青年海外協力隊の野菜栽培隊員としての3つの失敗例【識字率,菌の説明,プロジェクト重複】

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目次

 青年海外協力隊にとっての失敗とは?

「挑戦には失敗が付き物だ」

青年海外協力隊の活動は、新しい土地でいい意味での変化を起こそうという、いわば”挑戦”のようなものだと思う。

だから失敗も当然ある、というか失敗だらけだ。

 

集会に来るはずの人が来なかったり、職場の同僚とケンカをしたり、何回教えても技術が村人に定着しなかったり、上手くいかずへこむこともある。

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協力隊と失敗の関係については、パナマに派遣される前に駒ケ根訓練所でJICAの講師がこんなことを言っていた。

「上手くいかない場所だから、青年海外協力隊員を派遣するんです。上手くいく場所には、最初から専門家を派遣します。でも、協力隊員の失敗が後に役に立つんです」

協力隊員の失敗がJICAにデータとして蓄積され、その後のプロジェクトのために生かされるのならば、挑戦して失敗することも悪くないと思える。

協力隊員の役割は、たくさん挑戦してどんな失敗をしたかを報告することなのかもしれない。

 

 

協力隊活動の失敗談、聞きたい?

と言っても、やはり失敗談は出来れば言いたくない。

「恋愛の失敗談」なら飲み会の鉄板ネタだけど、「協力隊活動の失敗談」は飲み会でもたぶんウケない。

興味がある人なんて、ほとんどいないからだ。

 

協力隊員の失敗談に興味があるのは、青年海外協力隊を目指す候補生くらいだろう。

そこで協力隊を目指す後輩のために、ココに失敗談を書き記そうと思う。

ちなみにこんなことを思いついたのは、最近見事な失敗をしたばかりだからだ。

 

 

つい最近、失敗した話

今週の月曜日に山奥の集落にある学校菜園に行き、村人を集めて「有機肥料の作り方」を伝授した。

この講習会のために、僕は計画を立てて念入りに準備した。

 

例えば、プロジェクト終了後も村人だけで有機肥料が作れるようにと、材料を「村内で無料で入手できるものだけ」にした。

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また作成手順も覚えられるように超簡単にして、さらに忘れたときに思い出せるようにと、材料の分量と作成手順を書いた「メモ程度のマニュアル」も作成した。

JICA専門家やパナマの農牧省が作成した有機肥料の作り方では、材料は町で買わないと入手できないので、山奥の集落の村人が自力で入手することは事実上不可能である。

また作成手順もA4用紙4枚分で構成されており、村人が作り方を憶えるのは不可能だろう。

 

「専門家よりも村人の役に立ってやるぞー」とやる気満々で講習会を始めた。

今振り返ってみると、「農業で人の役に立ちたい!」という熱過ぎる情熱が失敗の原因である。

 

 

失敗①文字が読めないからマニュアルが読めない

まず一つ目の失敗は、村人が配布したマニュアルを理解できなかったことだ。

マニュアルは表と図を使い、文字はメモ程度の文量で、しかも村人が理解できない難しい単語や専門用語を使わないようにと、事前にカウンターパートのチェックを受けた。

それなのに、村人は理解することが出来なかった。

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理由は簡単である。

村人は文字を読むことが出来なかったからだ。

彼らは非識字者であった。

 

村の若いリーダーはメモ帳を持ち歩き、文字の読み書きをしていたので、「他の村人たちも文字を書くことは出来ないかもしれないが、読むことなら出来る」と勝手に思い込んでいた。

僕は村人のことを、ちっとも理解できていなかった。

 

すると、カウンターパートが助け舟を出してくれた。

「あなたたちは文字が読めないが、子供は文字が読めるでしょう?そのマニュアルを読みたくなったら、子供に読んでもらいなさい」

僕は子供にマニュアルを読んでもらいながら、有機肥料を作る両親の姿を想像してみた。彼らは何を感じるだろうか。

 

 

失敗②菌という存在

有機肥料を仕込みながらで、有機肥料が”菌”により発酵することや”菌”が植物の成長の役に立つという説明をした。

難しい菌の名前や科学的な働きは説明せずに、「とにかく菌は良いものなんだぜ!」と伝えたかった。

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しかし、村人はキョトンとしている。

 

その様子を見かねたカウンターパートが、すかさず助け舟を出してくれる。今回、彼の優しさに惚れ直した。

「ダイスケが言っている”菌”というものは、『目には見えないけど存在している小さな生き物』のことだよ」

その補足説明を聞いて、ようやく村人は納得したようだ。

 

村人は、菌というものの存在を知らなかった。

考えてみれば、僕らも目に見えない菌の存在を正確には把握していない。

菌に関するほとんどの知識はテレビや本、マンガ「もやしもん」から得た知識だ。

山奥の集落にはそのすべてがないので、村人は菌の存在を把握していないのだろう。

僕は村人のことを、ちっとも理解できていなかった。

 

 

失敗③すでに経験済みだった

さらに失敗は続く。

肥料作りの講習会も終盤になり、「何か質問はないか?」と問いかけると村人から意外な返答があった。

 

「特にないわよ。だって有機肥料の講習はすでに受けたことがあるから」

 

 

 

なんですと~~~~!?

 

カウンターパートから「この集落で有機肥料の作り方は教えていない」と聞かされていたので、今回の講習会を実施した。

しかし、実は5年前に農牧省とは別の組織が野菜栽培のプロジェクトを行い、今回と同じような有機肥料の作り方を教えてくれたそうだ。

 

彼らは「もう知ってるんだけどなぁ」と飽き飽きしながらも、僕の指導に付き合ってくれていたのだ。

僕は村人のことを、ちっとも理解できていなかった。

 

唯一の救いは「でも今回の手順の方が簡単だし、材料も全部家にあるから自分でも作れそうね」と言ってくれたことだ。

気を使ってフォローもしてくれるなんて、本当に村のおばちゃんたちは優しい。

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失敗して気づいたこと

たった2時間の講習会で、僕は3つも失敗を犯した。

どの失敗も「村人の理解不足」と「村人との情報交換不足」が原因だ。

 

 

もちろん他人のことを100%理解することは不可能だが、それでも出来るだけ村人のことを理解したい。

国籍も育った環境も宗教も違うからこそ、理解するように努力しないといけないと思う。

 

また僕は、山奥の集落から車で1時間半ほど離れた村の中心地に住んでいる。

そのため村人と交流出来るのでは、月に二回ほどの巡回指導のわずか数時間と、一週間泊まり込む滞在調査の間である。

これからは村で過ごす時間を出来るだけ長く取り、僕の活動に関しても村人と意見交換しようと思う。

 

優しいおばちゃんたちなら、きっとアドバイスをくれるはずだ。

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