2018年12月21日金曜日、株式会社ユーラシア旅行社の株式総会に株主として参加してきた。
ユーラシア旅行社の株式を購入したのは、株主総会に参加することが趣味のブロガーの友人カタオカさんに誘われたからだ。
※カタオカさんの株主総会レポート記事→ 【2017】シャープの株主総会に、元社員と行ってきた。
そして私以外にも、カタオカさんから誘われた3名のブロガーがユーラシア旅行社の株式を購入し、一緒に株主総会に参加した。
合計5名のブロガーがユーラシア旅行社の株主総会について感想を書いているので、それぞれのブログをぜひ読んでみてほしい。
私はユーラシア旅行社の代表取締役の井上さんが語ったことを中心に、株主総会の様子をレポートしてみる。
株式会社ユーラシア旅行社とは?
まずは、株主総会の話の前にユーラシア旅行社について、かんたんに説明しておく。
ユーラシア旅行社の概要
・設立年月日:1986年2月13日
・事業内容:海外旅行と国内旅行の企画、販売
・代表取締役 井上利男
・上場時期:2001年
・従業員数:47名
※関連企業の株式会社ユーラシアサービスの従業員数は41名。
ユーラシア旅行社の事業内容
ユーラシア旅行社の事業は、「円熟層をターゲットにしたマニアックな海外旅行ツアーの企画と販売」。
例えば、以下のようなツアーを販売している。
こちらは2名で参加が基本で、その一人の料金。
・レバノンと南キプロス周遊 10日間:41万8,000円
・マチュピチュ、ナスカの地上絵とウユニ塩湖 11日間:67万8,000円
・聖地サンティアゴ巡礼路100kmを歩く旅 10日間 :52万8,000円
これらは円熟層向けのツアーなので、料金は高め。
ユーラシア旅行社はツアー料金が高いが、他の旅行社では催行していないマニアックなツアー内容が売りだそう。
例えば、ドローンメーカーとコラボして、中国でドローンの空撮を体験するツアーも販売している。
→ 株式会社 ユーラシア旅行社が、海外旅行ドローン空撮体験ツアーを発表!
株主総会で株主の質問に対して井上社長が語ったこと
ここからはユーラシア旅行社の株主総会で、株主からの質問に対して井上社長が熱く語ったことをまとめる。
※株主総会で私がメモを取った内容をほぼそのまま書いているが、多少は文言に違いや漏れがあるので、大まかな内容だけ理解してほしい。
【ヨーロッパだけではなく、台湾などの日本の近隣国のツアーにも力を入れべきでは?】
ユーラシア旅行社のツアーは、180カ国を網羅している。
台湾もマニアックなツアーを用意している。
しかし、年に1〜2回しか売れない。
「安・近・短」なツアーはお土産物屋がツアー料金の一部を負担することで、ツアー代を安くできるカラクリがある。
しかし、ユーラシア旅行社ではお土産物屋からのキックバックを一切行っていない。
そのため、大手旅行会社よりもツアー料金が高くなってしまう。
中にはツアーガイドがお土産物屋にこっそりとお客様を連れて行ったこともあったが、すぐにやめさせた。
その結果、台湾ツアーの料金は28万円くらいと高価になり、なかなか売れない状況。
また、韓国ツアーは日韓関係の悪化から売れない。
タイやハワイのマニアックなツアーも売っている。
ヨーロッパだけでなく、日本の近場のツアーも売っている。
しかし、ユーラシア旅行社は小さな会社なので、切り口をつけて個性的なツアーを作らないと売れない。
3〜4年前から国内旅行も売っている。
これは国内旅行というよりは、181カ国目の旅先という位置づけ。
ユーラシア旅行社のツアーに参加した旅行者からは「値段は高いけど、いい旅だった」といってもらえる。
ユーラシア旅行社は、旅行業界では異質な存在。
ユーラシア旅行社を旅好きの集まりにするのではなく、旅のビジネスがしたい。
「記録ではなく、記憶に残る旅」を提供したい。
例えば、ユーラシア旅行社のツアーでモロッコに行ったお客様は、もう一度モロッコへ行くことはない。
だけど、その方の残りの人生で「モロッコ旅行はユーラシア旅行社の○○さんがガイドをしてくれて楽しかったなぁ」と思い出してほしい。
しかし、自分たちのためにもお金を儲けないといけない。
ユーラシア旅行社では空港税や燃油サーチャージなどを、すべて含んだ料金を提示している。
それに対して、他の大手旅行会社ではツアー料金を安く見せるために、空港税や燃油サーチャージを含まない料金を提示している。
そして、空港税や燃油サーチャージを別途請求する。
このやり方をユーラシア旅行社ではやらない。
燃油サーチャージの値段は変動する。
ちょうど今、来年の4月以降のツアーのパンフレットがほぼ完成した。
