私は青年海外協力隊としてパナマに派遣された。
なので、協力隊について質問を受けることが多い。
しかし、協力隊は専門用語が多いので部外者には説明がなかなか難しい。
なので、青年海外協力隊がよく使う専門用語をまとめてみた。
協力隊に興味がある人は参考にしてほしい。
青年海外協力隊の専門用語
これから青年海外協力隊について説明するのだが、さきに専門用語の意味を理解してほしい。
JOCV
JOCV(ジェーオーシーブイ)は青年海外協力隊のこと。
JICA関係者は青年海外協力隊のことをJOCVと呼ぶことが多い。
SV
SV(エスブイ)とはシニア海外ボランティアのこと。
JOCVと区別するためにSVと呼ばれる。
OV(Old Volunteer)
JICAボランティア経験者のことを、OV(オーブイ)とよぶ。
これはOBOGのボランティア版。
隊次(たいじ)
青年海外協力隊は年間に4回、3ヶ月毎に派遣されている。
そして、呼び方は一次隊(いちじたい)から四次隊(よじたい)まである。
【青年海外協力隊の隊次】
一次隊:7月派遣
二次隊:10月派遣
三次隊:1月派遣
四次隊:4月派遣
例えばぼくは、「平成25年度一次隊」である。
このように「平成○○年度○次隊」というのが、青年海外協力隊の自己紹介方法だった。
ただし、最近は「平成○○年度」ではなく「20○○年」という言い方に変わったそうだ。
職種
青年海外協力隊の職種は120種類以上あり、9つの分野に分かれている。
こちらから青年海外協力隊の職種を検索できる。
公式サイトを見てみる→ 青年海外協力隊の職種検索
(1)計画・行政
コミュニティ開発、行政サービス、交通安全、防災・災害対策、コンピュータ技術
コミュニティ開発が、青年海外協力隊で一番人気の職種。
ぼくが受けたときまでは「村落開発」という名前だったが、2012年から名称が変更になった。
(2)公共・公益事業
上水道、下水道、廃棄物処理、土木、都市計画、造園、建築、測量、映像、通信インフラ、番組制作
(3)農林水産
食用作物・稲作栽培、花き栽培、野菜栽培、果樹栽培、バイオテクノロジー、きのこ栽培、土壌肥料、農業土木、農業機械、家畜飼育、獣医・衛生、畜産・乳製品加工、林業・森林保全、水産開発、養殖
ぼくは農林水産部門の「野菜栽培」という職種で採用された。
(4)鉱工業
化学・応用化学、溶接、工作機械、冷凍機器・空調、電気・電子機器、電気・電子設備、建設機械、船舶機関、自動車整備、木工、陶磁器、貴金属装身具製作
(5)エネルギー
再生可能・省エネルギー
(6)商業・観光
経営管理、品質管理・生産性向上、マーケティング、観光
(7)人的資源
青少年活動、環境教育、エアロビクス、陸上競技、体操競技、新体操、水泳、シンクロ、水球、卓球、バドミントン、バレーボール、バスケットボール、ソフトボール、野球、ハンドボール、サッカー、レスリング、フェンシング、柔道、空手道、相撲、ウエイトリフティング、PCインストラクター、音楽、美術、日本語教育、理科教育、数学教育、体育、小学校教育、幼児教育、機械工学、電子工学、科学、考古学、植物学、学芸員、デザイン、文化財保護、写真、美容師、編集、家政・生活改善、手工芸、料理、服飾、文化
青少年活動と環境教育は特別な資格が必要ないので、合格しやすい職種だ。
(8)保健・医療
看護師、保健師、助産師、臨床検査技師、診療放射線技師、薬剤師、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、医療機器、病院運営管理、栄養士、公衆衛生、感染症・エイズ対策、食品衛生、学校保健
青年海外協力隊には「医者」という職種はない。
(9)社会福祉
ソーシャルワーカー、障害児・者支援、福祉用具、高齢者介護
派遣国
青年海外協力隊が派遣された国の数は、88カ国。
これまでに派遣された地域の割合は、以下の通り。
アジア:29%
中東:7%
アフリカ:28%
北米・中南米:26%
大洋州:9%
欧州:1%
要請内容
青年海外協力隊の活動は、基本的には「要請内容」で指定されている。
しかし、実際に現場に行くと要請内容とは状況が全然違うことも多いので、臨機応変な対応が求められている。
