思わず「まいう~」が飛び出す超絶品キュウリ料理
「まいう~!」
思わず石塚語が飛び出すほど、うまいキュウリ料理を食べた。
石塚さんにあやかって、この料理は「まいう~キュウリ」と名付けよう。
まいう~キュウリのレシピはいたってシンプルだ。
絶品まいう~キュウリの作り方
1.キュウリの皮を剥く
2.輪切りにする
3.塩を振る
4.レモンを絞る
5.完成!
まさに、男の料理。
まいう~キュウリは、配属先の同僚が昼食の時に作ってくれた。
材料のキュウリとレモンは、配属先の事務所の目の前にあるMIDAの畑で収穫されたものだ。
採れたて3分で、まいう~キュウリが完成する。
「毎日食べたい!」そう思うほど、美味しかった。
簡単なキュウリ料理が熱帯で美味しく感じる訳
その理由は、パナマの気候が関係していると思う。
パナマの午前中は太陽がカンカン照りになり、超暑く汗をかく。
そのため、キュウリのみずみずしさと、レモンの爽やかな酸味と、塩気が三位一体となり、最高に美味しく感じるのだろう。
パナマに来てからレストランや家で何回も「キュウリのサラダ」を食べたが、これほど美味しいとは感じなかった。
日本人と野菜の食文化
日本人と野菜の食文化を紹介しよう。
日本人が生野菜を食べるようになったのは世界大戦後
日本人も生野菜のサラダを食べている。
しかし、実は日本人が生野菜のサラダを食べるようになったのは、第二次世界大戦後だそうだ。
意外と日本のサラダの歴史は浅い。
食文化は地域や文化によって影響を受け異なる
当たり前のことだが、野菜は食べ物である。
そのため、野菜は食文化の影響を受ける。
食文化あってこその野菜なのである。
そして、食文化は国や地域によって異なる。
そして、食文化はその地域の生活や文化と一体化している。
その結果、実は野菜はその野菜が存在する地域の生活や文化の影響を受けている。
信州の伝統野菜|長野県下伊那郡天龍村の巨大なていざなす
そのことを、信州の伝統野菜に認定されている長野県下伊那郡天龍村の「ていざナス」を例にして、説明しよう。
ちなみに、ていざナスは信州伊那谷手ぬぐいにもデザインされている。
在来品種のていざなすとは?
ていざナスは世界中で天竜村でしか栽培されていない超巨大なナスだ。
ラグビーボールを引き延ばしたくらいの大きさがある。
あまりにも巨大なため、1株から20個ほどしか収穫できない。
ていざなすの特徴
しかも、皮は硬く食べられないし、中身は水分が多すぎて、一般的なナス料理に使うことが出来ない。
例えば、ナスの漬物にも出来ないし、麻婆ナスにも使えないし、ナスのてんぷらもダメ。
スーパーに並べたら、物珍しさから一度は買ってもらえるけど、二度目はないだろう。
なぜ、こんな使えないナスがなぜ栽培されているのか?
その謎を解くカギは、昔の村人の生活にある。
長野県天龍村の村人の暮らしと伝統野菜ていざなすの誕生秘話
長野県下伊那郡天龍村は、山しかない超ド田舎である。
村人は自給自足の生活をし、現金が必要な時は山の木を伐って売り、生活していた。
山に木を伐りに行くときは、昼食用にご飯とていざナスと味噌を持って行った。
ていざナスは山作業用の腰ヒモに縛ってぶら下げて運んだ。
運べるのは1個だけなので、大きなナスを選ぶ。
山でお腹がすくと、気を集め焚き火を炊き、その熱い炭の中にていざナスを丸ごと放り込んだ。
しばらくそのまま焼くと、蒸し焼きになる。
硬い皮のおかげだ。
木を切るためのナタで縦に半分に切る。
そこに持ってきた味噌を塗って食べる。
水分をたっぷり含んだ果肉がとろっとろになり、最高のおかずになる。
この食べ方をするために、より大きく、皮が硬く、水分が多いナスが好まれ、その条件に合う個体を選抜していった結果、現在のていざナスが誕生したと言われている。
天竜村の村人の生活、そしてその特殊な食べ方がこの特殊な超巨大ナスを誕生させた。
天龍村のていざなすと阿南町の鈴ケ沢なすの共通する特徴
「いやいや、都合がいいように解釈しすぎでしょ!?たまたま巨大ななすが生まれただけでしょ!」
と思う人もいるかもしれないので、もう少し説明しよう。
長野県下伊那郡阿南町の巨大な鈴ケ沢なす
天龍村の近くに阿南町というこれまた超ド田舎がある。
村人の生活は天竜村と同じだ。
そこにも超巨大ナスが存在し、その名は「鈴ケ沢ナス」という。
見た目はほとんどていざナスと一緒で、肉質と味も似ている。
なるほど、ていざナスの親戚かと思いきや、実は全く別の由来を持つ品種である。
ていざナスはアメリカ由来の品種、鈴ケ沢ナスは九州由来の品種と言われている。
全く由来の異なる品種から、似た形質のナスが選抜された。
これは、先の仮説を裏付ける証拠になる。
こっちが鈴ケ沢ナス
このナスの話は、恩師から教えてもらった。
恩師は伝統野菜の研究者であり、信州の伝統野菜の選定委員でもある。
そしてこのナスの話は、恩師の著書にも詳しく書かれている。
地域を照らす伝統作物|大井美知男・市川健夫
ナス以外の話もたくさん載っている。
長野県内の平安堂で販売されているので、長野県民にはぜひ一度読んでもらいたい。
僕はパナマまでこの本を持参し、隅々まで読み込んでいる。
パナマの食文化を学んでから農業指導を行いたい
まいう~キュウリはなぜ美味しかったのか?
それは、パナマのキュウリとパナマの気候に合った食べ方だったからだと思う。
例えば、ヨーロッパのようなコッテリしたシーザードレッシングは、パナマのキュウリと気候には合わない。
パナマの肉厚なキュウリと暑い気候には、レモンのさっぱりした酸味がぴったりだ。
僕は野菜栽培隊員だが畑の野菜だけではなく、テーブルの上の料理や村人の生活まで見なくてはいけないと思う。
生活や文化あっての野菜である。
おしまい。