青年海外協力隊の任期中にパナマで死ぬとしたら、交通事故だろう。
青年海外協力隊として中米パナマ共和国に派遣されてから、「死ぬとしたら交通事故で死ぬだろう」と考えている。
JICAボランティアは毎年数名が命を落としているが、その原因は事故・病気・殺人・自殺などさまざまだ。
最近、奇跡体験!アンビリバボーに取り上げられた「ガーナに派遣されていた武辺寛則さん」は、交通事故で亡くなっている。
参考:【青年海外協力隊の武辺寛則】ガーナのアチュワ村で村長になりパイナップルの特産品化に成功するが、事故でこの世を去ったJICAボランティア
特に中南米は治安が悪いので、強盗・誘拐・殺人に注意するようにJICAから注意喚起されている。
しかし、治安が悪い中南米地域に派遣された同期隊員の数名が、命に別状はなかったが強盗に襲われてしまった。
そしてパナマの首都パナマシティは、殺人事件の発生率が世界で5番目に多いほど治安が悪い。
幸運にもぼくはパナマのど田舎の村に住んでいるので、凶悪犯罪に遭遇する可能性は低いが、代わりに交通事故に遭う危険性を感じている。
昨年には、ぼくがいつも使っている村と町を結ぶバスが峠道で交通事故を起こし、数名が死亡し10名以上が大怪我を負った。
そして、活動中にも交通事故に遭う危険と隣り合わせでいる。
そこで今回は、パナマのど田舎の村の車情報を紹介しよう。
配属先の農牧省の車を紹介
まずは、配属先の農牧省の車を紹介しよう。
1.車の整備不良で、タイヤやボルトがヤバい
農牧省の車は毎日、農牧省内の整備部で整備を受けているはずなのに、整備不良があり過ぎて乗るのが超怖い。
パナマの公共機関の車は、すべてこのタイプのトヨタ車だ。
この車は、台湾の国際協力組織からの援助で購入された車。
この車で山奥の集落へ巡回指導などに行く。
参考:電気がない家に泊まろうpart25!グループ農園の支援&爪切り衛生指導&子供と川遊び
これは保健省の栄養改善プロジェクトで使っていた車。
JICAの資金援助で購入されたが、「目的」とは違う使われ方をしていた。
おかげで、国際協力の援助金の無駄遣いの実態を知ることができた。
参考:同情するなら金をくれ!青年海外協力隊が使えるJICA業務調整費を要求されて
農牧省の車は、タイヤの状態がヤバい。
ぼくは車に詳しくないのでよくわからないが、タイヤのゴムがすりへり過ぎて中から別の素材が出てきている。
青年海外協力隊は任国での車の運転を禁止されているので、車を運転したことは一度もなく、すべて同僚に運転を任せている。
タイヤの溝もツルツルだし、パンクも頻繁に発生する。
そしてパンクした場合には新しいタイヤを買うのだが、新しいタイヤといっても新品ではなくまた同じくらい古い中古タイヤを買うので、常にボロボロのタイヤを使っている。
「これって、バースト寸前なんじゃね?」といつも思っているが、この車に乗らない場合には何も活動ができなくなるので、決死の覚悟で乗っている。
ただの言い回しではなく、ガチな決死の覚悟だ。
しかもこのタイヤを固定しているボルトは、必ず2~3本足りない。
車に全く興味がないぼくでも、タイヤを固定するボルトはすべて使わないといけないと知っている。
しかし、ボルトが2~3本固定されていないし、ボルト自体が根元から折れていることもある。
「これって、タイヤが外れて、吹っ飛ぶんじゃね?」といつも思っているが、農牧省の車がいつもこの状態なので、他の貧乏なパナマ人の車もボルトがないのだろう。
たまに、タイヤを固定するボルトではなくて、四駆のための部分のボルトがない場合もある。
山奥の集落に行く道は、舗装されていない凸凹だらけなので四駆機能が必須なのだが、四駆機能が壊れている四駆車が多い。
常に車の故障とタイヤのパンクの可能性を抱えているので、山奥の集落への巡回には2名以上の職員で行き、必ずスペアタイヤを積んでいく。
事故さえ起きなければ綺麗な景色が見れるので、とても気持ちが良い活動だ。
山奥の集落への道は凸凹が多すぎて車が頻繁に故障するので、農牧省の事務所には使えない車が放置されている。
新しい車を買う資金も修理代もないので、放置されたままだ。
2.山奥の集落へ行くまでの道が悪すぎる
なぜこんなにも車が故障するかというと、活動している山奥の集落への道が悪すぎるのだ。
(1)ぼくが撮影した悪路を走る車の動画
まずは、こちらの動画を見て頂きたい。
山奥の集落へ行くためには、このような状態の道を1時間から3時間も通らなければならない。
車に乗っていると両手で体を支えていても、頭を天井にぶつけて怪我をするほどだ。
同僚の一人はこの振動で頸椎を痛めて、車に乗れなくなってしまった。
マジで決死の覚悟なのだ!
