「2年間の任期が終わったあとの青年海外協力隊の進路って謎すぎない?」と疑問に思ったので、青年海外協力隊OBOGにインタビューしてみることにした。
青年海外協力隊から日本へ帰国してからの進路は完全に自由なので、逆に何をしていいのかわからなくてニートや海外ノマドフリーランスになる人もいるからね。
インタビュー第一弾は、南米コロンビアで日本語教師をしているカオリさん。
カオリさんは「日系社会青年ボランティア」と「青年海外協力隊」という二種類のJICAボランティアを経験している。
※日系社会青年ボランティアとは、中南米に住む日系人コミュニティを支援するボランティア制度。
そして、今は青年海外協力隊時代の任国であるコロンビアに戻り、大学で日本語を教えているそうだ。
「いったいどのようにして協力隊後の進路を決めたのか? そもそもなぜ二つのJICAボランティアに参加したのか?」などなど質問をぶつけてみた。
将来青年海外協力隊になりたい人、帰国後の進路に悩んでいる現役隊員にぜひ読んでもらいたい。
JICAボランティアに参加する前:児童養護施設で働いていた→マダガスカル旅行へ
↑ こちらがカオリさん。
宮﨑:カオリさん、お久しぶりです。インタビューへの協力ありがとうございます。
カオリさん:ダイスケくん、お久しぶりです。少し痩せましたね。
※2015年11月にコロンビアのメデジンで一度お会いしたことがあり、2016年12月にこのインタビューを行った。
宮﨑:それでは質問を始めますね。まず青年海外協力隊に参加する前は何をされていましたか?
カオリさん:青年海外協力隊に参加する前に「日系社会青年ボランティア」に参加しています。
※日系社会青年ボランティアについての詳しい情報は以下のJICA公式サイトを見てください。
中南米の日系人社会で、自分の持っている技術や経験を生かしてみたい。そうした強い意欲を持っている方を派遣し、支援するのが日系社会青年ボランティア/日系社会シニア・ボランティア事業です。日系人、日系社会の人々と、ともに生活・協働しながら中南米地域の発展のために協力しています。
引用元:4種類のJICAボランティア
宮﨑:えっ? JICAボランティアに2回参加しているんですか!?
カオリさん:はい。まずは日系社会青年ボランティアでパラグアイ、次に青年海外協力隊でコロンビアへ派遣されました。
宮﨑:(マジかよ、二つのJICAボランティアに参加した人と初めて会ったよ)※超レアです
宮﨑:日系社会青年ボランティアに参加する前は何をしていましたか?
カオリさん:日系社会青年ボランティアに参加する前は、日本の児童養護施設で働いていました。
宮﨑:いつからJICAボランティアに興味があったんですか?
カオリさん:学生の頃から青年海外協力隊に興味がありました。児童養護施設の仕事をやめてマダガスカルへ旅行に行ったら日本語学校があったので、「日本語教師になれば海外に住める!」と思って日本で日本語教師を養成する学校へ通いました。
宮﨑:「マダガスカルで日本語教師になろう」なんて凄いキャリアプランですね。
カオリさん:ただマダガスカルの日本語教師の月給は一万円くらいだったので「これだけでは生活はできるけど日本へ帰る飛行機代は貯まらない」と思い、学生の頃から興味があった青年海外協力隊の説明会へ行くことにしました。
※念のために青年海外協力隊についての説明もJICAの公式サイトから引用しておきます。
アジア・アフリカ・中南米・大洋州・中東の人々のために自分の持っている技術や経験を生かしてみたい。そうした強い意欲を持っている方を派遣し、支援するのが青年海外協力隊/シニア海外ボランティア事業です。現地の人々と同じ言葉を話し、ともに生活・協働しながら開発途上国の国づくりのために協力しています。
引用元:4種類のJICAボランティア
JICAボランティア1回目:日系社会青年ボランティア・日本語教師でパラグアイへ派遣
宮﨑:説明会へ行くまでは日系社会青年ボランティアではなく、青年海外協力隊を考えていたんですね。
カオリさん:はい。その説明会で日本語教師という職種の場合、青年海外協力隊は「日本語を大人に教える仕事」で日系社会ボランティアは「日本語を子供に教える仕事」だと知りました。
宮﨑:協力隊は対象が大人で、日系ボランティアは子供が対象なんですね。
カオリさん:私は児童養護施設で働いていたこともあり子供が好きなので、青年海外協力隊ではなく日系社会青年ボランティアを受けることにしました。
宮﨑:なるほど、それで日系社会青年ボランティアに合格したと。
カオリさん:はい、当時はマダガスカルの要請がなかったので南米パラグアイを選びました。
※JICAボランティアは「要請」と呼ばれる求人がある地域にしか行けない。
【パラグアイの場所】
宮﨑:マダガスカルへの未練はなかったんですか?
