中央アメリカのパナマ共和国
パナマは中央アメリカの最南端に位置し、経済的な発展度合いから「開発途上国」に分類されている。
例えばカニャサスには「一日当たりの生活費が1ドル以下」の住民も多いため、車を持っている住民は少なく、移動手段といえば馬が一般的である。
世界の火薬庫
また中央アメリカは「世界の火薬庫」と呼ばれるほど犯罪が多いことで知られ、パナマも犯罪発生率は日本の数十倍である。
犯罪の発生には、麻薬売買を取り仕切るマフィアの存在や貧困が強く影響していると言われている。
パナマのニュース番組では、毎日のようにパナマでの麻薬押収事件や殺人事件を報道している。
青年海外協力隊の配属先で盗難事件が発生
パナマに来てから70日が経ち、僕の周りでもついに重大な事件が発生してしまった。
この週末に、配属先のMIDAの事務所に泥棒が侵入したのだ。
月曜日の朝に事務所に出勤すると、先に来ていた同僚が泥棒の被害に気づき慌てていた。
MIDAの事務所は平日は常に職員が住み込んでいるが、週末には人がいなくなる。
今回は、その隙を狙われたようだ。
もしかすると、犯人はMIDAの内部事情に詳しい人物かもしれない。
ここが配属先のMIDA。
盗まれたものは?
しかし、もともとMIDAの事務所には金銭は置いていないし、貴重品もない。
今回被害にあったのは、事務所の隣にある圃場のトウモロコシである。
収穫間近に実ったトウモロコシを盗まれてしまった。
カニャサスにはお金がなく食べ物を買えない住民もいる。
パナマの主食である美味しそうに実ったトウモロコシを見て、空腹に耐えきれず思わず盗んでしまったのだろう。
その境遇に同情するが、ここは国の組織の圃場であるため、犯罪を見過ごすことは出来ない。
僕が犯人を捕まえてみせる!
スペイン語が話せないことで、日ごろは同僚には迷惑ばかりかけているが、今回は犯人を捕まえて協力隊として名誉挽回しよう!
青年海外協力隊配属先トウモロコシ盗難事件の対策本部設置!
こうして、捜査が始まった。
まずは現場確認である。
踊る大捜査線のワクさんからも「現場百回」と教えられた。
刃物で切り付けた跡が
圃場に出てみると、トウモロコシが無残な姿になっていた。
トウモロコシの葉を見ると、刃物を使ったような痕跡がある。
パナマでは農作業をする際に「マチェテ」を呼ばれる巨大な剣を使うため、おそらくそれだろう。
ということは、犯人は農家かもしれない。
毎日MIDAにはたくさんの農家が出入りしており、MIDAの内部事情に詳しい農家も多い。
トウモロコシを食べた跡が
現場には、トウモロコシの殻も落ちていた。
どうやら相当お腹が空いていたようで、ここでトウモロコシの実を食べたようだ。
犯罪現場で食事をするとは、なかなか図太い神経をしている。
もしかすると、これは初犯ではなく、何回も泥棒を経験した常習犯の犯行かもしれない。
そうなると、今回の事件は厄介なヤマになりそうだ。
なぜならば、プロの泥棒は現場に証拠を残さないため、犯人を特定するのが困難だからだ。
犯人の足跡が
さらに現場を調べると、犯人のものと思われる足跡を発見した。
今は見識の到着を待っている余裕はない。
さっそく調べてみる。
靴のサイズは12センチくらい、ということはここには子供がいたかもしれない。
少しずつ犯人像が浮かび上がってきた。
物的証拠が示す犯人像
証拠を照らし合わせていくと「お腹を空かせた子供連れた、泥棒の常習犯」というのが有力だろう。
なんだか切ない気持ちになり、もう犯人捜しはやめようかと思った瞬間、同僚の叫び声が聞こえた。
「犯人を捕まえたぞー!」
しまった、同僚に手柄を取られた!
そういえば「犯人は現場に戻って来る」と踊る大捜査線の青島も言っていた。急
いで声がした方に向かうと、犯人は同僚によって取り押さえられ、体を縄で縛られていた。
って、馬かよ!!
犯人は馬
犯人はMIDAの白馬だった。
金曜日に門を閉め忘れてしまい、圃場に侵入出来たようだ。
満腹になったからなのか、いつもよりも幸せそうな表情をしていた。
今日もカニャサスは平和である。
おしまい。