(2)悪路の状況
ここからは悪路の状況を写真で紹介しよう。
雨季には道が水没して、タイヤが滑りやすくなる。
(3)車で川を渡る
しかも、川に橋が通っていないので、車で川を渡る。
川を渡るために排気ガスを排出するマフラーは、車の上部に付いている。
天然の川なので車が渡るための整備はなにもされていないので、川底にある巨大な石の上を乗りあげながら無理やり進む。
ゲリラ豪雨が発生して川の水かさが増しても、鉄砲水が来ないことを祈りながら、川を突っ切る。
車がないときには、川は裸足になって歩いて渡る。
(4)土砂崩れが起きる
山奥の集落へ行く道は舗装されていないので、雨季になると土砂崩れが発生する。
このような土の壁がゲリラ豪雨によって崩壊する。
土砂崩れが発生すると集落への道が寸断されて行けなくなる。
その場合には、政治家が所有している作業車が、政治活動の一環として道を直してくれる。
「もし、この道を車で通っている瞬間に土砂崩れが発生したら……」と考えると怖くなる。
(5)溝にはまって動けなくなる
しばしば発生する問題が、車が道の凹凸の溝にはまって動けなくなることだ。
雨が降ったあとの泥の坂道は、四駆車でも滑ってしまってどうにも動かなくなる。
これは2台同時に溝にはまって動けなくなった時の写真。
溝にはまった場合には、他の車に引っ張ってもらうか、タイヤにチェーンをはめてタイヤの下に石を敷いたりなんとか工夫して脱出する。
パナマは雪国ではないが、山奥の集落ではチェーンが必須だ。
(6)車の荷台の外に捕まる
普段ぼくは無電化集落に行くために、このようなピックアップトラックの荷台に1時間ほど乗って近くの集落まで行き、そこから2時間ほど山道を歩いて行っている。
料金は2ドル(240円)で、ぎゅうぎゅう詰めになるほど人が乗るし、道はくねくね&凸凹の山道なので乗り心地は最悪で、毎回車酔いを起こす。
しかし、荷台のベンチに座ればよいのだがたまに満員で座れず、荷台の外に捕まって行く場合があるのだが、これは最悪だ。
チェーンをつけたタイヤの汚れ具合を見れば想像してもらえると思うが、この車はUSJの絶叫アトラクション以上に揺れるので、体を両手と足で支えるのはとてもハードだ。
「もし手や足を滑らせたら、大怪我するな……」と冷や汗をかきながら、1時間ほど捕まっている。
しかし、死にたくないので必死にしがみついている。
マジで必死にしがみついている!