カオリさん:実はしばらくして私の妹が青年海外協力隊としてマダガスカルへ派遣されたので、「マダガスカルはもう妹のモノになってしまった……」と感じています(笑)
宮﨑:(姉妹そろってJICAボランティアとかヤバイ)※超レアです
宮﨑:パラグアイでは何をしていたんですか?
カオリさん:ブラジルとの国境地帯で日系人の子供に日本語を教えていました。
JICAボランティア2回目:青年海外協力隊・青少年活動としてコロンビアへ派遣
宮﨑:そして、任期が終了してパラグアイから日本へ帰国したと。
カオリさん:はい。
宮﨑:日系社会青年ボランティアのあとは何をしていたんですか?
カオリさん:青年海外協力隊の青少年活動という職種を受験しました。派遣国はマダガスカルを希望しましたが、パラグアイでスペイン語をマスターしたので南米コロンビアに決まりました。
宮﨑:青年海外協力隊は派遣国の希望が通るとは限らないですもんね…… ぼくは中米パナマ共和国に派遣されましたが、第一志望はネパールでした。
宮﨑:どこで何をしていたんですか?
カオリさん:2005年から2007年までコロンビアのマニサレスという地域で青少年活動を行っていました。貧困地域の児童を対象にした社会教育や少年院を出所後行き場のない青少年たちのグループホームで自立支援等を行いました。
【コロンビアのマニサレスの場所】
宮﨑:具体的にはどんなことを教えていたんですか?
カオリさん:日本語・日本文化を通しての異文化理解教育を中心に、性教育や演劇活動なども行いました。
青年海外協力隊から帰国後:フィリピンの日本語学校で日本語教師として現地採用
宮﨑:そして、コロンビアでの任期を終えて日本へ帰国したと。二度目の帰国ですね。
カオリさん:はい。
宮﨑:青年海外協力隊のあとはどこで何をしていたんですか?
カオリさん:フィリピンの日本語学校で日本語を教えていました。フィリピン人のモチベーションは「日本語をマスターして日本で働きたい!」「フィリピンで日本語を生かした仕事に就きたい!」という強い意志だったので習得スピードが早かったです。
宮﨑:それはやりがいがある仕事ですね! ずっとフィリピンで働こうとは思わなかったんですか?
カオリさん:契約が終わったのと「スペイン語圏に住みたい」と思ったので日本へ帰りました。だって私、英語が苦手なんです……
宮﨑:英語よりスペイン語が得意になるのは、スペイン語圏に派遣された青年海外協力隊あるあるですね(笑)
転職:コロンビアの大学で日本語教師として現地就職
宮﨑:スペイン語圏で働きたいと思ってもなかなか仕事は見つかりませんよね? ぼくも中南米かスペインに住みたいと思っていますが、良い求人が見つからず困っています。どうやってスペイン語圏の求人情報を探しましたか?
カオリさん:インターネットで検索したり、日系社会青年ボランティアのメーリスで海外の求人情報が回ってきました。
宮﨑:メーリス?? 何それ、うらやましい~。
宮﨑:日本語教師は海外の求人が多い仕事だから、もしかしてかんたんに仕事が見つかるんですか?
