「ネットで薬を調べまくる患者さんも、自分が何を知らないのかまでは知らない」を読んで
シロクマの屑籠というブログの「ネットで薬を調べまくる患者さんも、自分が何を知らないのかまでは知らない」という記事を読んでとても共感したので、今回の記事を書いている。
まずは、以下のリンクからシロクマの屑籠さんへアクセスして、該当記事を読んで欲しい。
参考:ネットで薬を調べまくる患者さんも、自分が何を知らないのかまでは知らない
1.要約:ネットで薬を調べまくる患者さんも、自分が何を知らないのかまでは知らない
ここからは、「ネットで薬を調べまくる患者さんも、自分が何を知らないのかまでは知らない」を要約して説明しよう。
著者は精神科医ブロガーで、来院する患者さんがネットで薬のことを調べまくっている様子を教えてくれた。
しかし、ネットで調べただけの素人の知識には「知識の偏り」があることを感じているそうだ。
ですが困ったことに、ネットで調べまくって来院される人のなかには、自分の知識に偏りや欠落があることを自覚できていない人が少なからずいるのです。
ときには医師に偏りを指摘されてもぜんぜん自覚できず、ネットで聞き覚えた知識ですべてカヴァーできていると思い込んだままの患者さんもいます。
この経験から、「ネットで調べた知識は知った気になっているだけで、実は理解できていないのでは?」と問題提起する。
本当に理解するためには、「知識の断片を束ねるための紐」が必要だと諭す。
そして、その紐を手に入れるためにはネットで検索するだけでなく、「書籍や専門家や学校で学ぶことが必要だ」という。
でも、もっと本格的に知りたいだとか、体系的に学びたいだとか思った時には、学習や検索をインターネットだけで絶対に完結させてはいけません。
書籍でもいいし、専門家や学校でもいいですが、インターネット以外の場所で載っていない部分を補完し、知識の断片を束ねるための“紐”にあたるものを求めなければなりません。
この“紐”にあたるものが欠けている限り、専門家向けのネットの文章ですら十分には生かせないでしょう。
精神科の薬に限らず、知識の泉としてのインターネットはまだまだ単体で成立するものではなく、書籍や専門家や学校によって補われることでようやく成立するものだと私は思います。
一言でまとめるとこういう意見だ。
ネットで調べただけの素人の知識には「知識の偏り」があるので、本当に理解するためには、ネットで検索するだけでなく「書籍や専門家や学校で学ぶこと」が必要。
100%、同意します!!
これは農業の分野にも、めちゃくちゃ当てはまる!
この文章を読んで、これは「農業の分野にもめちゃくちゃ当てはまる!」と感じた。
1.農業を理解するためには、植物の生理・生態の知識が必要
シロクマの屑籠では精神科と薬の話だったが、農業も同じで農業を理解するためには、植物の生理・生態の知識が必要になる。
精神科医のシロクマさん程ではないが、ぼくも農学系大学院の修士課程を修了した農業の専門家だ。
大学院生時代は植物の生理・生態に関する専門書を何冊も読み、英語の論文だって何報読んだかわからない。
特に四季成り性イチゴを使った周年生産に関しては世界中の誰にも負けない自信があるし、逆にぼくよりも詳しい人がいたら紹介して欲しいくらいだ、ぜひ一晩中語り合いたい。
参考:苺ソムリエ直伝!美味しいイチゴの苗の作り方&育て方&見分け方&食べ方
ちなみに植物の生理・生態を理解するためには、実家が農家であることと青年海外協力隊・野菜栽培隊員として活動していることは、ほとんど役には立たない。
もちろん自分で植物を育ててみることで理解できることもあるが、専門書を読むことと論文を読むことなしには、本当の意味では植物の生理・生態を理解できないのだ。
農業の分野でも、シロクマさんの言う「紐」が必要だ。
農業を理解するためには、専門書や論文に書いてある「植物の生理・生態の知識」が絶対に必要になる。
2.有機農業のエセ科学に騙されている、品種改良技術を勘違いをしている人
例えば、有機農業のエセ科学に騙されている人とよく遭遇する。
(1)有機農業信者でもアンチ有機農業でもない、エセ科学が嫌いなだけ
先に断わっておくと、ぼくは有機農業信者でもアンチ有機農業でもない、エセ科学が嫌いなだけだ。
有機農業には良い所も悪い所もあるし、これからもっと科学的な研究が進むべき分野だと思っている。
実際、ぼくはパナマ共和国の山奥の集落では有機農業を教えている。
参考:青年海外協力隊・野菜栽培隊員として二回目の有機肥料の講習会
(2)有機野菜は美味しくて、健康に良くて、環境に優しい????
