タイトルを読んだだけでこの写真を思い浮かべることが出来る人間は、地球上を隅々まで探してもそうはいないはずだ。それは、二つの条件を満たす必要があるからだ。一つ目はスペイン語が理解出来ること、二つ目は長野県民であることだ。この条件を満たしている人間は、僕が何を書こうとしているかすでにわかっているはずだ。
まず、「おそぱ(sopa)」とはスペイン語でスープのことである。パナマでは豆のスープや「サンコーチョ」という鶏肉のスープが国民食になっていて、みんなスープが大好きである。僕もパナマ料理の中でサンコーチョが一番好きだ。サンコーチョには骨付きの鶏肉が入っているので、スープには超濃厚な鶏エキスが染み出していて、ニンニクやクラントロー(パクチー)、オレガノなどの香味野菜の香りが食欲をそそる。日本に住む日本人に作っても、大人気間違いなしだ。
サンコーチョ!
次に、「『おいしいのは○○○です。』という言葉の○○○には何が入るでしょう?」と長野県民に尋ねたら、100%同じ答えが返って来るはずである。いや、こんな具合に120%の答えが返って来ると思う。
「おいしいのはお蕎麦です。 八幡屋磯五郎。」
長野県には八幡屋磯五郎という七味唐辛子屋があり、長年テレビCMを流しているのだが、そのCMの最後に登場するコピーが「おいしいのはお蕎麦です。」なのである。このCMを知らない長野県民は長野県民を名乗る資格がない、と言ってもいいほど長野県では超有名だ。ちなみに「使われない日もあります。」バージョンもあり、どちらも八幡屋磯五郎のホームページから視聴できるのでぜひ見て欲しい。長野県の気風を表した素晴らしいCMだ。
根っからの長野っ子の僕は、もちろんパナマにも八幡屋磯五郎の七味唐辛子を持参した。善光寺がデザインされたブリキの缶がカッコイイ。長野県民の食卓には、八幡屋磯五郎の七味唐辛子が欠かせない。冬の寒さが厳しい長野県には七味唐辛子の辛い暖かさが欠かせないのだ。パナマ料理では辛味は 嫌われていて料理に唐辛子を使い機会は少ないが、七味唐辛子の誕生秘話を見るとパナマの山奥の集落でも生かせそうな商品開発の例である。
長野県では七味唐辛子を蕎麦にかけていたが、パナマではラーメンにかけている。辛味がないパナマ料理ばかり食べていると、無性に辛い食べ物が食べたくなるのだ。幸いにもパナマではインスタントラーメンが売っているので、小腹が空いたときに自分で作って食べているのだが、するとホストファミリーから「あら、スープを食べているのね」と声をかけられる。パナマではラーメンもスープに分類されるのだが、僕はそれに違和感を感じてしまう。日本食の中でラーメンが「ラーメン」というジャンルを形成していると気づいた。数ある日本食の中でも、ラーメンというジャンルの重要度はかなり高い。ラーメンより大切なものなどあるのだろうか、いやない。
本当に大切なものは、失ってから初めて気が付くものだ。今はまるで僕の心にぽっかりと空の丼が空いているようだ。
あぁ~ ラーメンが食べたい!