夏いちごに新品種「長・野53号(サマーリリカル)」が誕生!四季成り性イチゴサマープリンセスを品種改良した収量が多い苺

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長野県が新しい夏秋イチゴの品種「長・野(チョウヤ)53号」を発表した。

夏秋イチゴとは、6月から11月までのイチゴの端境期に収穫できるイチゴ。

長・野53号は長野県野菜花き試験場が、6年がかりで育成した。

本年度中に品種登録が出願される予定。

交配親は明らかになっていないが、長野県の品種サマープリンセスがかかっているのは間違いない。

サマープリンセスは収量の多さと果形の美しさから、一世を風靡した品種。

それを上回る品種ということで、日本の夏秋イチゴ業界に大きなインパクトを与えるのではないかと期待している。

そこで今回は、長野53号について紹介しよう。

【追記】サマーリリカルという名称に決まりました

 

 

目次

夏秋イチゴの新品種「長・野(ちょうや)53号」

まずは、公開された夏秋イチゴ「長・野53号」の情報を見てみよう。

夏秋イチゴとは、6月から11月までの端境期に出荷される苺のこと。

詳しくはこちらの記事を読んでほしい。

参考:夏秋イチゴ(四季成りいちご)のおすすめの品種と栽培方法

 

長野県が発表した長・野53号の写真

長・野53号についての情報は、2018年2月15日に公開された。

こちらが長・野53号の写真。

引用元:長野県野菜花き試験場

長・野53号の呼び方

この品種は、長・野53号と書く。

呼び方は、チョウヤ53ゴウ。

これは品種名なので、長野県は「名称」を一般公募している。

しかし、しばらくはこの品種名が使われるだろう。

そこで、どんな愛称で呼ばれるのか予想してみた。

なぜかというと、イチゴの品種名は農家や関係者の間では、略称で呼ばれるからだ。

過去の長野県産夏秋イチゴの呼び方

例えば、これらが過去の長野県産夏秋イチゴの名前と略称。

●サマープリンセス→サマプリ

●サマーエンジェル→エンジェル

●信大BS8-9→ハチノキュー、ハチキュー、シンダイ

長・野53号の呼び方予想

そこで、長・野53号の略称も予想してみた。

おそらく、このどれかになるだろう。

●ナガノ

●チョウヤ

●ゴジュウサン

●ゴーサン

 

長・野53号の特徴

長・野53号の特徴についても、今わかっている範囲で紹介しよう。

当たり前だが、長・野53号は四季成り性イチゴだ。

四季成り性イチゴとは、通常のイチゴよりも高温長日条件で花芽分化できるタイプのイチゴ。

四季成り性イチゴの日本での流通量は、2%程度といわれている。

(1)収量が多い

まずは、長・野53号の特徴はなんといっても収量の多さ。

日本の夏秋イチゴの中でもトップクラスに収量が多いサマープリンセスよりも、収量が多いそうだ。

6月から10月までの一株当たりの可販果収量は、896gと驚異的。

同じ条件のサマープリンセスが609gなので、長・野53号がいかに多収性なのかわかるだろう。

ちなみに、夏秋イチゴの平均収量は300g程度。

なので、長・野53号は通常の夏秋イチゴの3倍の収量

(2)うどんこ病に強い

長・野53号はうどんこ病に強いそうだ。

長野県の発表では「耐病性がある」という書き方はされていない。

なので、うどんこ病の発生がゼロという訳ではなさそう。

サマープリンセスはうどんこ病にかかりやすかったので、農薬の使用回数が減らせそう。

ただし、それは殺菌剤の話で、殺虫剤の使用回数は変わらない。

(3)暑さに強い

長野県では夏秋イチゴの推奨栽培標高は、850メートル以上といわれてきた。

しかし、長・野53号は標高650メートル以上でも栽培可能だそう。

これは何を意味するかというと、長・野53号は暑さに強いということ。

もう少し科学的に説明すると、花芽分化の限界温度域がサマープリンセスよりも高いのだろう

また、草勢が旺盛で高温期でも根の活性が落ちない可能性もある。

なので、夏場でも収量が落ちにくいし、低標高値でも栽培できる。

(4)糖度は高くない

ただし、糖度はそんなに高くなさそう。

公表されているデータでは、平均糖度は8.1

サマープリンセスが7.8なので、体感的にはほぼ変わらないはず。

また、酸度は長・野53号が0.82%で、サマープリンセスが0.80%

なので、イチゴの味を決定する糖酸比もほぼ同じ。

ぶっちゃけ、サマープリンセスは冬場のイチゴと比較すると、糖度が低くて美味しくない。

ぼくはまだ長・野53号を食べたことがないが、おそらく長・野53号の味はサマープリンセスと同水準だろう。

ただし、糖酸比だけで味が決定するわけではない。

品種によって微妙に味は変わるので、実際に食べてみて評価したい。

(5)果肉は赤い

長・野53号の果肉の特徴は、色が赤いこと。

なぜ、苺なのに果肉が赤いことが特徴なのか?

