白イチゴはなぜ値段が高い?白いちごの品種、赤いいちごとの違いをプロが徹底解説
2018/01/10
“白いイチゴ”は美味しいんですか?
ぼくは「苺ソムリエ」として働いているので、イチゴ一般人の方から白イチゴについての質問をたくさん受けている。
ここ数年、日本では「白い果実のイチゴ」が流行っている。
最初は高級フルーツ店でしか売られていなかったが、今ではスーパーやネットでもかんたんに買うことができる。
・白イチゴは甘いの?
・なぜ、白いの?
・白いイチゴはどうやってできたの?
そのため、白イチゴについて疑問に思っている人が多いようだ。
そこで今回は、苺ソムリエであるぼくが、白イチゴについて徹底解説しよう。
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白イチゴとは?
そもそも、「白イチゴ」とは何だろうか?
はっきりいって、白イチゴには明確な定義はない。
その前に、イチゴとは?
白イチゴについて語る前に、まずはイチゴの定義をおさらいしよう。
実はイチゴは植物学上は「果実的野菜」に分類されていて、果物ではなく”野菜”である。
なぜかというと、イチゴは木ではなく草に実るからだ。
同じように、スイカやメロンも野菜に分類されている。
また、みなさんがイチゴの実だと思って食べている甘い部分の正式名称は”花托(かたく)”で、みなさんがイチゴの種だと思っているツブツブした部分が”果実“。
イチゴの”種”は、みなさんが種だと思っているツブツブの中に隠れている。
・果実→実は花托
・種→実は果実
・種の中身→実は種
でも面倒くさいので、今回はみなさんが思い込んでいるとおりに、果実と種を定義して説明しよう。
赤いイチゴと白いイチゴの違い
イチゴには「赤いイチゴ」と「白いイチゴ」という分類はない。
イチゴはイチゴだ。
ちなみに学問上は、イチゴは「苺」とか「いちご」とは書かない。
なので、白イチゴという言葉は、「果実が白いイチゴを指す言葉」として一般的に使われているだけだ。
「白イチゴ」という品種があるわけではなく、いくつかの果実が白いイチゴを白イチゴとよんでいるにすぎない。
ちなみにイチゴ業界では、品種名の他に「商品名」があり、例えば「あまおう」は品種名ではなく商品名(商標登録済み)である。
あまおうの品種名は「福岡S6号」という名前で、全然知られていない。
これは福岡県のJAがイチゴのブランド化、産地化をするために仕掛けたマーケティング手法。
なぜこんな話をしたかというと、白イチゴが流行っている理由もマーケティングの一種だからだ。
苺の果皮が赤い理由と白い理由
次に、白イチゴが白い理由を説明しよう。
その前に、なぜイチゴは赤いのかご存知だろうか?
一般的なイチゴが赤い理由は、果皮にアントシアニンという色素が含まれているからだ。
アントシアニンには光に当たることで発現が促進されるので、イチゴの果実が日陰で肥大すると色が薄くなる。
では、白イチゴが白い理由はイチゴを日陰で育てているからなのかというと、そうではない。
白イチゴの果皮が白い理由は、遺伝子的な要因で光が当たってもアントシアニンが合成されないもしくは、合成されにくいからだ。
白イチゴでも品種によっては果皮の一部がピンク色だったり、時期によっては赤っぽくなることがあるので、完全に合成されない訳ではなさそう。
また、果実が大きくなるに従い、果肉の色がピンクから白色に変化する品種もある。
もともと、イチゴの品種には、果皮のアントシアニン濃度が濃い品種(赤い品種)とアントシアニン濃度が薄い品種(オレンジ色の品種)があった。
また、果肉に注目してみると、赤い品種と白い品種が存在している。
この写真を見ていただければ、果肉の色の違いがわかりやすいだろう。
左から、章姫、さがほのか、とちおとめ、あまおう(福岡S6号)、紅ほっぺである。
このことからも、イチゴの果実に含まれるアントシアニンの発現には、品種間差があることが知られていた。
それでは、どうやってアントシアニンが発現しない白イチゴが生まれたかというと、品種改良中の突然変異だといわれている。
白いイチゴの品種、初恋の香り
日本で最初に誕生した白イチゴは、山梨県の種苗会社ミヨシアグリテックの「初恋の香り」。
初恋の香りがブームになったことで、全国各地で白イチゴの品種改良が進み、最近では果実が白いイチゴ品種が数多く誕生した。
初恋の香り
このイチゴの品種登録への出願公表は2006年、品種登録が2009年。
「初恋の香り」は商品名であり、本当の品種名は「和田初こい」。
「誕生から品種登録まで20年かかった」といわれている。
実は、誕生したのは20年前なんです。弊社と福島県の育種家の方とで共同開発したのですが、20年近く掛けて毎回同じイチゴがなるように“品種固定”を行い『初恋の香り』ができました
初恋の香りという商品名の意味は、イチゴの色が初恋をしたときの頬や気持ちに似ているからだそう。
「初恋の香り」は果実が熟すと透明感のある白色に変化すると共にうっすらとしたピンク色に色付きます。香りがとてもよいことも特徴の1つです。
初恋をした時の気持ちや頬がピンク色に染まるイメージと「初恋の香り」の淡いピンク色とかわいらしさが重なったことから名付けられました。
引用元:ミヨシアグリテック
桃薫(とうくん)
桃薫(とうくん)は、農研機構が品種改良した白色に近い色のイチゴ。
一番の特徴は、桃のような香りがすること。
雪うさぎ、天使の実
「雪うさぎ」と「天使の実」は、佐賀県の唐津市で栽培されている白イチゴ。
雪うさぎは品種登録されているイチゴだが、天使の実はされていない。
あその小雪(あそのこゆき)
あその小雪は、熊本県阿蘇中央高校の農業食品科の先生と学生が、12年かけて品種改良した品種。
品種登録名は、あそのこゆき。
淡雪いちご
淡雪いちごは、「さがほのか」というイチゴの突然変異として誕生したイチゴ。
品種登録名は、あわゆき。
※ちなみに、イチゴの品種改良に登録されている「掛け合わせ」は嘘も多い。
なぜ、白イチゴブームが起きているのか?
