、苗作りで決まる!」
と言われているほどだ。
それほど、苗作りは重要な作業である。
家庭菜園ならば夏のうちに苗を増やして、来年の春のために大きな苗を育てておこう。
まずは、親株からランナーを伸ばさせる。
次に、ランナーについている小苗を切り取る。
小苗の葉っぱを切り取る。
これは、全国的にはまだ珍しい最新技術である。
小苗の葉を切り取ることで、葉からの蒸散を防ぎ、活着率を高めることが出来る。
しかも、苗の生育には問題ない。
苗を育てるためのポリポットを用意し、育苗培土を詰めておく。
そのポリポットに、小苗を挿しこんでいく。
イチゴの苗作りでは苗を挿すので、この苗は「挿し苗」と呼ばれる。
日陰に置き、毎日3回以上の頻度で水を与える。
すると、一週間ほどで根が生える。
根が生えてからは、一日に一回の水やりを行おう。
ちなみに、この小苗は親株と同じDNAを持つクローンである。
そのため、苗作りが上手くいくと、すべての苗の生育がピタッと揃う。
苗の生育の均一性で、イチゴ農家の腕が試される。
秋にプランターか袋に植えて、冬を越させよう。
春になれば花が咲き、イチゴの実を実らせる。
7.イチゴの病気
家庭菜園で問題になるイチゴの病気を紹介しよう。
うどんこ病
白い粉が葉やランナー、果実についていたら、それはうどんこ病。
これはトマトの葉だけど、これがうどんこ病。
この粉から新しい菌が発生して他の株に移るので殺菌剤を散布しよう。
灰色カビ病
イチゴの果実から灰色のカビが生えてきたら、それは灰色カビ病だ。
特に秋に多く発生する。
灰色カビが生えた果実は感染源になるので、すぐに取り除こう。
根腐れ病
家庭菜園では根腐れ病もおきやすい。
文字通り、イチゴの根が腐る病気。
過湿で発生しやすいので、水のやり過ぎと排水不良には注意しよう。
8.イチゴの害虫
次に家庭菜園で発生しやすいイチゴの害虫を紹介しよう。
アブラムシ
イチゴの葉の裏側や新葉に発生しやすいのが、アブラムシ。
イチゴの周りに蟻が集まっていたら、それはアブラムシがいる合図。
蟻はアブラムシが出す蜜を吸うために集まっているからだ。
家庭菜園だったら株数が少ないので、アブラムシは手でつぶそう。
ハダニ
ハダニはイチゴの葉の裏側に寄生する小さな虫。
ギリギリ肉眼で確認できるくらいの小ささなので、見落としてしまいがち。
しかし、ハダニはイチゴの栄養分を吸うので駆除しないとイチゴがうまく育たない。
家庭菜園なら牛乳を水で薄めてスプレーで撒くといいよ。
ホコリダニ
イチゴの芽がチリチリになって枯れたり、新葉がざらざらして変色したり、花が黒くなったらホコリダニを疑おう。
しかし、ホコリダニは目で見てもわからないほど小さいので発見するのが大変。
なのでプロのイチゴ農家でもホコリダニの発見が遅れて、大参事になることがあるほど恐ろしい虫。
ホコリダニが発生した株は焼却処分にしよう。
スリップス(アザミウマ)
イチゴの花が茶色く汚れて、できた果実の果皮が硬くてひび割れていたらそれhスリップスの仕業。
スリップスとは和名がアザミウマという虫で、花の雌しべを吸う悪い虫。
スリップスが発生すると果実がひび割れて硬くなり全然美味しくない。
花びらを優しくさすったり、息を吹きかけるとスリップスは花の中から動き出すので発見できるよ。
ヨトウムシ
イチゴの葉が食べられているのに食べた虫が見たらなかったら、それはヨトウムシのせいだろう。
ヨトウムシは昼間は土の中に隠れていて、夜になると土からでてきてイチゴの葉を食べるイモムシ。
イチゴの株の周りを少しだけ掘ってみよう。
茶色いイモムシがいたら、それがヨトウムシ。
9.家庭菜園のいちごの育て方のまとめ
紅ほっぺをプランターか袋で、培土を使って育てよう。
必要以上のランナーは摘み取り、前年から苗を育てよう。
【追記】イチゴの養液栽培のECについて
イチゴの養液栽培のECについて、間違った認識が広がっているので書きました。
こちらを参考にしてください。
→ イチゴ栽培の適正なEC値は?水耕栽培と養液土耕栽培では違うし要因が複雑
美味しいイチゴの苗の作り方&育て方&見分け方&食べ方のまとめ
今回は苺ソムリエとして、イチゴの魅力を紹介した。
イチゴは果実的野菜!
イチゴのツブツブは種じゃない!
一季成り性イチゴと四季成り性イチゴがある!
そして、美味しいイチゴの楽しみ方は以下の通りだ。
イチゴの美味しい食べ方は横から食べる!
新鮮で美味しいイチゴの見分け方は品種とヘタを見る!
家庭菜園でイチゴを育てるなら、紅ほっぺをプランターか袋栽培で!
そろそろ、初物のイチゴがスーパーに並び始める時期である。
ぜひ、日本の美味しいイチゴを楽しんで欲しい!
