新所長の就任
今年の5月にパナマ共和国の総選挙が行われ、大統領と第一党が変わった。
そして、地方でも議員選挙が行われ、ぼくの配属先の農牧省カニャサス郡支所の前所長は政治家となった。
そして、前所長の代わりに配属先には新しい所長が就任した。
元郡長かつ元同僚
配属先の新所長は、元カニャサス郡郡長であり、もともと政治家である。
前回の郡長選挙で敗れてからは、農牧省カニャサス郡支所で働いていた。
そのため、ぼくとは毎日配属先で顔を合わせており、同僚であった。
彼とは元同僚ではあったが、これからは上司と部下という立場になるため、新しく信頼関係を築く必要があると考えた。
なぜなら、前所長とは信頼関係を築くのに苦労したからだ。
前所長との関係
前所長との間に信頼関係を築くのには苦労した。
慣れないパナマ共和国ということもあったし、最初の頃はスペイン語がろくに話せなかった。
「日本に帰れ!」とクビ宣告
ある日、前所長から「日本に帰れ!」とクビ宣告されたことがあった。
参照:「日本に帰れ!」の一言がなかったら、今頃ぼくは日本に帰っていただろう。|JIBURi.com
スペイン語が話せないことと、農業技師として活動の結果を出せていないことが原因だった。
前所長はパナマ人にしては珍しく、仕事熱心な男だったのだ。
ぼくの立場はボランティアではあるが、他のパナマ人職員と同じように「仕事で結果を出すこと」を求められていた。
報告書を通して信頼構築
そんな厳しい前所長との関係を築けたのは、「書類による報告」を行ったからだ。
「パナマの仕事の方法は書類文化」と言われるほどに、書類を大切にする。
業務に関わることは必ず書類で連絡しなければ、相手にしてもらえないのだ。
電話や口頭での連絡は、パナマでは意味をなさない。
その事実に気づいたぼくは、事あるごとに報告書を作成し、前所長に提出することにした。
おかげで前所長からは農業技師として、信頼されるようになった。
参照:青年海外協力隊にクビ宣告をした上司に実験の報告書を提出すると?|JIBURi.com
今でも彼とはたまにカニャサス郡内で会うことがあり、活動に協力してもらっている。
厳しい前所長の存在が、ぼくの活動の原動力になったことは間違いなく、彼には感謝している。
農牧省の上司の登場
ある日、農牧省サンティアゴ本署の上司がカニャサス郡支所を訪ねてきた。
サンティアゴ本署はベラグアス県を束ねる部署で、カニャサス郡支所の管理をしている。
本署の上司はぼくから見ると、上司の上司に当たる。
ちなみにその上司は女性である。
縦割り構造
本署の上司が訪ねてきたのは、カニャサス郡支所の書類の管理がずさんだったためで、掃除と整理整頓を教えにやってきた。
彼女は書類を整理していると、ぼくの報告書が全くないことに気がついた。
ぼくが前所長に提出した書類はすべて、前所長が彼の荷物と一緒に持ち去ってしまっていたのだ。
何もしていないボランティア疑惑
本署の上司はボランティア活動に関する書類が全く残っていないことを発見し、「このボランティアは、全く何も働いていないのでは?」と疑い出した。
ぼくが行っている活動について説明したが、パナマでは口頭での説明は役に立たない。
しかも、新所長もぼくの活動についてはほとんど理解していない。
それは、ぼくは農牧省に配属されているが、保健省のプロジェクトのために活動していたからだ。
ぼくの活動を知っているパナマ人は、保健省のプロジェクトメンバーと仕事上の相棒である農業技師だけだ。
そして、ちょうどその時は農業技師は事故で指を切断したために、一ヶ月間の休暇を取っていた。
結局、本署の上司はぼくの活動について納得しないまま、本署に帰って行った。
ボランティア活動の報告書類を提出
またクビ宣告されるのは嫌だったので、ボランティア活動についての報告書類を提出することにした。
新所長にぼくの活動を理解してもらい、かつ本署の上司がいつ訪ねてきてもよいように、合計144枚の報告書類を印刷し、配属先の書類保管庫に保管することにした。
27枚の報告書
印刷したのは、昨年の8月以降に作成した27枚の報告書。
提出したのはすべてスペイン語で書かれているもので、日本語で書いた物は除外した。
滞在調査の報告書や、キャベツの追肥実験の結果報告書、有機肥料の作り方マニュアルなどである。
参照:プロジェクトリーダーに35枚の青年海外協力隊の活動報告プレゼンをした。|JIBURi.com
117枚のプレゼン資料
昨年の8月以降に作成したプレゼンテーションの資料も印刷した。
プロジェクトメンバーへのプレゼン、JICA活動報告会でのプレゼンなどこれまでに何回かスペイン語でプレゼンを作っていた。
参照:JICA主催の「協力隊活動報告会」に参加し、15分間の中間報告プレゼンをスペイン語で行いました。|JIBURi.com
配属先の新所長の反応
配属先の新所長にすべての報告書類を提出すると、その量に驚いていた。
彼は農業に関する知識は全くないので、報告書類の内容は理解していないようであったが、報告書類を見ることで、およそ一年半の間にぼくがボランティア活動を行ってきたことを理解したようだった。
配属先の上司の理解と協力はボランティアに活動にとってとても重要なので、これからも報告書類を作成し、彼に提出することにする。
まとめ
前所長との信頼関係を築くために、報告書の提出が役に立った。
別の地域にいる上司の上司と新所長にボランティア活動を説明するために、これまでに作成した144枚の報告書類を提出した。
新所長との関係構築のためにも、報告書類を提出していきたい。