このように今は全国各地で品種改良により白イチゴが生まれ、白イチゴが販売されている。
では、いったいなぜ、白イチゴブームが今起きているのか?
その理由は、実はブランドイチゴブームと同じ。
さすがにこれは公開するとイチゴ関係者から怒られそうなので、一般には非公開にしている。
有料noteで見てみる→ 【業界のタブー】ブランドイチゴブームの不都合な真実【白イチゴ追記】
白イチゴの味、糖度
「白イチゴのことはわかったけど、肝心の味はどうなの? 甘いの?」
と疑問に思う人がいるだろう。
そこで次に、白イチゴの味や糖度について説明しよう。
白イチゴは甘くない?美味しくない?
白イチゴを食べたことがある人から「白い苺を食べたけど、値段の割に美味しくなかったよ」といわれることが多い。
この反応からわかることが三つある。
1.白イチゴは高い値段で売られていた
2.高い値段のイチゴは美味しいと期待されている
3.白イチゴは美味しくなかった
これは、一般消費者のみなさんが勘違いをしているから起きる悲劇だ。
白イチゴの値段が高い理由=白イチゴの競合優位性=赤いイチゴとの違いは味ではない、見た目だ。
白イチゴは美味しいから値段が高いのではなく、見た目が珍しいから値段が高いのだ。
細かいことをいうと、白イチゴの多くの品種は「香り(桃とかパイナップルに近い)」にも特徴があるけど、そこまで気にする素人はいないと思うので省略する。
パティシエとか料理人は、白イチゴの香りを活かした調理方法やメニューを考えるのかもしれないけど。
なのでこの際、はっきりと伝えたい。
美味しいイチゴが食べたければ、赤いイチゴを買いなさい!!
最近の白イチゴは「赤いイチゴよりも糖度が高い!」みたいな宣伝をされているけど。
※「このイチゴの糖度は平均よりも高いです!」という宣伝はだいたい嘘です
紅白イチゴは贈答用
日本で白イチゴがここまで流行っている理由の一つが、日本人が「紅白をめでたいと感じる文化」だからだ。
なので、白イチゴは一般的には自家消費用ではなく、赤いイチゴとセットで贈られる贈答用なのだ。
紅白饅頭は味が美味しいから贈られるんじゃない、見た目がめでたいから贈られるんだ。
ただし、白イチゴが不味いともいっていない。
実際には最近の白イチゴは、赤いイチゴと同じくらいの味だと思う。
しかし、白イチゴは赤いイチゴの2倍くらいの値段で売られているので、消費者は「(値段の割に)美味しくない」と感じてしまうのだろう。
白い苺の作り方と栽培方法
次に白イチゴの作り方、育て方もかんたんに紹介しよう。
白いイチゴの品種改良の方法
白イチゴは品種改良で生まれたと説明したが、イチゴの品種改良はどうやって行うのかご存知だろうか?