YouTubeでミガキイチゴで有名なGRAさんを紹介
高級ブランド苺の「ミガキイチゴ」で有名な宮城県の株式会社GRAさんの農園を取材しました。
(1)ミガキイチゴの育て方
(2)環境制御の設備
(3)UV-Bライトによるうどんこ病抑制方法
興味がある人は、こちらの動画を見てください。
GRAでミガキイチゴの栽培方法と最新設備を見学【UV-Bでうどん粉病対策】
株式会社イチゴテックのホームページ
宮崎が経営する株式会社イチゴテックは、イチゴビジネスに特化した農業コンサルティング企業です。
こちらからウェブサイトへアクセスできます。
【ご報告】週刊誌女性セブンさんのいちご特集を監修させ頂きました
2016年1月14日発売の週刊誌女性セブンさんのいちご特集を、イチゴソムリエとして監修させて頂きました。
これで自他ともに認める「イチゴソムリエ」ですね(笑)
「いちごのすごい力」というタイトルのカラー特集です。
イチゴの専門家として取材に応じ、イチゴ情報を提供しました!
イチゴソムリエとして紹介して頂きました!
「海外農業コンサルタント」とも書かれています。
ぼくは苺ソムリエとしてアジア、中南米、アフリカでイチゴ栽培を教えています。
イチゴの基礎知識や品種改良の歴史、栄養価などを解説しました!
「いちごトリビア」も担当しています。
イチゴを使ったスイーツについても、品種名などの監修を務めました。
どれも美味しそう!
このように自他ともに認めるイチゴソムリエとして、活動しています。
【ご報告】ポプラ社の児童向け教育本「めざせ!栽培名人花と野菜の育てかたイチゴ・メロン・ブルーベリー」の制作に協力
苺ソムリエとして、ポプラ社の児童向け教育本
「めざせ!栽培名人花と野菜の育てかたイチゴ・メロン・ブルーベリー」
の制作に協力した。
参考:苺ソムリエとしてポプラ社の児童向け教育本「めざせ!栽培名人花と野菜の育てかたイチゴ・メロン・ブルーベリー」の制作に協力したよ
イチゴの育て方について情報提供した。
イチゴの苗の増やし方を教え、写真を提供した。
協力者の一覧にはJAやサカタのタネ、いちご研究所と並んで、宮﨑大輔の文字がある。
このようにイチゴ関連の出版物の監修も務めています。
日本のテレビ局からイチゴの専門家としての出演依頼10回ほど来ましたが、すべて海外で仕事中だったので断りました。
【ご報告】世界トップの種苗メーカー「サカタのタネ」様のイチゴ苗パンフレットを監修しました
参考:苺ソムリエとして世界トップ5の種苗会社サカタのタネ様のイチゴ苗パンフレットを監修しました
日本トップ&世界トップ5の種苗メーカー「サカタのタネ」様のイチゴ苗パンフレットの監修を務めました。
パンフレットの情報は、このブログ記事が基になっています。
【ご報告】TBSの情報番組あさチャンに農業コンサルタントとして出演しました
2017年2月21日にTBS朝の情報番組あさチャンに、農業コンサルタントとして出演しました。
ぼく自身の出演時間は短かったですが、イチゴ特集のナレーションで提供したたくさんのイチゴ情報を使って頂きました。
実はこれまでにも10回ほどテレビ出演の依頼がありましたが、いつも海外にいたので断っていました。
今回はちょうど南米から帰国した翌日に収録が行われたので、出演することができました。
【追記】イチゴについてよく聞かれる質問に回答します
イチゴについてよく聞かれる質問を、動画で回答します。
「なぜ、日本のイチゴは世界一美味しいのか?」についても解説しているので、ぜひご覧ください。
新鮮なイチゴの見分け方とおいしい食べ方を解説します。
プランターでイチゴを育てる方法
家庭菜園でプランターを使ってイチゴを育てる方法を解説します。
イチゴ栽培コンサルティングの紹介
海外や日本で高品質のイチゴを育てたい人には、イチゴ栽培コンサルタントとしてコンサルティングが可能です。
現在は日本、アジア、アフリカの日本式イチゴ農園に対して、コンサルティングを行っています。
現地農園を訪問しての「出張指導(費用は日当式)」と、インターネットを利用した「遠隔指導(費用は月額式)」をしています。
月額の顧問契約を結んでいただければ、継続的に効果が高い指導が可能です。
すでに複数の企業様と契約を結び、栽培指導を行っています。
参考:海外で日本式の高品質イチゴ農園を始める時に注意するべき12のこと
参考:次世代イチゴ生産システム・品種(植物工場研究会)と第21回日本イチゴフォーラム(園芸学会)に参加しました
参考:海外で農業ビジネスは成功するのか?野菜栽培と花卉園芸の成功事例と準備手順と注意点
イチゴ栽培のコンサルティングをご希望の方は、まずは以下のお問い合わせからお気軽にご連絡ください。
日本式イチゴ栽培は海外でブームになっており、すでに東南アジア諸国や中東、南米からもお問い合わせ頂いております。
おすすめのイチゴ専門書
「イチゴ農家になりたい!」という本気でイチゴの勉強がしたい人には、「日本のイチゴ」という本がおすすめだ。
ぼくはこの本がボロボロになるまで読み返し、イチゴの専門知識を頭に叩き込んだ。
日本のイチゴは、世界最高のイチゴの教科書である!!