そこには燃油サーチャージの値段がすでに含まれている。
しかし、実際には燃油サーチャージの予想は難しく、予想以上に燃油サーチャージの値段が高くなりコストが上がるリスクがある。
【女性が取締役に入るべきでは?】
取締役は二人だけで、両方とも男性。
しかし、現場の取締係は二人いて、どちらも女性。
ユーラシア旅行社は男性よりも女性の方が活躍している。
【集客のためにFacebookなどのSNSを活用してはどうか?】
すでにインターネットやSNSを活用するためのプロジェクトを始めている。
例えば、FacebookやInstagram。
ユーラシア旅行社のホームページは、すべて社員の手作り。
外部からコンサルタントを雇ってやったこともあったが、基本的にはすべてユーラシア旅行社の社員が行っている。
ユーラシア旅行社は1986年から始まった。
その当時から外部に丸投げすることはなかった。
自分たちで勉強してやってきた。
自分たちだけですべてやってきた。
このやり方では、「1+1」が「2」にしかならない。
このようなコッテコテなやり方を貫いている。
しかし、ITやSEOには弱いことは自覚している。
ユーラシア旅行社は、お客様の安全安心を第一に考えている。
これが俺らの使命。
(取締役が終始うなずきながら聞いている)
【正確な顧客の人数は?】
9,980名(ヨーロッパ3,500名、イスラム1,057名、国内旅行は1,323名、残りはアフリカ・北中南米など)
※数値は正確ではない可能性があります
【パッケージツアーだけでなく、プライベートツアーはしないのか?】
プライベートツアーは20年前からやっている。
でもブレークスルーしない。
取っ掛かりが見えない。
世界中のどこでもプライベートツアーが作れるけど、売れない。
どうしたらいいのかわからない。
なので、パッケージツアーもプライベートツアーも両方やるしかない。
例えば、「モロッコ」でGoogle検索の一位を取ったらいいのか?
やってみたけど、どうも違うようだ。
いろいろと考えているが、勝ちパターンが見えてこない。
年間営業収益が過去最高の94億円(正しくは95億円?)から、ずっと右肩下がりの状態。
営業収益100億円を目指したいけど、勝つ方程式が見えてこない。
【過去最高の94億円のときは、何が良かったのか?】
営業収益94億円のときは、イスラムの地域が稼ぎ頭だった。
モロッコやパキスタンなど。
当時は過激派テロ組織イスラミックステート(IS)がなかった。
イスラムへ興味を持った人たちを、ヨーロッパや中南米へも連れて行った。
2001年4月に上場して売上が急上昇したが、9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の影響で、イスラム地域へ旅行する日本人の数が激減した。
2004年から旅行者の人数が戻りつつあるが、再びISによるテロ事件が頻発して旅行者が減っている。
最近では、大手旅行会社がユーラシア旅行社と似たようなツアーを出している。
悪い言い方をすると、「パクっている」とも言える。
大手旅行会社はユーラシア旅行社よりもツアーの参加人数を多くして、ツアー料金を安くしている。
しかし、ユーラシア旅行社はお客様の安全安心を最優先させているので、ツアーの人数を少なくしている。
そして、絶対にお土産物屋に連れて行かない。
なので、どうしても大手旅行会社のツアー料金よりも、ユーラシア旅行社のツアー料金は高くなってしまう。
このように大手旅行会社が同じようなツアーを販売して、競合が増えている。
地球には「果て」がある。
なので、新しい地域を開拓するのではなく、「切り口」を変えてツアーを作るしかない。
しかし、ツアーには特許がない。
なので、大手旅行会社にかんたんにマネされてしまう。
【同業他社の中で気になる企業や動きはあるか?】
同業他社の研究もしている。
他社がツアーを売っていて最近勢いがある地域は、日本の外務省が「危険」と指定している地域。
しかし、ユーラシア旅行社はお客様の安全安心を第一に考えているので、外務省が危険といっている地域には絶対にお客様を連れて行かない。
危険な地域のツアーを出せば売れるかもしれないが、これからもユーラシア旅行社は危険な地域へのツアーを売ることはしない。
過去の株主総会のレポート記事
過去の株主総会の様子も知りたい人は、こちらのブログ記事(2008年)を読んでみてほしい。
井上社長の過去のインタビュー記事
井上社長についてもっと知りたい人は、こちらの記事(2004年)を読んでみてほしい。