カオリさん:もし協力隊OBOGあるいは海外での日本語教師を目指す方がネットで求人を検索する場合、「自分が働きたい国の言語(英語・スペイン語・フランス語など)」で検索することを強くおすすめします。例えば日本語教師は海外求人用の日本語サイトがいくつかありますが、そこだけ見ていては自分が希望する国の求人が見つかることは滅多にありません。
宮﨑:日本語で検索したり、求人サイトを見ているだけではダメなんですね。「コツは現地言語で検索すること」φ(..)メモメモ
【日本語教師向け求人情報サイト】
宮﨑:ネット検索から就職するまでの流れはどんな感じですか?
カオリさん:私の場合は当初ペルーを希望していたので「instituto idioma japones Peru(訳:ペルーの日本語学校)」「curso de japonés Lima(訳:リマの日本語コース)」などで検索して、出てきた学校にこちらからスペイン語でメールを送りました。内容は「ペルーでの就職を希望しているので求人が出たらお知らせください」というものです。日本語とスペイン語で履歴書も付けました。三校くらいに送ったところ、みんな丁寧にお返事をくれて、そのうち一校から「今まさに求人があるのでぜひ来てください」というお返事をいただき、見学を兼ねてリマに行きました。
宮﨑:うおおおおぉ、すごい行動力ですね! 見習わなくては。
宮﨑:でも、今はコロンビアのメデジンで働いていますよね?
カオリさん:ペルーのあとにそのままコロンビアのメデジンまで来ました。そうしたら、たまたまメデジンの大学で日本語を教える仕事が募集されていることを日系社会青年ボランティアのメーリスで知り、メデジンで働くことにしました。それが2009年なので、今年で8年目になります。
宮﨑:海外就職の展開がトントン拍子で進んでいますが、海外就職のコツは何ですか?
カオリさん:日本語教師の場合、海外求人用サイトがあることでそれに載っている学校にだけ連絡をする方が多いのですが、求人サイトに載せていなくても実は日本語教師を募集中の学校は世界中にあると思うので、自分から積極的に動くことが働きたい国で働くカギだと思います。
宮﨑:なるほど、自分から積極的に動くことをぼくも意識したいと思います。
宮﨑:でも、ぼくはいろいろ悩んじゃうんですよね…… カオリさんは「やっぱり日本で働こうかな~」「他のジャンルの仕事を見てみようかな~」と悩まなかったですか?
カオリさん:私は親から「カオリは日本では働けない、日本に向いていない」といわれていたので日本は選択肢になかったです(笑) 私が仕事を選ぶときの基準は「まずはスペイン語圏に住めること、次に好きな仕事・私にできること」の順番でした。
宮﨑:優先順位をしっかりと決めていたんですね。就職活動の参考にします。
宮﨑:今はどんなお仕事をしているんですか?
カオリさん:メデジンにある私立大学の言語センターで日本語を教えています。オープンカレッジなので生徒は学外の人が多いです。
宮﨑:なぜ、学外の人がわざわざ日本語を習いに来るんですか??
カオリさん:それは、アニメとか漫画とかゲームが好きな….
宮﨑:オタクだからですね!笑
宮﨑:コロンビア人に対して日本語をスペイン語で教えているんですか?
カオリさん:日本語の指導方法には「間接法」と「直接法」があり、今はクラスのレベルに合わせて使い分けて教えています。
※間接法は日本語を英語やスペイン語で教える方法、直接法は日本語を日本語だけで教える方法。日本の義務教育の英語学習法は間接法。
現在のボランティア活動:メデジンで日本倶楽部を運営している
宮﨑:カオリさんは「日本倶楽部」という団体で日本文化を教えるイベントを開いていますよね、あれもお仕事なんですか?
カオリさん:日本倶楽部はサークル活動なので、ボランティアとして行っています。
※以前は日本語倶楽部という名称でしたが、日本倶楽部へ改名したそうです
宮﨑:日本倶楽部ではどんなことをしていますか?