例えば、「有機野菜は美味しくて、健康に良くて、環境に優しいのよ!」という発言をする人が多いが、もっとを勉強して「紐」を身につけた方がいい。
マスコミや口がうまい商売人によって「化学肥料と農薬は悪で、有機肥料と無農薬は正義」という単純なイメージが植えつけられているが、本当にそうだろうか?
週刊誌で読んだり、テレビ番組を見たり、ネットで調べたりする以外に、著者が偏った立場でない専門書を読んだり論文を読んだことがあるだろうか?
そもそも、肥料が根からどうやって吸収されるのか知っているのか? 安全と安心の違いをわかっているのか?
3.交雑育種法による品種改良と遺伝子組み換えを勘違いしている
また野菜畑で生育が揃った野菜を見て、「遺伝子組み換えはクローンを生み出して、気持ち悪い!」という人もいるが、勘違いをしている。
遺伝子組み換え技術と通常の品種改良は別物だ。
遺伝子組み換えを批判する人は、まずは交雑育種法の概念から勉強するべきだ。
他の分野では自分もググり人間に陥っているはず……、対策は?
ただし、農業以外の他の分野では、ぼくもこのような「紐」がないググり人間に陥っているだろう。
1.「理解していないこと」を理解しよう
このような人間に陥らないためには、「理解していないこと」を理解するべきだ。
例えば、ぼくは医療にも、宇宙学にも、投資業にも通じていない、それらの業界ではただの素人だ。
まずは、無知であることを理解して、知った気にならないことが重要だと思う。
2.真逆の意見も調べる
紐がない人間になりたくなければ、学校に通い専門書や論文を読むしかない。
しかし、すべての分野の学校に通える訳でも、すべての分野の論文を読んでいる時間もない。
そこで、重要なのは、真逆の意見も調べることだ。
有機農法にハマっている人はアンチ有機農法の意見も調べるべきだし、アンチ有機農法の人は有機農法のメリットも調べるべきだ。
研究のために論文を読むときも、真逆の意見を書いた論文を調べながらその分野の理解を深めていく。
対立構造がわかりやすい有機農業を例に考えてみよう。
農業の世界では、有機農法の農家は慣行農法の農家をゴミクズ扱いして、その逆もまた然りなことが多いから(例外もあるが)。
(1)有機農業信者におすすめの本
有機農業は素晴らしいという意見しか聞いたことがない人は、これらの本を読んでもらいたい。
キレイゴトぬきの農業論|久松達央(有機農家が書いた本)
日本農業への正しい絶望法|神門善久(農学・経済学者が書いた本)
(2)有機農業信者におすすめのサイト
ネットで調べているダメと言っておきながら矛盾するが、例えば参考までにこんなサイトを見てもらいたい。
「あなたも農業コンサルタントになれるわけではない」は、ぼくの大好きな農業ブログだ。
有機農業に、エセ科学がぴったりはまる|あなたも農業コンサルタントになれるわけではない
有機栽培と慣行栽培が対立する理由|あなたも農業コンサルタントになれるわけではない
そろそろ無農薬/有機栽培野菜に対する盲信を見直してはどうか|A Successful Failure
(3)アンチ有機農業の人へ
アンチ有機農業の人は、有機農業者の集まりに参加してもらいたい。
怪しい菌を売る農業資材商売の人や、カルト集団のような人以外にも、真っ当な農業者もいるから。
最終的には、今手に入る情報を頼りに、自分で好きな意見を信じるしかない。
本当に理解したうえで有機農業が好きでも、嫌いでもそれは個人の自由だ。
ただし、ここまで読んでも結局ほとんどの人は自分で専門書や論文を読むことをしないだろう。
それは、体系的に勉強する行為はとても面倒くさいからだ。
そうして、ほとんどの人間がマスメディアやGoogle検索に支配されていく。
ほとんどの人間が、自分が何を知らないのかまでは知らない。
まとめ
「ネットで薬を調べまくる患者さんも、自分が何を知らないのかまでは知らない」を読んで共感した。
ネットで調べただけで知った気になるような人にならないように気を付けたい。
おすすめ、しない本
買ってはいけないお菓子 買ってもいいお菓子
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買ってはいけない〈Part2〉
新・買ってはいけない〈2006〉
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