カウンターパートのまるで日本人のような「○○力」に驚かされた話
先週、農業技師を集めた会議で農業技術のプレゼンを行った。
会議には仕事上の相棒であるパナマ人のカウンターパートも一緒に出席したのだが、そのときに驚くべき出来事が発生した。
今回はこのエピソードを紹介しようと思う。
農業技師の会議へ参加したときの出来事
先週、パナマ国ベラグアス県の農業技師を集めた会議に、カウンターパートと一緒に参加した。
今回の会議では、ぼくが住んでいるカニャーサス郡の農業問題を紹介し、その解決方法を説明した。
ちなみにカウンターパートは、めちゃくちゃ優秀な男である。
彼の優秀さについては、こちらの過去記事を読んで欲しい。
参考:JICAボランティア同士のカップル、結婚の秘密!青年海外協力隊の新人隊員は、先輩隊員に恋をする。
1.参加者からの質問に困ってしまった
ぼくが紹介した農業問題のひとつに、キャベツの生育が悪いという問題があった。
プレゼンではキャベツの生育が悪い理由は気温が高いことではなく、施肥が足りていないからだと説明した。
その証拠として、ぼくがカニャーサス郡で行ったキャベツの追肥実験のデータを紹介し、追肥を行うことでキャベツの直径が1.4倍になることを示した。
また農民が実践しているキャベツを結球させるためにヒモで縛るという行為は、キャベツの生育を抑制させるので推奨できないと伝えた。
すると、この説明を聞いた別の郡で働く農業技師からこんな質問を受けた。
「なぜ、今までカニャーサス郡の農業技師たちは、キャベツに追肥を行うことを教えなかったんだ!? なぜ、ヒモなんて使っているんだ!?」
ぼくは質問の意味を理解したが、返答に困ってしまった。
なぜならば、①カニャーサス郡の農業技師は農業の知識が何もないので、そもそも「追肥」という行為を知らない。
しかも、②農民にキャベツをヒモで縛るという馬鹿げた行為を教えていたのは、カニャーサス郡の農牧省支所の所長なのである。
この2つの事実を会議の場で公表することは、明らかにカニャーサス郡で働く同僚たちのメンツを潰す行為であり、パナマ人にとってはメンツを潰されることが一番の屈辱である。
そこで、ぼくはこの質問に対して真っ向からは返事をせずに、「農民は焼き畑農業をしているので施肥という概念を持っていないこと、農民はキャベツの光合成についても知らないこと」を理由として答えた。
しかし、この的をあえてズラした返答では質問をした農業技師は満足せず、「彼は俺のスペイン語を理解していないようだから、代わりに君が答えてくれ!」とぼくのカウンターパートへ話しかけた。
2.カウンターパートの助け舟
会議室にいたおよそ50名の農業技師が、カウンターパートの発言に注目した。
すると、ぼくのカウンターパートは意外なことを話し始めた。
カウンターパート:「いや、理解していないのは、君の方だ!」
他の郡の農業技師:「えっ?」
カウンターパート:「ダイスケは、君の質問の意味を理解したうえで、あえてあのように答えたんだよ」
他の郡の農業技師:「なぜ、理解したのにそのまま答えを言わないんだ?」
カウンターパート:「彼は気を使っているんだよ。これが日本人なのさ」
他の郡の農業技師:「???」
彼のおかげでこの質問は決着し、別の職員が他の質問をしたので会議はそのまま進行した。
ぼくはカウンターパートが「ぼくが気を使って答えなかったこと」を察していたことに驚いた。
まさか、自由奔放に生きているパナマ人が「他人の気持ちを察する気持ち」に気づくとは思わなかったからだ。
3.会議終了後の会話
そこで、会議が終了してからカウンターパートに、先ほどの質問での出来事について話しかけてみた。
宮﨑:「さっきはありがとう。まさか、君がぼくが気を使ったことに気がつくとは思わなかったよ」
カウンターパート:「はっはっは。君と2年間も一緒に過ごしたからね。君からは農業技術だけではなく、他人を気遣う気持ちや他人との関係性の築き方を学んだよ。日本人はパナマ人とは全然違うね」
宮﨑:「君は日本人みたいなパナマ人だな(笑)」
カウンターパート:「はっはっは」
ぼくのカウンターパートは、ぼくと2年間一緒に活動したことで、今ではぼくが考えていることがわかるらしい。
結婚したら最高のパートナーになれそうだ、おじさんだけど。
今回の会議では左遷になりそうなカウンターパートの能力を伝えたくて彼を巻き込んだが、結局はぼくが彼に助けられてしまった。
参考:青年海外協力隊の帰国直前に50名の農業技師へ野菜栽培のプレゼンをした真の目的
まとめ
パナマ人のカウンターパートを助けようと思ったら、逆に彼に助けられた。
ぼくのカウンターパートは、「他人の気持ちを察する力」を身につけていた。
農業技術以外にも伝えることができて嬉しく思うし、ぼくも彼からたくさんのことを学ばせてもらった。
彼と一緒にコンビを組んで活動できたことを感謝している。