それは、サマープリンセスの果肉が白いから。

サマープリンセスは、このように果実の断面が白いのが特徴。

果肉が白いことはケーキなどの業務用の苺としては、致命的な欠陥。

なぜかというと、ケーキ用の苺は白い生クリームとのコントラストが大切だから。

引用元:長野県野菜花き試験場

 

そのサマープリンセスの欠点を改善したのが、長・野53号。

このように果肉が赤い品種だ。

ただし、果芯にやや空洞が見られるのが気になる。

空洞も見た目が悪くなるので、マイナス評価になる。

また、すでに忘れ去られた品種だが、サマーエンジェルという品種が存在した。

これはサマープリンセスを品種改良して作られた品種で、果肉が赤いことが特徴。

しかし、非常に期待された品種だったが、収量が低く味も悪かった。

そのため、まったく普及せずにすぐに姿を消した。

長・野53号もそうなるのではないかと、少し危惧している。

 

長・野53号の育成者

長・野53号の育成者は、長野県塩尻市にある野菜花き試験場。

6年がかりで育成したそうだ。

一般的にいちごの品種改良に必要な年数は、10年といわれている。

ただし、最近では品種改良が進んだ結果、5年ほどでも新しい品種が誕生している。

 

長・野53号の栽培条件

長野県限定品種

まず、長・野53号は栽培地が長野県内に限定される。

なぜかというと、サマープリンセスやサマーエンジェルもそうだったからだ。

日本では都道府県ごとに品種改良の競争が起きている。

各県ごとに品種の囲い込みをしていて、他の県では栽培させないのが一般的だ。

なので、長・野53号も長野県以外では栽培できないだろう。

標高650メートル以上で栽培可能

通常、長野県での夏秋イチゴ栽培は、標高850メートル以上で推奨されている。

しかし、長・野53号は650メートル以上で栽培可能だという。

ということは、200メートル低い。

標高が100メートル下がるごとに平均気温は0.6℃高くなる。

なので、およそ1.2℃高くても、栽培できるということになる。

これはけっこう画期的なこと。

なぜかというと、標高850メートルの地域ではなかなか広い農地が見つからない。

しかし、標高650メートルまで含めれば、広い農地が見つかりやすいからだ。

なぜ、低標高地でも栽培できるのか?

低標高地でも栽培できる理由は二つだろう。

一つ目は、花芽分化の限界温度がサマープリンセスよりも高いから。

ようするに、長・野53号は暑くても花芽分化できる。

二つ目は、草勢が強くて高温期でも根の生育が旺盛。

夏場になり疲れしにくいことは、夏秋イチゴにとってすごくメリットが多い。

 

苗の配布開始は2018年春の予定

長・野53号の苗の配布開始は、今年の春を予定している。

夏秋イチゴは春に苗を定植するのが一般的なので、今年から栽培できることになる。

おそらく、すでに苗の購入申込みが殺到しているだろう。

なので、栽培に興味がある人は、すぐに野菜花き試験場へ連絡しよう。

【追記】私の実家(長野県)でサマーリリカルの試験栽培が始まりました

 

 

長・野53号の売上をシュミレーションしてみた

ここからは、試験場が公開したデータを元にして、売上をシュミレーションしてみた。

野菜花き試験場が公開した収量データ

まずは、野菜花き試験場が公開したデータがこちら。

月別の一株当たりの収量データで、二年分のデータの平均値(2016年、2017年)が取られている。

四季成り性品種の中でも、サマープリンセスはトップクラスに収量が多い。

なのに、長・野53号はそのサマープリンセスのおよそ1.5倍の収量。

このデータが正しければ、おそらく長・野53号の収量は、日本ナンバーワンだろう。

 

月別のデータをグラフにしてみた。

サマープリンセスの特徴は、6月7月の収量が多くて、8月以降が少ない。

実は8月以降の方が市場単価は高いので、これが問題になっていた。

しかし、長・野53号は8月以降も収量が多い。

月別の収量が安定していると、作業員の作業時間も安定してくれる。

そのため、このデータの通りの収量の推移を見せてれくると、生産者としては大助かりだ。

 