「どうせ、遺伝子組み換え的なやつでしょ?」と思う人もいると思う。
もちろん遺伝子組み換えの品種改良方法も研究されているが、主に使われているのは「交雑育種法」という昔ながらの方法だ。
イチゴの交雑育種法の手順
1.Aという品種の雄しべにある花粉を、Bという品種の雌しべの柱頭に付けて授粉させる
2.一つの果実がなり、数百個の種が採れる
3.数百個の種を撒いて、数百株の苗を育てる
4.これを何百組み合わせも行い、数万株の苗を育てる
5.数万株を育てて、美味しい果実が採れる株を探す
6.美味しい果実が採れる株Aと別の美味しい果実が採れる株Bを、1の方法で掛け合わせる
7.これを繰り返して、超美味しい果実が採れるまで数十年間続ける
イチゴの品種はこんな感じで行う。
ちなみにぼくも大学と大学院で、このイチゴの品種改良を行っていた。
白いイチゴの育て方
白イチゴを自分の家で育ててみたいという人もいるだろう。
今はまだ白イチゴの苗はなかなか手に入らないが、そのうち家庭菜園用でも手に入るようになるだろう。
白イチゴの育て方は、普通の赤いイチゴと同じだ。
家庭菜園でのイチゴの育て方や苗の増やし方は、こちらのページにまとめたので参考にしてほしい。
参考:ブランドイチゴブーム!イチゴの甘い果実の見分け方&おすすめの品種と苺の美味しい食べ方、苗作りのコツ&高設栽培の簡単な育て方を解説
かんたんに説明すると、秋に苗をプランターに植えて、翌年の春に収穫すればいい。
土や肥料は園芸資材点でイチゴ用や果菜類用を買えばOK。
摘花とか人工授粉はしなくても、家庭菜園レベルならば問題ない。
白イチゴが採れる時期、旬
白イチゴが採れる時期も、普通の赤いイチゴと同じだ。
一般的にイチゴの旬は、12月から6月くらいまでの冬から春にかけて。
白イチゴが収穫される時期も、だいたい12月から6月くらい。
なので、白イチゴが食べたい人は冬から春に食べよう。
ただし、これは冬場に暖房機を使って育てる商業的な農家の場合なので、家庭菜園で育てると収穫できるのは3月から6月くらいまでの春だけ。
白イチゴは一季成り性イチゴ
ちなみに日本には夏秋イチゴとよばれる夏と秋にも収穫でき、育て方によっては一年中イチゴが収穫できるタイプのイチゴ(四季成り性イチゴ)がある。
白イチゴや普通のイチゴは「一季成り性イチゴ」とよばれ、夏と秋には収穫できない。
ぼくは一季成り性イチゴと四季成り性イチゴの両方の研究をしていたので、今でもイチゴビジネスのコンサルティングは両方のイチゴを行っている。
参考:【テレビ出演】TBS朝の情報番組あさチャンのイチゴ特集に「農業コンサルタント」として出演
白苺を買える場所と通販
では、最後に白イチゴを買える場所と値段を紹介しよう。
日本最初の白イチゴ「初恋の香り」が売られ始めたときには、百貨店でしか売られていなかったけど、今ではスーパーでも売られているよね。
白いイチゴの値段は2倍
白イチゴの値段は赤いイチゴの2倍くらい。
例えば、ぼくはスーパーで買った白イチゴは一パック800円で、赤いイチゴは400円くらいで売られていた。
贈答用になれば値段はもっと高くなり、桐の箱に入って一箱5,000円から一万円くらいする。
最近はイチゴを一粒500円とか、一粒5万円みたいな売り方をしている農家やフルーツ店もあるけどね。
白イチゴが売っているお店
白イチゴが出始めの頃には、百貨店でしか見ることができなかった。
その頃は、高級フルーツ店で桐の箱に入って「贈答用」としてのみ売られていた。
しかし、数年前からデパ地下でも買えるし、品揃えが良いスーパーでも買えるし、ネットでも買えるようになった。
それに最近では、ケーキ屋さんでケーキやタルトに白イチゴが使われていたりもする。
だいぶ普及してきたので、これからは白イチゴの販売価格も下がるだろう。
さて、日本のイチゴ業界は次にどんな方向へ進むのだろうか……
白イチゴの通販
白イチゴを食べてみたい人は、こちらから通販で買える。
でもできれば、実際にスーパーやデパ地下で白イチゴが売られている姿を見てほしい。
【追記】イチゴについてよく聞かれる質問に回答します
イチゴについてよく聞かれる質問を、動画で回答します。
「なぜ、日本のイチゴは世界一美味しいのか?」についても解説しているので、ぜひご覧ください。
新鮮なイチゴの見分け方とおいしい食べ方を解説します。
まとめ
今回は、白イチゴについて徹底的に解説した。
白イチゴとは果肉が白いイチゴの総称で、味は赤いイチゴとほとんど変わらない。
昔は高級贈答品だったが、今ではスーパーでも購入できるようになった。
しかし、それでも白イチゴは赤いイチゴの2倍くらいの値段で販売されている。
まだ白イチゴを食べたことがない人は、ぜひ一度食べてみてほしい。
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【農業経歴】
1988年 長野県飯田市のリンゴ農家に生まれる
2011年 信州大学在学中に、実家のリンゴジュースを東京のマルシェやネットで販売する
2013年 信州大学大学院で農学修士号取得
2013〜2015年 青年海外協力隊として中米パナマ共和国で2年間農業ビジネス支援
2015年〜 農業コンサルタントとして日本、アジア、アフリカで、苺や野菜ビジネスのコンサルティング中
・テレビ出演(TBSあさチャン)
・週刊誌監修(女性セブン)
・書籍の監修多数
【トラベルフォトグラファー経歴】
2013〜2015年 中央アメリカで写真撮影を始める
2015〜2017年 世界20カ国を旅しながら風景写真を撮影
2017年〜 日本や海外で人物撮影、企業撮影、イベント撮影を行う
2017年11月〜2018年1月 現在は西ヨーロッパで撮影中です
世界中の写真をInstagramにアップしています。