長野県とメキシコの共通する伝統「昆虫食」
青年海外協力隊の任国外旅行制度を利用して、メキシコを旅行した。
メキシコ料理といえば「タコス」を思い浮かべる人が多いと思うが、実はメキシコの伝統料理には「昆虫食」もある。
ぼくがメキシコの昆虫食に注目した理由は、ぼくが昆虫食文化が残る長野県出身だからである。
昆虫食文化が強く残る信州伊那谷生まれのぼくは、小さな頃からイナゴや蜂の子、ザザムシを食べて育った。
そこで、メキシコでも虫料理を食べてみることにした。
リュウゼツランに住むイモムシを食べてみた
メキシコの首都メキシコシティに到着したぼくは、さっそく虫料理レストランを探した。
メキシコシティでは昆虫食文化があまり残っていないらしく、虫料理を出すレストランを見つけるのは苦労したが、なんとか地元民が利用する市場の中でジビエ料理のレストランを見つけた。
1.ジビエ料理のお店Parrilla de Cazar
メキシコシティの「Mercado de Pugibet(プギベット市場)」にあるジビエ料理のお店Parrilla de Cazar(狩猟炭火焼きという意味)で、イモムシ料理が食べられる。
こちらがメニュー。
基本的には鹿、アルマジロ、イグアナ、猪、ワニ、ダチョウなどの珍味・ジビエ料理のお店である。
野生動物のメニュー以外にも、イモムシ料理もあった。
2.イモムシの種類を選ぶ
イモムシ料理を食べたいと言うと、「イモムシには2種類あるから1つ選べ」と言われた。
生きたイモムシを食べられるかと思ったら、イモムシは冷凍品だった。
メキシコで食べられているイモムシには、「リュウゼツランの葉に住む白くて大きいイモムシ」と「株元に住む赤くて小さいイモムシ」の2種類があるという。
こちらがメスカルというお酒の原料になるリュウゼツラン・マゲイ。
ぼくは赤くて小さい「Chinicuil Gusano Rojo de Maguey」というイモムシを食べることにした。
3.イモムシの調理方法
さっそく店員さんが、イモムシの調理を始めた。
まずはフライパンに凍ったままのイモムシを入れて、温めた。
その後、塩・胡椒とオリーブオイルで味付けした。
調理方法は至ってシンプルだ。
調理している姿を撮影していると、「あなた虫を食べるのが怖いんでしょ~?」と店員さんがからかってきたが、「ぼくはイナゴを食べて育ったから全然怖くない」と説明した。
そして、完成したのがこちらの「イモムシのソテー、トルティーヤ添え」だ!
4.実際にイモムシを食べてみた
さっそく、イモムシを食べてみた。
まずはじっくりとイモムシを観察した。
イモムシはピンク色か白色をしていた。
どこからどう見ても、イモムシだ。
フォークと大きさを比較してみた。
小さいイモムシは2cmくらい、大きなイモムシは5cmくらいだった。
我慢できなくなったので、イモムシにガブッとかぶりついてみた。
隣りの席ではイギリス人がワニの肉を食べていたので、イモムシを1匹勧めてみたが食べてくれなかった。
小さなイモムシはカリカリになっていて香ばしく、大きなイモムシはブチュっと内臓がとろけて出てきて甘かった。
せっかくなので、メキシコっぽくトルティーヤと辛いサルサと一緒に食べてみることにした。
トルティーヤの上に20匹くらい乗せてみた。
これもバクリ。
隣りの席のイギリス人はイモムシの写真だけ撮って、「You are crazy…」と言っていた。
むしゃむしゃと食べ勧めて、あっという間にイモムシのソテーを完食した。
いただきました(長野県流のごちそうさま)。
5.イモムシ料理の感想
このイモムシ料理の値段は1,600円だった。
ちなみにメキシコの屋台で大衆料理タコスを食べると、一食300円くらいなので、イモムシ料理は5倍以上も高価だった!
このレストランの店員さん曰く、メキシコにはイモムシ以外にも虫料理が存在するらしい。
そこで、他の虫料理も探してみた。
メキシコで7種類の虫料理を食べてみた
イモムシ料理を出していたプギベット市場の場外で、虫料理を出すレストランを発見した。
1.お店Restaurante de Comida prehispánica y exótica
そのレストランは、Restaurante de Comida prehispánica y exótica (スペイン伝統料理と異国的な料理のレストラン)という名前だった。
「店長、今日虫置いてる?」と虫の入荷を確認してから、入店した。
2.虫メニュー
このレストランは、伝統的なメキシコ料理とジビエ料理、虫料理を出すお店だった。
「とにかく、虫が食べたい!メキシコの虫を食べ尽くしたい!」とお願いすると、「虫の盛り合わせ」を出してくれることになった。
3.食べた虫の紹介
そして、運ばれてきた料理がこちら。
大きなお皿一杯に虫が盛られていた。
数えてみると、7種類の虫が乗っていた。
嬉しくなって虫の盛り合わせを持って記念撮影をしていると、後ろの席のカップルの顔が引きつっていた。
基本的にメキシコ人は虫料理が嫌いなようだ。
7種類の虫を順番に紹介しよう。
1.ザリガニ(Acocíl アコシール)
赤くて小さいのは、ザリガニの一種らしい。
味は塩っ辛くて、香ばしい。
一番初心者向けだろう。
2.イモムシ(Chinicuil チニクイル)
ここにもイモムシがいた。
これが一番美味しかった!
というか、絶品で超うまかった!!