要望調査票
要請内容は、要望調査票にかかれている。
要望調査票とは現地のジャイカ事務所が作成した書類で、任地や受け入れ先の情報がまとめられた書類。
青年海外協力隊を受験するときには、この書類を見てどこを希望するか決める。
健康診断
青年海外協力隊になるためには、健康な肉体でないといけない。
なぜかというと、開発途上国の環境や医療レベルは悪いので、怪我や病気のリスクが高いからだ。
重大な持病がある人は、健康診断で落とされることが多い。
技術補完研修
青年海外協力隊に合格しても技術が不足していると評価された人は、技術補完研修という研修を受けなければいけない。
コミュニティ開発や環境教育、看護師、農業系など多くの職種で、技術補完研修が実施されている。
ちなみにぼくは野菜栽培で採用されたが、技術補完研修は免除だった。
派遣前訓練
青年海外協力隊に合格したら、およそ70日間の派遣前訓練を受けなければいけない。
ちなみに読み方は、派遣前(ぜん)訓練。
シニア海外ボランティアも半分の30日ほどの派遣前訓練を受ける。
場所は、福島県二本松訓練所か長野県駒ヶ根訓練所。
訓練所は派遣される国の語学ごとに分かれている。
例えば、スペイン語、フランス語、英語(一部の国)、ウズベク語、ネパール語などは駒ヶ根訓練所だ。
参考:JICAボランティア派遣前訓練の服装&持ち物&日程 in 駒ヶ根訓練所【青年海外協力隊&シニア海外ボランティア向け】
JOCA(ジョカ)
ジャイカの青年海外協力隊の派遣前訓練は、協力隊OVで構成されたJOCAが実施している。
訓練所にはJOCAのスタッフと、JICAのスタッフが分かれているので、間違えないように注意しよう。
ぼくの協力隊同期でも、帰国後にJOCAに就職した人がいる。
駒ヶ根マジック
派遣前訓練では、候補生同士が恋愛関係に発展することが多い。
駒ヶ根訓練所でカップルができることを、駒ヶ根マジックとよぶ。
参考:青年海外協力隊の恋愛ぶっちゃけます!JICA訓練所で恋人カップルが生まれる駒ヶ根マジックがおきる5つの理由
二本松イリュージョン
二本松訓練所で候補生同士のカップルが成立することは、二本松イリュージョンとよばれる。
候補生同士のカップルは派遣後に別れることが多いが、中には協力隊同士で結婚する人もいる。
任期
青年海外協力隊の任期は、基本的には2年間。
ジャイカ事務所と配属先とボランティア本人が希望すれば、最大で一年間の任期延長が可能。
ただし、任期延長に対する考え方は派遣国ごとに大きく異なる。
またボランティアが現職参加の場合には、任期は「1年9ヶ月間(訓練と合わせて2年間)」または「派遣期間だけで2年間」を選択する。
現職参加
現職参加とは、一般企業や公的機関に籍を残したまま、青年海外協力隊に参加する制度のこと。
仕事を辞めずに青年海外協力隊に参加できる制度だ。
ただし、所属先が承諾しないといけないため、実際には中小企業や学校によっては難しい。
例えば、学校の校長先生が反対すれば、学校の先生でも辞めるか休職しないといけなくなる。
人件費補てん
青年海外協力隊には、JICAが現職参加するボランティアの人件費を補填する制度がある。
要するに、現職参加のボランティアは、給料の8割程度を24ヶ月間支給されるのだ。
例えば、月給40万円だった場合には、毎月32万円が24ヶ月間支給されるので、支給額は768万円になる(プラス2年間のボーナスの8割分)。
補てん対象の概要は、月額給与(俸給、地域手当、扶養手当、住居手当に相当するものの合計×80%(上限)。
それ以外の手当等は補てん対象外)及び賞与の80%、社会保険料事業主負担相当額(一律15.5%)、退職給与引当金相当額(一律11%)です。
参考:人件費補てんのご案内
一般的に青年海外協力隊の給料はおよそ200万円だが、現職参加の場合にはボランティア参加前の給料によって異なるのだ。
なので、青年海外協力隊から帰国後に700万円くらいの貯金ができるボランティアもいる。
このお金で車を買ったり、家を買うための頭金にする人もいるそうだ。
自営業者補てん金
自営業者にも、補てん金制度がある。