カオリさん:日本の文化に興味がある人が集まって、書初めや七夕などのイベントを開催しています。毎年クリスマスにはサンタ・プロジェクトというイベントもしていますよ。
宮﨑:そういえば、2015年にお会いしたときにサンタ・プロジェクトの劇の練習を見学させてもらいました~。
日本倶楽部のビッグイベント:サンタ・プロジェクト
↑ 上の写真はインタビューの翌日にサンタ・プロジェクトのメンバーが集まる打ち上げに参加させて頂き、撮影した写真です
宮﨑:サンタ・プロジェクトについて教えて頂けますか?
カオリさん:サンタ・プロジェクトは、青年海外協力隊としてマニサレスにいたときに始めたイベントで、2016年で8回目でした。クリスマスの時期に貧しい地域に住んでいる子供たちを集めて「日本語の歌やセリフを織り交ぜた演劇公演」をプレゼントしています。演劇の練習はクリスマスの三ヶ月前から始めて、週末に一日三時間ほど行っています。
宮﨑:サンタ・プロジェクトのメンバーは日本倶楽部のメンバー何ですか?
カオリさん:日本倶楽部のメンバーもいますし、そうでない人もいます。実はメンバーになるためには、オーディションもあります。
宮﨑:オーディションがあるなんて、予想以上に本格的ですね。でも、どうして演劇なんですか? 貧しい子供への支援といえばおもちゃのプレゼントが定番ですが……
カオリさん:演劇は役者だけでなく大道具係、美術係、音楽係などいろんな得意分野を持ち合えるからです。演劇の練習を通して私たちもチームになれます。それと貧しい子供たちにはお金を使ってモノを与えるのではなく、お金がなくてもできる体験をプレゼントしたかったからです。
宮﨑:素晴らしい活動だと思います!
カオリさん:ありがとうございます~。今年はサンタ・プロジェクトに市役所も協力してくれ、イベントの規模が少しずつ大きくなってきました。
2016年のサンタ・プロジェクトの動画の紹介
2016年のサンタ・プロジェクトの動画をご紹介します。
ゆずの「Hey和」を歌うメンバーの皆さん。
sekai no owariの「Dragon Night」を歌うサンタ・プロジェクトのメンバー。
演劇の中の見せ場、アクションシーン!
カオリさんのブログ:メデジン日本語クラブへようこそ!
宮﨑:メデジンは日本文化に興味を持ったコロンビア人が、日本文化や日本語を学べる環境が整っていて素敵ですね。以上でインタビューは終わりです。今日はありがとうございました。
※カオリさんの活動をもっと知りたい人は、カオリさんのブログ「メデジン日本語クラブへようこそ!」を見てみてください!
まとめ
今回は、JICAボランティアを二つ経験後にコロンビアで日本語教師をするカオリさんの青年海外協力隊OGインタビューをご紹介した。
カオリさんはパラグアイでの日系社会青年ボランティア、コロンビアでの青年海外協力隊、フィリピンでの日本語教師を経験し、現在はコロンビアのメデジンにある大学で日本語を教えている。
また日本倶楽部ではクリスマスにサンタ・プロジェクトを実施していて、貧しい子供たちに演劇をプレゼントしている。
青年海外協力隊から帰国後に進路を決めるときには「まずはスペイン語圏での仕事、次に自分が好きでできる仕事」という優先順位を決めて進路を決めた。
仕事を探す時にはインターネット検索や、日系社会青年ボランティアのメーリスの情報を使ったそうだ。
そして「海外就職を成功させるカギは自分から積極的に動くこと」と語ってくれた。
将来青年海外協力隊になりたい人や現役隊員の皆さんに、カオリさんの体験談を協力隊後の進路選択の参考にしてもらいたい!
【募集】インタビューに協力してくれる青年海外協力隊OBOGを募集中
青年海外協力隊の帰国後進路の情報をもっと世の中に伝えるために、インタビューに協力してくれる青年海外協力隊OBOGを募集しています!
主に任期終了後の進路についてお話を伺い、ブログにアップさせて頂きます。
ぼくは日本中、世界中を移動しているのでタイミングが合った時に、どこかでインタビューをさせて頂きたいです。
ご協力して頂ける方はお問い合わせよりご連絡ください→ お問い合わせ