→ トップ・インタビュー株式会社ユーラシア旅行社 代表取締役 井上利男様
ユーラシア旅行社の株主総会の感想
ユーラシア旅行社の株主総会に参加した感想を、かんたんにまとめるとこんな感じ。
・井上社長の熱意がすごくて感動した
・わからないことを上辺だけの言葉で取り繕ったり、嘘をついたりせずに、正直に「わからない」といっていて誠実そう
・もうひとりの取締役が井上社長の答弁を終始うなずきながら聞いていて、かっこいい
・ユーラシア旅行社は売上の最大化よりも、お客様の安全安心を最優先させているので、お客目線でみるとすごく安心できる
・家族に海外旅行をプレゼントするなら、ユーラシア旅行社を利用したいと思った
・大手旅行会社にツアーをマネされるのはかわいそうだけど、株主目線でみるとその打開策がないのは少し不安
株式会社ユーラシア旅行社のIR情報を見てみよう
株主総会の話だけでは情報が不足しているので、もう少しユーラシア旅行社について調べてみよう。
ユーラシア旅行社のIR情報のページを見ると、投資家向けの広報情報が記載されている。
ユーラシア旅行社の業績は、右肩下がりから回復したところ。
ただし、会社の業績は日本の旅行業界の影響も受けるので、そちらも加味しないといけない。
海外旅行業界を調べてみよう
次は、日本の海外旅行業界の全体像を調べてみる。
観光庁が公開している主要旅行業者の旅行取扱状況年度総計 を見てみよう。
平成25年度から見てみると、こんなグラフになった。
ユーラシア旅行社と同じように、右肩下がりから回復する動きを見せている。
なので、ユーラシア旅行社の経常利益の推移は、海外旅行業界の景気の影響を受けていると考えていいだろう。
私からユーラシア旅行社の井上社長への提案
井上社長は株主総会の中で、「勝ちパターンが見えてこない、どうしたらいいのかわからない」と話していた。
そこで、ここからは私が「こんなことを試してみたら、いいのでは?」と思ったアイデアを書いてみる。
ただし、旅行業界で働いていた訳ではないのでトンチンカンな意見もあると思うが、素人が考える意見としてみてほしい。
1.ポジショニングがわかりづらい
まず、「ユーラシア旅行社のポジショニングがわかりづらいな……」と感じた。
ユーラシア旅行社は、旅行会社なのに株式上場しているとても珍しい企業で、企業情報ではそこをアピールしている。
日本の旅行会社の中で株式を上場している企業は、4〜5社しかないらしい。
「ということは、ユーラシア旅行社は日本のトップ5に入る大企業か?」というと、そうではない。
事業規模は中小企業とよべるような規模。
だからといって、中南米専門旅行会社やアフリカ専門旅行会社ほどには地域に特化せず、ユーラシア旅行社は地球全体規模でツアーを販売している。
そのため、大企業でもないしベンチャー企業でもないし、特別に強い地域があるわけでもないので、ポジショニングが曖昧に感じてしまう。
参考資料:20181002 明星大学『ブランディング論』第4回講義スライド(講師:株式会社イーグッド榎本晋作)
海外旅行業の取扱額で日本の旅行業者を並べると、これがトップ5。
1.JTB
2.HIS
3.阪急交通
4.KNT-CT
5.日本旅行
トップ5社の「海外旅行事業の取扱額」とユーラシア旅行社の「経常利益」を比較することは正しくないだろうけど、あくまでも参考程度に比較してみた。
1位のJTBの取扱額とユーラシア旅行社の経常利益の差は、およそ114倍。
5位の日本旅行の取扱額とユーラシア旅行社の経常利益の差は、およそ23倍。
井上社長が語っていたように、「大手旅行会社が中小規模の旅行会社のツアーをマネしている」とすると、規模の経済的に中小企業は辛くなる。
そうすると、中小企業は大手旅行会社とは別のポジショニングを狙わないといけないだろう。
なぜかというと、これまではユーラシア旅行社は「円熟層をメインターゲットにして、地球全体のマニアックなツアーを販売する」というポジショニングが成功していたが、そのポジションを大手旅行会社が奪いに来たからだ。
例えば、ベンチャー企業を参考にして、
・特定の地域に特化させる
・プライベートツアーに特化させる
・超マニアックなツアーに特化させる
・少人数制ツアーに特化させる
・体験型のツアーに特化させる
・超高級ツアーに特化させる
・特定の年齢層に特化させる
など、大手旅行会社にマネされないようなポジショニングが必要ではないか。
2.Instagramの強化
ユーラシア旅行社のInstagram、Twitter、Facebook、YouTubeを拝見したが、特にInstagramが活かせていないと感じた。