フルーティな香りがして、香ばしくて、甘辛い。
これはやめられない止まらない味だ。
3.カメムシ(Jumiles フミレス)
どう見ても、カメムシだ。
初めて嗅ぐ臭いがして、味は苦い。
そして、食べるとゲップがカメムシ臭くなる。
今までの人生の中で最悪なゲップ臭だった。
4.アリ(Hormiga Chicatana オルミガ・チカタナ)
これはアリ。
苦くて、臭い。
美味しくなかった。
5.サシガメ(たぶん)(Reduviidae レドゥビイダエ)
たぶんサシガメの一種だと思うのだけど、きちんと同定できていない。
もし昆虫食に詳しい人がいたら、この虫の名前を教えて欲しい。
この虫が一番見た目がグロテスクで、口に入れるのに勇気が必要だった。
噛むと中身が出てきて、甘酸っぱかった。
6.サソリ(Alacran アラクラン)
サソリもいた。
味は酸っぱかった。
そして、ぼくは尻尾の針が上あごに刺さって痛かったので、皆さんがサソリを食べる時には針に気を付けてもらいたい。
7.クモ(Arañas アラーニャス)
巨大なクモがバタフライしているような姿になっていた。
お腹は甘くて、少し酸っぱかった。
足はパリパリして香ばしい。
クモは足を持って食べると、食べやすい。
ムシを小さい順に並べてみた
虫を小さい順に右から並べてみると、こんな感じ。
アリ、カメムシ、イモムシ、ザリガニ、サシガメ、サソリ、クモの順になる。
ムシを美味しい順に並べてみた
虫を美味しい順に右から並べてみると、こんな感じ。
イモムシ、クモ、ザリガニ、サソリ、アリ、サシガメ、カメムシとなった。
イモムシは本当に感動するほど美味しかった。
カメムシは臭い。
4.虫の盛り合わせの食べ方紹介
虫はシンプルにソテーされていたし、量が4人前はあったので、そのまま食べていると飽きてきた。
そこで付け合せのトルティーヤや野菜と一緒に食べることにした。
7種類の虫のトルティーヤ巻き
7種類の虫を全部トルティーヤに乗せて、巻いてみた。
超豪華な見た目になった。
しかし、トルティーヤからサソリの針が飛び出し、かぶりつくとこれがぼくの上顎に突き刺さって、とても痛かった。
虫のトマトとアボカド添え巻き
次にトマトとアボカドも添えてみた。
トマトとアボカドを添えるだけで、すごく食べやすくなった。
初心者にはこの食べ方がおすすめだ。
虫の盛り合わせは4人前もある
虫料理は美味しいのだけど、いかんせん4人前もあったのでバクバク食べても、まだ半分残っていた。
虫料理を食べに行く時には、友人も誘っていこう。
最終的にすべての虫とトマト、アボカド、辛いサルサを和えて、虫サラダを作って食べた。
なんとか、虫の盛り合わせを完食した。
7種類の虫料理でお腹が一杯になった。
5.7種の虫盛り合わせの値段と感想
7種類の虫の盛り合わせの値段は3,200円だった。
タコスが一食300円くらいだから、なんと10倍以上もする!!
メキシコシティでは、虫料理は高級料理だった。
デート前に虫料理は食べてはダメ
それと、デート前には虫料理を食べないようにしよう。
サソリの針が口内に刺さるし、歯の間に虫の足が挟まるし、ゲップがカメムシ臭くなるからだ。
ちなみにぼくはここで虫料理を食べた後に、コスプレイベントに行ったので、ガムをたくさん噛んでカメムシ臭を消していた。
長野県民がメキシコの路上でバッタを買ってみた
メキシコで8種類の虫料理を食べて、ぼくの虫を食べたい欲求はだいぶ満足していた。
しかし、メキシコシティの路上を歩いていると、ぼくの大好物が売っていたので思わず買ってしまった。
1.露天の豆屋でバッタを買う
メキシコシティの路上では、露天の豆屋でバッタが売っていた。
ぼくが子供の頃は、実家の宮﨑農園の棚田で母親と一緒にイナゴを捕まえて、家に持って帰って祖母に煮てもらっていた。
ぼくはイナゴ採りが懐かしくなって、思わずバッタを買ってしまった。
2.バッタを食べてみた
さっそく、買ったバッタを食べてみた。
なんだか、信州伊那谷のイナゴとは味が違う。
実家のイナゴは佃煮のように甘辛い味に煮込んでいたが、メキシコのバッタはかなり塩味が強いしとても辛い。
残念ながらメキシコのバッタは、ぼくが期待した味とは違った。
3.メキシコの新名物バッタコスを作ってみた
バッタが辛すぎたので、味を中和するためにタコスと一緒に食べてみることにした。
普通、タコスを食べる時には辛いサルサをかけるので、「バッタが辛いサルサ代りになるのでは?」と期待した。
まずは1匹だけ乗せてみたが、見た目がまるで異物混入事件みたいに見えるし、バッタの味を感じなかったので、もっとたくさん乗せてみた。
これぐらいたくさん乗せると、バッタの塩味とタコスのウマ辛さがいい感じになった。
バッタ+タコスで、「バッタコス」の完成である。
このバッタコスをメキシコの新名物として、売り出したらいかがだろうか?
まとめ
虫食文化が残る長野県民のぼくが、メキシコで9種類の虫料理を食べてみた。
メキシコの虫はそれぞれ味や香りが違い、美味しかった。
バッタは長野県のイナゴとは別物だったので、メキシコの新名物として「バッタコス」を考案してみた。
この記事を読んで虫が食べたくなった人は、メキシコか長野県へ行って虫料理に挑戦してみてほしい!