【青年海外協力隊ルワンダ・水の防衛隊の寄稿】ボランティアは学生時代の思い出じゃない(タケダノリヒロ)

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ルワンダの子供とタケダノリヒロさん

こんちわ、久しぶりの日本を満喫中の宮﨑です。

アフリカのルワンダで水の防衛隊として活動している青年海外協力隊のタケダノリヒロさん(ルワンダノオト 青年海外協力隊ブログ)から寄稿して頂きました。

まずは青年海外協力隊になったきっかけや活動内容について、紹介して頂きましたのでぜひお読みください。

※以下はタケダノリヒロさんの文章です。

 

 

 

「世界を変えたい」なんて、いつから思ってたんだっけ――

ルワンダの自宅に掛けてある青年海外協力隊のカレンダー。そこに書いてある、いかにも意識の高いキャッチコピーを見てふと思いました。

JICAのカレンダー

意識高い系カレンダー「あなたのやさしさが世界を変える」

 

 

 

目次

カッコ良くなりたかった就活時代

2011年3月。 ぼくは大学3年生で、就活真っ最中。「社会人と学生の違いは、与える側か与えられる側かってことだよ」。よく相談に乗ってもらっていた社会人の先輩から、そう教わりました。

与える側か――そんなことを考えながら自己分析と面接を繰り返しているときに起こったのが、東日本大震災です。東京でトイレットペーパーやミネラルウォーターを不必要に買い占めるおばちゃんたちに苛立ちを感じながら、「自分には何が出来るんだろう、何を与えられるんだろう」とそれまで以上に強く考えさせられました。

就活は成功し、希望していた国内の菓子メーカーに内定が決まりました。この会社に決めたのは「世界の子どもたちに貢献する」というビジョンに共感し、社会貢献事業を拡大していきたいと思ったからです――と言えば聞こえは良いですが、単純に「カッコ良かったから」です。とにかくカッコいい大人になりたい、カッコいい大人ってどんな人だろう、と考えていたら「子どものために社会貢献出来る大人ってカッコいい! 」という結論に至りました。……ピュアですね。

 

 

 

ボランティアを学生時代の思い出にするな

大学最後の夏休み。タイの山岳民族が住む地域で、NGOのボランティアに参加しました。「世界の子どもたちに貢献したいって言っても、子どもと関わったことなんかほとんどないじゃん」「子ども好きって言えば、モテると思ってるんじゃないの」という自分への疑いを晴らすためです。

疑いは、見事晴れました。それどころか、子どもだけじゃなくボランティアにまでハマってしまいました。現地で国際交流や日本語の授業をした子どもたちが、帰国時に「帰らないで〜」とまとわりついてきて、日本語で書いた手紙をくれたんです。字は間違いだらけでしたけど、それがまた嬉しくて、ボランティアによって得られるものの大きさを知りました。

青年海外協力隊のタケダノリヒロさん

卒業直前の2月。大学のボランティアツアーでようやく東北に行くことが出来ました。会社を辞め、現地に住みながら支援活動をしている大学のOBが案内をしてくださり、最後にこう言いました。

「ボランティアを学生時代の思い出にしないでください」

その言葉の意味を考えながら、バスの窓から東北の景色を眺めていたら、あっという間に東京に着いていました。

 

 

 

ボランティアは「必要とされるだろう」でやるもんじゃない

いよいよ社会人。配属希望を聞かれ、迷わず東北に行かせてくれと頼みました。運良く希望が通り、仙台支店に営業として配属。休日には、合コンと同じくらいの頻度で(つまり頻繁に)ボランティアにも参加しました。

営業としての提案にもなるべく社会貢献の要素を取り入れ、得意先との企画で被災地の子どもたちのために「お菓子の家づくり教室」を開きました。きっと喜んでくれるだろうなとウキウキしていたんですが、反応は思ったほどよくありませんでした。むしろ「かーえーりーたーいー」とゴネるクソガキお子さんすらいました。

タケダノリヒロさんの写真

 

ボランティアは「必要とされるだろう」という安易な気持ちでやってはいけない。そう思いました。勝手な想像にもとづいて、自分が出来ることだけ提供しても大きなお世話なんだと。まずは相手が何を求めてるか知ることが大事なんだと。

それ以来、「もしこの会社で社会貢献事業部に行けたとしても、ほんとに自分のやりたい社会貢献なんて出来ないんじゃないか、薄っぺらい社会貢献になっちゃうんじゃないか」と考えるようになりました。大学時代のボランティアで出会った先輩のように、「ヨソモノ」でありながらも現地に溶け込んで、住民を巻き込みながら活動することが、自分の目指す社会貢献なんじゃないかと思うようになりました。

このままでいいのかな――そう思いながらも楽しく仕事をしていたある日、同い年の友人が脳梗塞で倒れました。幸い大事には至らなかったんですが、自分もいつ死ぬか分かりません。だったら「いつかは、おそらく」できるかもしれないことを待つのではなく、「いま、確実に」できることをやろうと決めました。

現地の住民を巻き込みながら、一緒に問題を見つけて、一緒に解決する経験を積みたい。

その手段が、青年海外協力隊でした。

 

 

 

 

たった一人の誰かのために

2016年3月。あれから5年が経ちました。ぼくはいま、ルワンダにいます。

 

ムシャセクターという村に、先月から住み始めました。外国人はぼく一人。コンビニもスーパーもない、のどかな村です。活動内容はコミュニティ開発という職種で、「水の防衛隊」として水や衛生環境の向上に携わること。

ルワンダの子供とタケダノリヒロさん

 

世界を変えたい。でもどうやって?

