真夏の家庭菜園で野菜の苗が枯れるのを防ぐ日除けの作り方
家庭菜園で野菜を育てている人は、日差しが強い真夏に野菜の苗を植えて、せっかく植えた苗を枯らしてしまった経験はないだろうか?
日差しが強すぎる真夏に野菜の苗を植える場合には、日除けを作ることで苗を枯らすことなく育てることができる。
この技術は、熱帯地域である中米パナマ共和国で青年海外協力隊・野菜栽培隊員として活動しているときに、現地の農業技師から教えてもらったテクニックだ。
東南アジア、アフリカ、中南米、大洋州などの熱帯地域で活動する青年海外協力隊の農業系職種隊員は、この農業技術を覚えておくと現地で役に立つと思う。
そこで今回は、野菜の苗が枯れるのを防ぐ日除けの作り方を紹介しよう。
家庭菜園の畝に野菜の苗を植えよう
まずは家庭菜園の畝に野菜の苗を植えよう。
1.植穴の準備
野菜を育てるための畝にはあらかじめ、有機肥料や稲わらなどの有機物を鋤き込んで、畝を作っておこう。
参考:稲わらマルチ栽培の家庭菜園での使い方&ビニールマルチをきれいに張る方法&マルチングの種類と効果
次に、野菜の苗を植える間隔(野菜ごとに異なるが10~50cm)に植穴を掘る。
あらかじめ有機肥料も作っておこう。
参考:高倉式コンポスト(JICA推奨の微生物発酵液型)を、容器が不要で簡単な作り方へ改良したコンポスト有機堆肥の作成方法
複合化学肥料でも構わない。
基肥として植穴へ、有機肥料か化学肥料を施用しよう。
肥料を土と混ぜて、野菜の根へ肥料が直接触れないようにする。
2.野菜の苗を植える
畝の準備ができたら野菜の苗を植えよう。
ホームセンターやJAで市販の苗を買って来てもいいし、自分で育てても良い。
このように根鉢(根で鉢の形に回る状態)が形成されるまで育てよう。
苗を植穴に入れて、株元まで土を寄せて、手で軽く押さえつけて固定する。
植え終わったら、すぐにたっぷりと水を与えよう。
今回は大玉トマトを使ったので、これでトマトの定植が完了した。
土の水分保持と地温抑制、病気予防のためにマルチを敷く
苗の定植が終わったら、土の水分保持と地温抑制、 病気予防のためにマルチを敷こう。
参考:稲わらマルチ栽培の家庭菜園での使い方&ビニールマルチをきれいに張る方法&マルチングの種類と効果
園芸店に売っているビニールマルチでもよいが、今回は稲わらマルチを使った。
マルチングには、土の水分保持、地温抑制・上昇効果、土壌性病害の予防効果、雑草の発生抑制効果などがある。
稲わらマルチのような植物性マルチは、時間と共に腐食して菌類の繁殖場や小型虫類のエサになるので、ぜひ使おう。
【日本向け】家庭菜園では、樹木の葉で日除けを作ろう
ここからは日本の家庭菜園向けの、日除けの作り方を紹介しよう。
日本でも日差しが強い日に野菜の苗を植えると、植物の体温が上昇し水分が失われて、萎れてしまう。
定植直後には根から水分の吸収が正常に行われないので、このままにしておくと枯れてしまう。
そこで、樹木の葉で日除けを作って、強い日差しから植物体を守ろう。
「光を遮ったら光合成ができなくて、余計枯れてしまうのでは?」と思うかもしれないが、 植物は2~3日光合成ができないくらいでは枯れないので安心して欲しい。
光合成ができないことよりも、水分を失うことの方が100倍負担になる。
1.樹木の葉で日除けを作る
野菜の苗を植える前に、樹木の大きな葉を採取しておこう。
そして、苗を植えたらすぐに1株ずつに、樹木の大きな葉を苗の隣に斜めに挿そう。
これで苗の上に日陰ができて、植物体の温度が上がらないので枯れなくなる。
パナマは一年中日本の真夏と同じ気候なので、トマトやピーマン、セロリなどの野菜の苗を植える時には、毎回日除けを作っている。
木の葉ならばどこでもいつでも手に入るので、誰にでも簡単に実行できる。
木の葉は3日ほどで枯れてしまうが、その頃には苗の根が機能を取り戻し、細根から水を吸収するようになるので、ちょうどよい。
使い終わった木の葉は有機肥料の材料に使うか、捨てよう。
風が強くて葉が飛ばされてしまう場合には、葉の反対側を土に埋めて屋根にしよう。
この方が確実に安定した日陰を作り出せる。
2.プランター栽培や袋栽培の場合