長・野53号の売上のシュミレーション

今わかっている範囲で、長・野53号の売上シュミレーションをしてみた。

シュミレーションの条件

夏秋イチゴといっても、条件によって収量や売上は変わる。

今回はこの条件でシミュレートしてみよう。

(1)一株当たりの可販果収量:900g

(2)10アールあたりの栽培株数:6,000株

(3)一経営者の栽培面積:20アール

(4)1キロ当たりの出荷単価:2,000円

長・野53号の売上予測(20アール)

900g×6,000株×2=10,800kg

まず、20アールの収量は10,800kg。

10,800kg×2,000円=2,160万円

そして、売上は2,160万円。

たった20アール(50メートル×40メートル)の農地で、売上が2,160万円とは驚異的!

※あくまでの参考値です

比較にサマープリンセス

比較として、サマープリンセスも計算してみよう。

サマープリンセスは、一株当たりの収量を600gとしてみる。

600g×6,000株×2=7,200kg。

7,200kg×2,000円=1,440万円

サマープリンセスは、1,440万円の売上。

サマープリンセスの売上も十分すごいが、長・野53号と比べると劣る。

※あくまでも参考値です

 

 

北海道と長野県で四季成り性イチゴの品種改良が激化

近年、北海道と長野県で、四季成り性イチゴの品種改良が激化している。

夏秋イチゴの生産量では北海道が一位で、二位が長野県。

1.サマープリンセス(長野県)

まず、夏秋イチゴ業界で一世を風靡したのが、サマープリンセス。

とにかく収量が多いことで日本一の品種になった。

しかし、白ろう果という生理現象の原因究明と対策にかなり年数がかかり、その間に人気が低迷した。

また、糖度が低い、秋以降の収量が少ない、うどんこ病に弱いという問題もあった。

そして、長野県の南信農業試験場が育成した品種なので、長野県以外での栽培はできない。

 

2.信大BS8-9(長野県)

サマープリンセスを品種改良して誕生したのが、信大BS8−9。

ぼくが信州大学大学院で研究していた品種だ。

信大BS8−9の特徴は、糖度が高いことと秋以降の収量が多めなこと。

特に味の良さは、四季成り性の中ではトップクラス。

またうどんこ病に強く、果肉が赤いことも長所だ。

しかし、サマープリンセスと比べると収量が少なめ。

最初は長野県限定品種だったが、今は日本中で栽培されている。

 

3.すずあかね(北海道)

北海道の北海三共が育成したのが、すずあかね。

すずあかねの特徴は、果実が大きくて、花数が少ないので摘花の必要が無いこと、秋以降の収量が多いこと。

味はそんなに美味しくないが、とにかく実は大きく管理が楽。

サマープリンセスの後に生まれ、長野県でも栽培面積を増やしていた。

 

4.夏瑞(北海道)

最近、北海道のホーブが育成したのが、夏瑞。

夏瑞は果実が大きくて、果肉が柔らかく、糖度が高いことが特徴。

昨年は贈答用イチゴとして、東京の百貨店で販売されていた。

ぼくも実際に食べてみたが、あまりにも美味しくて驚いた。

 

これまでは北海道でしか栽培されていなかったが、これからは本州でも栽培されるらしい。

ただし、果実の販売はホーブが行うので、全量をホーブへの出荷が原則だそう。

 

5.長・野53号(長野県)

そして、久しぶりに長野県で誕生したのが、長・野53号というわけ。

ここ数年は、北海道産の四季成り性イチゴの勢いが優勢だった。

なので、長野県としては起死回生の一手として、長・野53号に期待しているだろう。

 

 

なぜ、日本のイチゴは世界一美味しいのか?

こちらの動画で、日本のイチゴが世界一美味しい理由を解説しています。

 

 

プランターでイチゴを育てる方法

家庭菜園でプランターを使ってイチゴを育てる方法を解説します。

 

 

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まとめ夏いちごのサマーリリカル

今回は、長野県で誕生した夏秋イチゴ「長・野53号」を紹介した。

もしかしたら長・野53号は、長野県の夏秋イチゴ業界を盛り上げる起爆剤になるかもしれない。

今年から農家での栽培が始まるので、どのような結果になるか楽しみだ。

【追記】

公募によりいちごの名称(ブランド名)が、サマーリリカルに決まったそうです。

サマーリリカルとはとてもかわいい名前ですね。

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