17回目の滞在調査
先々週は月曜日から木曜日まで、電気も水道もない山奥の集落に滞在していた。
山奥の集落に滞在するのは、今回で17回目。
今回の滞在では、開墾、焼畑、パン作り、シラミ・歯ブラシ調査、折り紙教室を行った。
ぼくは青年海外協力隊・野菜栽培だが、野菜栽培だけにこだわらず、村人の役に立てることならなんでも行おうと思っているので、多種多様な活動を行っている。
今回は17回目の滞在のまとめをしようと思う。
多種多様な活動
農村滞在で行った活動を、ひとつずつ説明しよう。
1.学校菜園の開墾
まずは月曜日の朝に山奥の集落に向かい、新しい学校菜園の開墾作業を行った。
この集落では学校の横の斜面を削って、新しい学校菜園を作っている。
学校菜園用に有機肥料を仕込んだ。
この集落の村人は今までに何回も作っているので、慣れた手つきでぼくも少しアドバイスをした程度で村人主導で作れた。
苗床にはトマト、長ネギ、ピーマン、セロリの苗が順調に生育していたので、定植することにした。
パナマでは定植直後の強い日差しで苗が枯れてしまうので、バナナの幹を切って日傘を作り、苗を守らなければいけない。
これが完成したトマト苗の日傘。
この集落ではこの技術がすでに定着した。
2.焼畑農業の手伝い
別の日に焼畑農業の除草作業を手伝った。
ぼくはこれまでに昨年の収穫、木の伐採、種まきまでを手伝ったので、今回の草刈り作業を手伝うことで焼畑農業のすべての作業を経験したことになる。
陸稲、トウモロコシ、長芋、キマメが混植栽培されている。
焼畑で栽培されている作物の生育には、極端なムラがあった。
天水に頼った作物栽培ではこれが当たり前なのだろう。
今年は雨季になってからも雨が非常に少ない異常気象で、この集落では2週間以上雨が降っておらず、生育に悪影響を与えていた。
「焼畑農業は雑草を抑制する効果がある」と言われているが、その説を疑いたくなるほど雑草が生えていた。
村人は腰をかがめてマチェテと呼ばれる山刀を使い、雑草を切り倒していく。
これが雑草を除去したあとの畑。
村人たちはサトウキビの搾り汁を発酵させて作ったお酒を飲みながら作業していたが、ぼくは村人の誘いを断り、水を飲みながら作業した。
以前、そのお酒を飲んだあとに、数日間嘔吐と下痢を繰り替えした悪夢が頭をよぎったからだ。
一日中働いて炎天下の中働いて超疲れたし、山刀を使ったせいで手にマメが出来て皮が剥けたけど、伝統的な農業を体験するのはとても楽しい。
これからも伝統的な農業を学びたい。
3.パン作りの見学
栄養改善プロジェクトでは、コミュニティ開発隊員や栄養士隊員がパンの作り方を教えている。
この集落の女性グループもパン作りを習ったのだが、すっかりパン作りにはまり、なんとついにはパン屋さんを開業した!
ちょうどパンを大量に作り、周りの集落に売ると言うので、パン作りを見学させてもらった。
まずは小麦粉をこねる。
カマドで薪を燃やし、カマドを熱する。
なんと、このカマドも村人たちの手作り!
パン生地を形成して、カマドに入れる。
これが、焼きたてのパン!
美味しそう!
彼女たちは、このパンを近くの家に1個5円で販売している。
彼女たちは自分たち自身の考えと行動力で、ビジネスを始めた。
ビジネスを始めさせるプロジェクトによってではない。
パン屋として起業した村のお母さんたちを見ていて、ぼくは「自立支援」という言葉の意味を、もう一度考えさせられた。
国際協力の意義を問う。「自立支援」とは自立したい人のためではなく、支援したい人のための言葉では? – JIBURi.com
https://jiburi.com/jiritsushien/
4.シラミ・歯ブラシ調査
「ダニなどの寄生虫と歯磨きをしないことが、問題ではないかしら?」というラテンアメリカで国際協力をされている専門家の先生からのご意見に従い、山奥の集落でシラミと歯ブラシを持っているかの調査を行った。
まずはダニやシラミの調査。
子供を見つけたら、「頭とか体とか、かゆくない?」と聞き、手や頭を観察させてもらった。
シラミはいね~か~!?
疥癬(かいせん)という病気を引き起こす、人間の手に住むヒゼンダニというダニも探した。
すると、本当に疥癬の被害を受けている子供がいた!
この指の間の点々とした傷は、ダニが皮膚を食い破った跡で、皮膚の中にダニが住んでいるらしい。
この写真をメールで、寄生虫の研究をしているカナダ人の医学部博士課程履修者に送ったところ、「疥癬である」という診断を得た。
この寄生虫の問題については、今後パナマ人医師と看護師と協力して、予防と治療をしていく予定である。
歯ブラシについても、子供と親を対象に聞き取り調査を行った。
このぐらいの年齢の子供は、歯ブラシを持っていないので虫歯だらけだ。
両親も歯ブラシを持っていなかったり、持っていても歯磨きをしないので、ほとんど歯がない状態の人も多い。
歯ブラシの調査結果は他の三つの集落でも調査を行い、調査結果を報告書にまとめ、先週行われた月に一度の定例会議で看護師やプロジェクトメンバーに報告した。
報告書では、看護師たちに「歯磨きの重要性を話す講演を行ってほしい」と記したのだが、彼らの反応は良好で、8月第三週前後ににすべての集落で開催してくれることになった。
なぜ第三週前後なのか?
それは、歯ブラシの購入を村人に勧めるある作戦のためだ。
8月第三週には「二ヶ月に一度の生活保護の支給日」があり、村人は1万円をもらえる。
生活保護の支給日がある週だけは、普段はお金がない村人も、そのお金で70円する缶ビールを何本も買って飲んでいる。
そこで、そのタイミングで看護師に講演をしてもらい、村人に「70円の缶ビール一本を我慢する代わりに、50円の歯ブラシ一本を子供のために買ってほしい!」とお願いしようと思っている。
そもそも、本来その生活保護は子供のために使わなければいけないお金なので、親たちも言うことを聞いてくれるはずだ。
名付けて、ビールの代わりに歯ブラシ作戦!
5.折り紙教室
ぼくは折り紙を使って、この村の子供たちの間でヒーローになった。
たった一枚の紙で発展途上国に暮らす子供たちのヒーローになる方法 – JIBURi.com
https://jiburi.com/hero/
青年海外協力隊におすすめ!折り紙一枚だけで途上国の子供と仲良くなる方法2 – JIBURi.com
https://jiburi.com/kaeru-origami/
ただし、いい加減折り紙を作り続けるのが、めんどくさくなったので、子供たちに作り方を教えることにした。
中学生はなかなか覚えるのが早く、パタパタ折り鶴、ピョンピョンカエル、手裏剣の作り方をマスターした子もいた。
小学生はなかなか覚えてくれないので、マンツーマンの個別指導をした。
それでも、まだまだマスターするには時間がかかりそうだ。
17回目の滞在調査のまとめ
農業隊員っぽい活動として、学校菜園の開墾作業と伝統的な農業である焼畑農業の手伝いをした。
農業とは関係ないが、パン作りや小規模ビジネスの支援、歯ブラシや寄生虫などの衛生調査指導もした。
子供たちとは、折り紙教室をして遊んでいる。
これからも農業という専門性を生かしながらも、視野を広げて村人が困っていることの解決や、生活改善のお手伝いをしたいと思う。
滅多に外国人と接する機会がない子供とも、遊んであげたい。