その方法が少しだけ具体的になってきました。先日、 四角大輔さん(元音楽プロデューサー)のこんな言葉に出会いました。

「大ヒット曲というのは、大勢の人のためにつくられているのではなく、必ず、大事なたった一人の誰かのためにつくられている」

 

たった一人の誰かのために――この「誰か」に会いたくてルワンダに来たんだ、と思いました。同じ村に住んで、顔と名前を覚えて、一緒に笑ってご飯を食べて、生き方を知って、この人の役に立ちたいと思える誰かに会いに。

ルワンダの子供

 

 

 

活動進展の兆し

配属先であるセクターオフィス(村役場のようなもの)には、英語が流暢に話せる人も、水・衛生担当の人もおらず、当初はどうしたものかと途方に暮れていました。村の人たちも、一見何の問題もなく幸せそうに暮らしています。

ほんとにおれ必要なのかな――そう思いながらも、オフィスの同僚たちに「こんなことをやりにきたんだ」「これは出来るけど、これは出来ないから協力して欲しい」と『ムズング(外人)ボランティアの取扱説明書』なる書類まで作ってアピールしていました。

するとある日、いつも1人で行っていたフィールド調査(またの名を散歩)に「おれも行きたい」と、同僚の獣医が着いてきてくれました。ぼくが知らなかった道を教えてくれ、辿り着いたのはとある水源。有料の水道を使えない貧困層の子どもたちが水汲みに来ていました。

ルワンダの少年

こんなところがあったのか――と驚きつつ、子どもたちに水をどうやって使ってるのか聞いてみると、ろ過も煮沸もせずにそのまま飲んでいるとのこと。

水の使い方が原因で病気になる人も多いはずだと思い、今度は村の診療所に行き、お医者さんを紹介してもらいました。事情を話してデータを見せてもらうと、やはり下痢などの水や衛生環境が原因でかかる病気が多い。水の正しい使い方を啓発できれば、病気を減らせるかもしれない――。

その日の午後、オフィスにとあるルワンダ人男性が訪ねてきました。誰かと思えば「このセクターに水を供給するインフラ会社のボス」とのこと。え、社長……? しかも「パートナーとしてどんなふうにやっていけるかな」と超協力的です。

こんな風に、次々と協力者が現れてグイグイ前に進んでいくのを実感し、本気で鳥肌が立ちました。自分にも出来ることがある、と。

ぼくには特別な才能もなければ、専門的な能力もありません。でも「人に恵まれる力」だけはあります。これまでの人生でもたくさんの人に出会い、影響を受け、成長させてもらいました。自分一人では何も出来なくても、仲間を集めればいいんだ、それが自分の仕事だと思いました。

 

 

 

出来そうな夢しか見ちゃダメなの?

世界を変えるなんて、よくそんな恥ずかしいことが言えるなと自分でも思います。でも植松電機の専務取締役、植松努さんはこう言っています。

「出来そうな夢しか見ちゃダメなんだろうか。いま出来ないことを追いかけるのが夢じゃないの?」

 

【植松努さんのTEDスピーチ:Hope invites | Tsutomu Uematsu | TEDxSapporo】

 

夢と言えば、先月じいちゃんが亡くなりました。一時帰国するかどうか迷いましたが、結局帰らないことにしました。 葬儀には間に合わないし、ちょうど首都キガリからこの村に移る前日だったため、ここにいるべきだと判断しました。祖父がまだ元気な時、会って別れる時には必ずぎゅっと握手してなかなか離してくれないような、穏やかながら熱い人でした。

1年ほど前に会ったとき、いつもと同じようにしっかりと右手を握られて、「夢を持てよ」と言われました。そのときは、「うん」と頷いたものの、それ以上は何も答えられませんでした。自分の夢が何かはっきりと言えなかったんです。でも、最近分かってきました。

「社会貢献の現場から、子どもたちがワクワクできる世界をつくる」。

これがぼくの夢です。

この国では毎年2,000人以上の子どもたちが、安全でない水や劣悪な衛生環境が原因の下痢で亡くなっています。亡くなっていたかもしれない子どもが、ぼくが活動することによって一人でも夢をもって元気に育ってくれたら。たった一人でも人生を変えられたら。

そのときは、ぼく自身ももっと成長出来ているはずです。 5年前の自分から見たら、たぶんいまの自分はめちゃくちゃカッコいいです。やりたいことをやって、毎日最高に楽しく過ごせています。

でも、この村で過ごす2年間で、もっともっとカッコ良くなってみせます。

ボランティアは、学生時代の思い出じゃないですからね。

 

[ タケダノリヒロさんのSNS情報 ]

◆ブログ: 『ルワンダノオト 青年海外協力隊ブログ』

◆Facebookページ: ルワンダノオト 青年海外協力隊ブログ

◆Twitter: @NoReHero

◆Instagram: @norehero415

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