ラテンにいると日本のフルーツが恋しい!
日本を発って50日が経ち、だんだん日本の食べ物が恋しくなってきた。
実家が果樹農家ということもあり、僕は果物が好きだ。
パナマでもマンゴー、バナナ、パイナップルなどたくさんの果物を食べているが、とても恋しい日本の果物がある。
日本の桃が食べたい!
それは、モモだ。
日本に居た頃は、夏になるとモモを冷蔵庫で冷やし、丸ごとかぶりついて食べていた。
モモの食べ方は、丸ごとかぶりつくのが一番美味しいと思う。
ちなみに、パナマ人はマンゴーを石を使って木から落とし、丸ごとかぶりついて食べている。
果物の種類は違うが、食べ方は一緒だ。
これは、道具というものが生まれる前の狩猟・採集で生活していた頃の名残だろうか。
ただし、パナマ人の場合はただ単に面倒くさがりなだけな気もする。
パナマ人のラテン系な性格
パナマに住み始めて50日経ち、だんだんとパナマ人の習性を理解しつつある。
パナマ人は「面倒くさがりで、お喋り好きで、時間を気にしない」。
仕事をしない、時間にルーズ
例えば、仕事は日本人が一日に十個こなすとすると、パナマ人は一個こなすことが出来れば良い方だ。
出来るだけ面倒くさい仕事は負わないようにしている。
仕事中も同僚や友人とお喋りをしているか、電話で誰かとお喋りをしている。
10時から「農家向けの講習会」を始める予定でも、実際に始まるのは11時過ぎになることが多い。
それは、準備に取り掛かるのが9時55分からだからだ。暑い中、1時間以上も農家は待たされている。
他人を待たせることに対して、何の罪悪感も感じないようで、僕もいつも同僚に待たされている。
「今すぐに、農家に視察に行くぞ!急いで準備しろ」そう言われて、慌てて準備したとしても、実際に出発するのは1時間以上経ってからだ。
「いつ出発するの?」とこちらから催促してみても、「今すぐだ」と言いつつ同僚とのお喋りを続けている。
しかし、仮に僕が相手を待たせることになると「俺の大切な時間を返してくれ!」と鬼のような剣幕で怒られる。
僕の方が待たされている時間は圧倒的に長いので、普段は温厚な僕もさすがに頭に来て、こう大声で叫びたくなる。
「時間泥棒は、お前だ!」
青年海外協力隊としてパナマ人を変える必要がある。
もちろん、その怒りの矛先を同僚に向けることはなく、グッと我慢している。
それは僕が青年海外協力隊員として、パナマに派遣されたからだ。
青年海外協力隊の目的は「開発途上国の経済的発展に寄与すること」である。
日本が第二次世界大戦の敗戦後、急激に経済成長を遂げたのには、朝鮮特需などいろいろな要因があると言われているが、「日本人が勤勉で働き者」という習性も強く作用したと言われている。
その発想から考えると、日本人である僕がパナマの経済発展に貢献するためには、パナマ人を変える必要があると思う。
「時間を気にせずに、仕事中にお喋りばかりしているパナマ人」を「時間を気にして、お喋りをせず仕事に没頭するパナマ人」に変える。
これが、パナマに派遣された協力隊員としての役目なのだろう。
パナマ人を日本人のように教育したい。
幼い頃からパナマ流に教育を受けてきた彼らを校正するのは、大変な苦労が予想される。
しかも、僕は教育に関する知識、経験が乏しい。
訓練所で習ったシュタイナー教育
しかし幸運なことに、駒ケ根での派遣前訓練時代に「教育に関するワークショップ」に参加した経験がある。
青年海外協力隊では、教育という分野が重要視されているため「現職教師」の隊員がとても多い。
おかげで訓練所では、教師の方々から教育に関する話を聞く機会が多くあり、大変興味深かった。
その中でも、一番印象に残っているのは「シュタイナー教育」に関するワークショップに参加したことだ。
シュタイナー教育とは「子供の自主性を尊重した教育方法」でドイツの哲学者シュタイナーが提唱したことから、シュタイナー教育と呼ばれている。
大変興味深い教育方法で、日本でも取り入れている学校があるそうだ。
さらに、シュタイナーの思想は農業や文学にも影響を与えており、農業では「バイオダイナミック農法」という奇想天外な農法が生まれ、ヨーロッパを中心に注目されている。
ミヒャエル・エンデのモモ
また文学の世界では、ドイツの作家「ミヒャエル・エンデ」がシュタイナーの影響を受けたと言われている。
彼のもっとも有名な作品は、「モモ」という小説だろう。
子供の頃に読んだことがあるという人も多いだろうし、もし読んでいない人がいたらぜひ一度読んで欲しい。
灰色姿の時間泥棒から、人々を救うモモという少女の活躍を描いた作品で、世界的にベストセラーになった。
僕の大好きな一冊だ。
悪の組織で働く時間泥棒が現れる前は、モモと人々はお喋りを楽しんでいて、とても幸せな世界だった。
しかしある日突然、時間泥棒が現れ、人々にもっと幸せになるために、効率良く時間を使うように教える。
その日以降、人々は世話しなく働くようになり、時間を気にしてお喋りをしなくなった。
もっと幸せになれるはずだったのに、人々は幸せではなくなった。
人々の幸せを取り戻すために、モモの奮闘が始まる…。
(続きは本で)
桃の実写版を作るとしたら?
仮にモモの実写版をパナマで撮影するとしたら、配役は明らかだ…
「時間泥棒は、僕だ!」
パナマ人の時間のルーズさに頭に来ていたときに、モモのことを思い出して冷静になれた。
しかし、僕はモモのように一緒にお喋りをしていればいいとも思わない。
モモが世界的に人気になった時に、この作品のメッセージは文明批判や資本主義批判、余裕を忘れた現代人への警鐘だと思われていた。
しかし、後に作者のミヒャエル・エンデは「私が伝えたかったことは、単に文明批判などではない」と語っている。
「エンデが本当に伝えたかったことは何なのか?」
2年間じっくり考えながら行動したい。
実写版モモたちと一緒に。