中南米パナマの無電化村
ぼくは青年海外協力隊・野菜栽培隊員として、中南米パナマの山奥の村で活動している。
驚くことにその村には、電気も水道もない。
世界トップクラスの先進国である日本に住んでいる人にとって、電気も水道もない暮らしは想像できないと思う。
電気がなければテレビも、スマホも、パソコンも、洗濯機も使えないし、日が沈めば部屋に電気を点けることもできない。
蛇口をひねっても出てくるのは、無消毒・無濾過の状態の川の水で、寄生虫の卵や病原菌に汚染させている可能性が高い。
そんな無電化村で18回目の滞在調査をした。
18回目の滞在調査
今回の滞在調査は、いつも通り学校の教室に泊まらせてもらった。
この学校にはこれまでに10回以上泊まらせてもらっていて、先生たちにはとてもお世話になっている。
この学校での生活にも慣れたので、宿泊してもとても居心地が良い。
無電化村の学校に宿泊するとパナマ人の協力があってこそ、ぼくの青年海外協力隊活動が成り立っていると実感する。
いつものように村の中心地から片道200円の乗合ジープに乗って、村の近くまで行った。
このジープは、くねくね&アップダウンを繰り返す山道を一時間進むので、毎回車酔いしてしまう。
ジープの停留所からは、こんな景色の中を歩く。
今月末か来月に、中央に写っている遠くにある大きな滝まで遠足に行く予定だ。
村の学校までの道中に、焼畑農業の陸稲栽培の畑を見学した。
今年はエルニーニョ現象により雨季に雨が降らなかったせいで、陸稲の生育が悪いようだ。
そして、無事に学校に着いた。
今回の滞在フィールド調査の目的は、以下の2点であった。
1.学校菜園の改善
2.家庭菜園の調査
学校菜園の改善
(1)新しい学校菜園の改善
この学校では新しく学校菜園を作ったので、その開墾作業を進めている。
プラスチック製のコップに土と肥料を混ぜた育苗培土を入れて、小さな苗を定植した。
日本でいう「ポット育苗」を行い、良い苗を作り、収穫量を増やすためだ。
コップに移植したのは、赤カブとレタス。
この集落は標高が700mあり、熱帯のパナマの中では準高冷地なので、涼しい気候を好む野菜も栽培できる。
ここでは、野菜の袋栽培のデモンストレーションも行っている。
現在はトマト、セロリ、ピーマン、ネギ、ピーマン、ほうれん草を栽培中である。
(2)古い学校菜園の調査
この学校には二つの学校菜園があり、昔から栽培している学校菜園でも農業指導を行っている。
畑を見学すると、スペイン語でモスターサと呼ばれる中国野菜「からし菜」が大きく育っていた。
最近、この中国野菜を村の中心地に住む中国人に売り始めた。
栄養満点のツルムラサキも、ツルを支柱に伸ばし、元気いっぱいに育っていた。
空心菜も順調に生育中。
すでに花を咲かせ、種が出来ていた。
村人はご飯と一緒に炊いて、食べているそうだ。
家庭菜園の見学
家庭菜園も見学して回った。
案山子(かかし)を置いてあった
この袋栽培しているツルムラサキは、完全に肥料不足になっていた。
早急に追肥をしないといけない。
今まで家庭菜園をしていなかった村人が、トマトなどの家庭菜園を始めていた。
小さな、小さな前進。
衣服の即売会
学校で休憩していると、校長先生が服を大量に持って現れた。
町の古着屋で大量に購入し、村人に格安で転売しているそうだ。
村人も小銭を持って、続々と集まってくる。
服やスカートは学校の教室に展示され、村人たちは気に入った服を買っていた。
靴も売っていて、女の子がこの冬用ブーツを100円で買っていた。
ここは熱帯気候のパナマだから、雪は一生降らない。
でも女の子が嬉しそうだったから、問題はない。
折り紙教室
暇な時間には、子供たちに折り紙の折り方を教えた。
中学生の新しい子供も集まって来た。
子供たちにとっては、折り鶴よりも手裏剣の方が簡単らしい。
歯ブラシ普及大作戦の効果
最近、ぼくは郡全域で歯ブラシ普及大作戦を実施した。
参考:子供の歯を守りたい!看護師を巻き込んだ歯ブラシ普及大作戦|JIBURi.com
今回の滞在調査で、その効果は少しだけ見ることができた。
なんと、子供たちが学校で歯磨きをしていたのだ!
教室に自分専用の歯ブラシを保管してあり、学校でも歯磨きをしていた。
それぞれに名前が書かれた歯ブラシ。
しかし、学校で歯磨きをしていたのは、歯ブラシを無料で配布されたクラスの生徒のみ。
それ以外の子供は歯ブラシを買ってもらえたのか…。
まとめ
山奥の村に滞在すると、活動する時間をたっぷりととれるので、中身が濃い活動ができる。
村人や先生、生徒とも交流することが出来る。
たとえば、「ダイ、この村では赤ちゃんは収穫かごに入れて運ぶのよ」と先生が子育ての方法を教えてくれた。
これからも定期的に村に滞在しながら活動したい。