補てん金額の上限は、月額55万円(補てん率80%)。
任短(任期短縮)
任短とは、任期短縮という意味。
青年海外協力隊になって驚くのが、任期短縮する隊員の多さ。
ぼくの同期でも10名ほどが任期短縮した。
理由は家庭の事情や健康状態の悪化、治安の悪化、やる気がなくなった、問題を起こしたなど。
任国外(任国外旅行)
青年海外協力隊は、配属先の休暇とは別に「年間20日間」の休暇を取ることができる。
その休暇を利用して、多くの隊員が任国外旅行をする。
任国外旅行とは、任国以外の国を旅行すること。
青年海外協力隊は基本的には任国の外に出ることは禁止されている。
なので、任国外旅行に行く場合には事前に計画書を作成してJICAの許可を取らないといけない。
そして、国ごとに任国外旅行へ行ける国が決まっている。
それはJICAのホームページやパンフレットで公開されているが、実はそれは古いデータで嘘だ。
例えば、ぼくが派遣されたパナマの隊員は、中米のいろんな国へ行けることになっていた。
しかし、実際に許可が下りるのはメキシコとコスタリカだけだった。
一時帰国
青年海外協力隊は「2年間で一度だけ」日本へ一時帰国できる。
任国外旅行の日数を使うので、最大で20日間。
ぼくは一年目の最後に、日本へ一時帰国した。
ただし、病気の療養などで一時帰国する場合には、これは適用されない。
参考:青年海外協力隊に日本への一時帰国(2年間で1回最大20日間)を勧める3つの理由メリット・デメリット
公用旅券・公用パスポート
青年海外協力隊は外務省から「公用旅券」を発行してもらい、それを所持する。
公用旅券とは外交官など政府関係者が所持するパスポートで、緑色をしている。
公用旅券は汚したりなくしたり絶対にするなときつくいわれ、もし無くしたりすると外務省へ謝罪に行くことになるそうだ。
なので、JICAからは「公用旅券は命の次に大切」といわれる。
そして、代わりに一般旅券(普通のパスポート)はJICAに提出して、任期終了まで保管される。
中には、パスポートを持っていないと嘘をついて一般旅券を持って任国へ行き、勝手に海外を旅行する人もいるらしい。
※もちろんダメです
配属先
青年海外協力隊が働く機関を、配属先と呼ぶ。
配属先は任国の省庁やNGO、学校などが多い。
ぼくの場合には、パナマ国農牧省べラグアス県カニャーサス郡支所が配属先だった。
カウンターパート
仕事のパートナーとなり、一緒に仕事をする相手をカウンターパートという。
基本的には一人のボランティアに、一人の現地人がつく。
カウンターパートに技術を教えて、ボランティアが帰国したあともカウンターパートが継続的に指導する形にするのが理想。
しかし、実際にはカウンターパートが途中でコロコロと変わったり、カウンターパートがボランティア活動にまったく協力してくれないことが多い。
参考:JICAが悪い?カウンターパートが働かない?否!青年海外協力隊員の活動が上手くいかない原因は、100%ボランティアに責任がある。
グループ派遣
通常、青年海外協力隊は一人ずつバラバラに派遣されるが、「グループ派遣」といって複数人のグループで派遣させる場合もある。
グループ派遣のメリットは異なる職種のボランティアが助け合って相乗効果を生み出すことだが、逆に人間関係のトラブルを抱えることも多い。
ぼくもグループ派遣だったし、周りにもグループ派遣の隊員が多かったが、どこも問題を抱えていた。
ボランティア調整員と企画調整員
JICAには調整員という契約社員が居る。
ボランティア調整員はJICAボランティアの対応を行い、企画調整員がJICAプロジェクトの対応を行う。
隊員ドミトリー(隊員連絡所)
人国には「隊員ドミトリー」や「隊員連絡所」とよばれる施設がある。
一軒家やアポートの一室で、協力隊員が集まる機会で宿泊所として使われる。
ぼくが派遣されたときにはパナマには連絡所がなかったので、ぼくは連絡所を使った経験がない。
噂によると、隊員ドミトリーでずっと遊んでいるだけの隊員がいたり(通称、ドミ隊員)、恋愛が起こるらしい。
青年海外協力隊の専門用語まとめ
青年海外協力隊に関係する専門用語をまとめた。
協力隊に興味がある人は参考にしてもらいたい。