(7)道が崖っぷちを走っている
山奥の集落へ行くための道は、崖っぷちを通っていることが多い。
そのため、少しでもハンドル操作を誤ると、崖下へ真っ逆さまだ。
昼間はまだいいのだが、夜中に山奥の集落から車で帰って来た時には、真っ暗なので崖に落ちそうで超怖かった。
崖っぷちの道を1時間以上走ると、無電化集落へ到着する。
ちなみにぼくが住むカニャーサス村には、300個の集落がありほとんどが無電化状態だ。
3.運転が乱暴すぎる
パナマで交通情報で死ぬかもしれないと思う理由の一つが、パナマ人の運転が荒いからだ。
スピードも出すし、一旦停止も無視するし、飲酒運転が当たり前だ。
ある日同僚と一緒に巡回に行くと、いきなり大きな衝撃を受けて窓に打ち付けられた。
気がつくと、車が側溝に落ちていた。
原因は同僚のよそ見だった。
パナマ人は運転中でも、助手席の人と目を合わせて会話する。
目を合わせて会話することは良いことだが、運転中にそれをやるとこのような事故を起こすことになる。
語学研修のためにペノノメという大き目の町に住んでいた時には、毎日必ず交通事故を目撃していた。
それほどパナマの交通事故は多い。
結局、近所の車に引っ張ってもらって側溝から脱出できた。
パナマの公共機関の車には、「危険な運転や私的な利用を密告する連絡先が書かれたシール」が貼ってある。
逆にいうと、それほど危険な運転と私的な利用をする人が多いのだ。
ぼくの配属先の車も、勤務時間でも同僚によって私的に使われている。
山奥の集落の村人にとっては、町から来る車が便利
山奥の集落に暮らす村人は、町からたまに来る公共機関の車を使っている。
農牧省の巡回指導で村を訪れると呼んでもいないのに、村人が荷物を持って集まって来る。
彼らは車の荷台に乗って、村の中心地まで行きたいのだ。
歩けば4時間以上かかるし、ピックアップトラックは有料なので、このような公共機関の車が来た時に荷台に乗せてもらって、村の中心地まで移動することが多い。
このように、荷台が満員になることもある。
お年寄りや赤ちゃんは助手席に乗せる文化があるので、助手席に座っていたぼくも荷台に乗ることが多い。
荷台は振動がモロに受けるので乗り心地は最悪だが、景色が楽しめるので好きだ。
子供の頃に実家の軽トラの荷台に乗っていたことを思い出していい気分になれるが、しっかりと捕まっていないと振り落とされるので気は抜けない。
ぼくが働いている農牧省の事務所に村人が来た時にも、車の荷台に乗せて連れて帰ることがある。
国際援助のバナナの種やスコップやつるはしなどの農具を持って帰るために、山奥の集落まで車で送った。
農牧省の主な仕事は、このように「モノを無料であげること」である。
古すぎる同僚の自家用車
ここまでは公共機関の車を紹介したので、ここからはぼくの同僚(新所長)の自家用車を紹介しよう。
名前は知らないが、トヨタ社製の車に乗っている。
車内はボロボロ。
ステレオもクーラーも故障している。
走行距離は、なんと57万キロ!
メーター類はすべて動かない。
フロントガラスはフルスモッグ。
パナマではこれでも車検を通るので、フルスモッグの車が多い。
シートベルトのように見えたモノは、ただのヒモだった。
留め具もないし、そもそも材質がひ弱すぎる。
パナマには、シートベルトが不装備車が走っている。
パナマにも日本の車検のようなシステムがあるが、お金さえ払えば合格できるそうだ。
そのため町を走っている車のほとんどは、整備不良の車である。
物を大切に使う精神は日本人も見習った方が良いが、車の整備をシステムはもっと厳しくした方が良いと思う。
※これはど田舎の村の話
ここまでの話は、ど田舎の村の車事情なので、首都パナマシティは全く状況が違う。
首都には綺麗に整備された1,000万円以上する高級車がバンバン走っている。
まとめ
パナマのど田舎の車事情をまとめた。
あと一ヶ月と少しで日本へ帰国するので、それまで交通事故で死なないように気を付けたい。
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