ユーラシア旅行社のターゲット層は円熟層(50歳から70歳程度?)なので、SNSの利用率は低いだろう。
そのため、申込み経路はインターネット経由よりも、パンフレット経由や電話での問い合わせが多いと推測される。
なので、若年層をターゲットにした旅行サービスよりも、SNS活用の優先度は低いだろう。
しかし、そうはいってももう少しSNSを活用すべきだと思う。
例えば、こんなケースがあるからだ。
・円熟層でもSNSを使っている人はいる
・ツアーに申し込む前にネットで評判を確かめる
・息子や娘が両親に旅行をプレゼントする
・息子や娘が両親の旅行の相談に乗る
こちらがユーラシア旅行社のInstagramアカウント。
正直にいって、写真のクオリティが微妙なのでもっとインスタ映えする写真か、逆にもっと親近感が湧く内容を投稿するか、どちらかに寄せた方がいいと思う。
3.お客様の声の強化
ユーラシア旅行社のホームページやパンフレットでは、ガイドの声は掲載されているが「お客様の声」がないので、お客様の声をもっとアピールした方がいいと思う。
ユーラシア旅行社を実際に利用した人の感想は、ユーラシア旅行社に申し込もうか迷っている人にとって重要だからだ。
ユーラシア旅行社では利用者にアンケートを取っているそうなので、その結果をホームページやパンフレットに掲載してはどうだろうか。
アンケートの結果をツアーの改善に使うだけでなく、宣伝にも使ってみてほしい。
4.お客様同士のコミュニティづくり
円熟層がユーラシア旅行社のツアーを使って海外旅行に行く目的はいろいろだと思うが、
・夫婦二人だと暇だから
・お金に余裕があるから
・人生最後の思い出づくりがしたいから
・新しい友だちがほしいから
・もともと旅行好きだから
・普通の旅行では満足できないから
・自分で旅の計画を作るのは面倒だから
・英語が話せないので通訳がいてほしいから
・旅先ではガイドの説明を聞きたいから
このように、ある程度は同じような価値観の人が多いだろう。
そして、井上社長は2004年のインタビューで「リピーター率はおよそ7割」と話していて、リピーター率は高いようだ。
そこで、ユーラシア旅行社を利用したお客様たちのコミュニティを作って、お客様同士が交流する機会を作ってはどうか。
お客様のコミュニティを作ることで、リピーター率をさらに上げることができるかもしれない。
5.社長の熱意をYouTubeで売り込む
ユーラシア旅行社の株主総会に参加して一番驚いたのは、井上社長の熱意だ。
質問者の質問量を「1」とすると、井上社長は「15」くらいの量を、熱く回答していた。
そして井上社長の熱意には感動して、ユーラシア旅行社のツアーに参加してみたいと思うようになった。
なので、この井上社長の熱意をYouTubeを通じて発信してみてはどうだろうか。
YouTubeといえば、メインの視聴者層が「小学生」といわれているし、たしかに利用者の年齢層は低い。
しかし、私のYouTubeチャンネルのアナリティクスを分析してみると、中年以上の高齢者も意外とYouTubeを観ているので、訴求効果はあると思う。
ただし、井上社長は忙しくてYouTubeに出演している暇はないだろうから、そこは社員のみなさんが代わりに出演してもいいだろう。
現在のユーラシア旅行社のYouTubeチャンネルでは、旅先の映像を発信しているが、社員さんがツアー旅行の魅力を語ってみるのも面白いと思う。
まとめ
今回はユーラシア旅行社の株主総会に参加した様子をご紹介した。
これまでも株主総会には何回も参加したことがあったが、今回は「海外旅行」という私が興味を持っている業界の会社だったので、とても面白かった。
特に井上社長の熱心な答弁には感動して、ますますユーラシア旅行社に興味を持てたし、参加してよかったと思った。
ユーラシア旅行社がこれからどのような戦略で事業を展開していくのか、注目していきたい。
そして、マニアックな海外旅行に行きたい人や、中高年の方に安心安全な海外旅行をプレゼントしたい方は、ぜひユーラシア旅行社のホームページを見てみてほしい!
→ ユーラシア旅行社
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・カタオカさん:【ユーラシア旅行社】海外ブロガーの猛者4人を連れて株主総会に行ってきた。
・nicoさん:①(株)ユーラシア旅行社の株主総会に行くオフ会」レポート!少数精鋭でニッチな旅行を手がける社風に共感
・nicoさん:②新しいことがなかなか進まない多くの企業は、フリーランスと一緒に仕事をすることが解決策なのではと思った話