家庭菜園の場合には畝ではなくて、プランターや袋で栽培している場合もあるだろう。
参考:メリット&失敗しないコツ!家庭菜園の袋栽培で誰でも簡単に新鮮で美味しい野菜を収穫する方法
その場合にも日陰の作り方は同じなので、まずは普段通りに野菜の苗を栽培容器に植えよう。
今回はカリフラワーの苗を使って、袋栽培を行った。
庭や公園で、木の葉を採取しておこう。
苗を植えた後にたっぷりと水を与えてから、木の葉を被せておこう。
風で飛ばされたり位置がずれないように、土に葉を刺して固定するのがおすすめだ。
畝と同じように3日後に日除けを外せば、あとは元気に生育する。
【協力隊向け】熱帯地域では、バナナの幹で日除けを作ろう
ここからは青年海外協力隊の農業系隊員向けの情報だが、せっかくなのでぜひ読んで欲しい。
1.日除けにはバナナの幹を使おう
熱帯地域ではまず間違いなくバナナが栽培されていると思うので、日除けにはバナナの幹を使おう。
バナナは放任栽培でも良く育ち、一度果実を収穫したあとの木にはもう実がならないので、幹が不要になるからだ。
バナナの幹は有機肥料の材料にも使えるし、とても便利だ。
2.バナナの幹を剥く
切り倒したバナナの幹を120cmほどの長さに切って、皮を剥こう。
これがバナナの幹。
実はバナナは木ではなく、世界最大の植物である。
タマネギのように皮が重なっているので、すき間に指を差し込めば皮が剥ける。
最初は難しいが、慣れるとこんな感じに剥ける。
3.60cmくらいに切る
次に、バナナの幹の皮を60cmくらいの長さに切ろう。
このときに両端を鋭角に尖らせておくことがポイントだ。
この作業をすることで、あとでとても作業が捗る。
これを苗と同じ枚数だけ、苗を植える前に用意しておこう。
4.半分に折って、苗の上に建たせる
苗を植えたら、すぐにバナナの幹を半分に折って、苗の上に建てよう。
岐阜県白川郷の合掌造りの民家のようなイメージだ。
このときにバナナの幹が安定するように、鋭利な両端を土に突き刺して、土を寄せて固定しよう。
このために最初に尖らせておいたのだ。
5.完成した日除け
この日除けはトマト、ピーマン、ナス、タマネギ、セロリなど、ほとんどの野菜に使えるテクニックで、苗の生存率を飛躍的に高めてくれる。
ピーマンなどの背が高い苗には、長めにバナナの幹を切って対応しよう。
1個1個作るのが面倒くさいが効果は劇的なので、パナマの山奥の集落の村人もマスターして、自分たちだけでも実践している。
途上国の農村にも定着した農業技術なのだ。
植物体が温度を感知するのは、成長点と呼ばれる新芽の部分なので、このように葉が出ていても問題ない。
6.3日後には撤去する
バナナの幹の日除けも3日後には、すべて取り外そう。
バナナの幹は耐久性が高いので、一週間ぐらいは連続して使用できるので、少しずつ定植するのがおすすめだ。
苗が大苗でバナナの幹が短い場合には、苗を無理やり三角形の中に収めることになる。
すると、3日後に日除けを外した時に、苗がクルンと下を向いていることがあるが、全然問題ない。
次の日にはシャキッと背筋を伸ばして、天をむいている。
稲わらマルチと日除けの注意点
稲わらマルチと日除けを併用することで、苗の活着率(生存率)を高めることができる。
しかし、2つの注意点がある。
1.毎日水やりが必要
日除けがあるといっても、苗を植えてから最低でも3日間は毎朝水やりをたっぷりと行おう。
野菜の苗は畑に植えた直後が一番枯れやすいデリケートな時期なので、苗の状態を観察をしながら水やりを行うべきだ。
2.動物の悪戯に注意
稲わらマルチやバナナの幹があると、野生動物や家畜、犬が興味を持ち、悪戯をすることがある。
ぼくは野良牛に畑を荒らされたり、ニワトリに苗を食べられたり、犬に荒らされたことがある。
動物が畑に侵入できないように柵を設置するか、動物を繋いでおくなどの対策を取ろう。
家庭菜園で強い日差しから苗を守る方法まとめ
家庭菜園でも熱帯地域でも使える「野菜の苗の生存率を高める日除けの作り方」を紹介した。
日本の家庭菜園愛好家にも、青年海外協力隊の農業系隊員にもぜひ実践してもらいたい!
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